2024年5月17日午後7時 アスミク・グリゴリアン ソプラノ コンサ-ト 第2夜 東京文化会館大ホール

ドラマティック・アリアの夕べ 

カレン・ドゥルガリャン指揮東京フィル

 

 

 

アスミク・グリゴリアンはエストニア生まれだが両親はアルメニア系の歌手。

2004年にノルウェ-でデビュ-、2018年のザルツブルク音楽祭の「サロメ」で人気となる。

 

2022年11月にジョナサン・ノット指揮東京交響楽団「サロメ」に出演。

同年のクラシックナビで1位のコンサ-トに選出され日本でもグリゴリアンは注目された。

 

今回の演奏会は【第一部】はスラブ系の作曲家のオペラの曲が中心。

ロシアやドヴォルザークのスラブ系のオペラには声質がフィットしていて声量もあり文句のない出来栄え。

 

【第二部】は世界的に有名になるきっかけのR・シュトラウスの楽劇「サロメ」と「エレクトラ」の曲。

アスミク・グリゴリアンの歌詞のドイツ語の言葉の響きと歌唱法には少し違和感がある。

しかしこれだけ表現力があり絶叫ではない熱唱は滅多に聴くことができない。

 

様々な国のオペラの歌唱が必要とされる対応力はアンナ・ネトレプコに似ているように感じた。

ネトレプコは豪快な声質と大きな声量、アスミク・グリゴリアンは繊細で翳りがある声質で声量は少し小さい。

イタリアオペラの役は声質に応じて二人は違っている。

アスミク・グリゴリアンは今が旬な歌手のようだ。

 

東京フィルの演奏はヴァイオリンとヴィオラは殆ど女性、チェロも女性が多い。

金管、打楽器、コントラバスは男性が多い。

女性の多い弦楽器はアンサンブルが揃っていて繊細だが豪快さは不足。

全体的には無難な演奏でまとまっていて穴は少ない。

ボリショイオペラやゼンパ-・オーパ-と表現力や響きが違うというのは野暮だろう。

 

指揮のカレン・ドゥルガリャンはアルメニアの指揮者。

アスミク・グリゴリアンが歌いやすいように精一杯間を取って指揮をしていた。

少しスラブ圏のローカルカラ-が強い表現とリズム感は仕方がないだろう。

 

座席は5階1列目の中央付近。アスミク・グリゴリアンの声は良くとおって聴こえる。

明瞭だが残響は少ない。

 

観客は3,4階のL,Rは空席が多い。6から7割位の入りだろう。

 

以下詳細、興味があればお読みになって下さい。

【第一部】

1.ドヴォルザーク作曲 歌劇「ルサルカ」“月に寄せる歌”

最初から声のコンディションが良好、低い声から高い声までよく響く。

先日のドミンゴと共演したモニカ・コネサより声量はやや下回る。

 

2005年に歌ったアンナ・ネトレプコのクールな芯のある声質と似ているが更に翳りがある声。

アスミク・グリゴリアンは可憐な愛しい女性を表現していた。

アスミク・グリゴリアン

Dvorak: Rusalka - Moon Song - Asmik Grigorian (youtube.com)

アンナ・ネトレプコ

OPERA PLANET Anna Netrebko Анна Нетребко Song to the Moon Russlka 4K Ultra HD (youtube.com)

2023年3月サントリ-ホ-ルで聴いたアンナ・ネトレプコは豪快な歌唱。

今回のアスミク・グリゴリアンは繊細な表現力。

 

チャイコフスキー作曲 歌劇「エフゲニー・オネーギン」

2.タチアーナの手紙の場 “私は死んでも良いのです”

一目で現れたオネーギンに恋するタチヤーナ。

タチヤーナはオネーギンへ思いをこめた手紙を書く夜の場面から最後は夜明けとなる。

 

アスミク・グリゴリアンの歌唱は可憐さより芯の強い激情の女性を描いていた。

主人公オネ-ギンのようにこの歌唱を聴くと思わず腰を引いてしまいそうだ。

今回の公演では「サロメ」とともにドラマテッィクな歌唱の熱演。

 

チャイコフスキー作曲 歌劇「スペードの女王」

3.“もうかれこれ真夜中...ああ、悲しみで疲れ切ってしまった”

悲嘆の表現が上手い。

Asmik Grigorian - Tchaikovsky - The Queen of Spades - Liza's aria (youtube.com)

 

アルメン・ティグラニアン作曲 歌劇「アヌッシュ」

4.“かつて柳の木があった”

これも悲嘆の曲だが自分のルーツのアルメニアの作曲家ティグラニアンの曲をしみじみと歌う。

民俗色の強い曲で「五木の子守唄」と節回しが何となく似ている。

Asmik Grigorian - Anoush's aria from Anoush by Armen Tigranian (youtube.com)

 

【第二部】

楽劇「エレクトラ」

5.クリソテミスのモノローグ “私は座っていることもできないし、飲んでいることもできない”

ここは姉エレクトラの妹役で復讐の殺人に巻き込まれたくない普通の女性でありたい心情を歌った場面。

脇役の曲で最後の「サロメ」に備えて一息入れる。

 

楽劇「サロメ」

6.サロメのモノローグ “ああ! ヨカナーン、お前の唇に口づけをしたわ”

アスミク・グリゴリアンが世界的に有名になった曲。

大声で歌うので声が持つか心配したが無事に終了。

容姿がスマ-トなグリゴリアンへ男性客(おじさん達)から大絶賛のブラボ-が沸き起こる。

 

独墺系のドイツ語が母国語の歌手の雰囲気は出ていないように感じた。

しかし現在これだけの歌唱力で歌える独墺系の歌手が他にいないのだろう。

Asmik Grigorian: Salome Final Scene (Strauss) (youtube.com)


 

【第一部】

アントニン・ドヴォルザーク作曲 歌劇「ルサルカ」 

・序曲  オケ演奏

1.“月に寄せる歌”

チャイコフスキー作曲

・弦楽のためのエレジー「イワン・サマーリンの思い出」 オケ演奏

 

歌劇「エフゲニー・オネーギン」

2.タチアーナの手紙の場 “私は死んでも良いのです”

・ポロネーズ オケ演奏

 

歌劇「スペードの女王」

3.“もうかれこれ真夜中...ああ、悲しみで疲れ切ってしまった”

 

アルメン・ティグラニアン作曲 歌劇「アヌッシュ」

4.“かつて柳の木があった”

 

【第二部】

ハチャトゥリアン作曲「スパルタクス」

・スパルタクスとフリーギアのアダージオ オケ演奏

 

リヒャルト・シュトラウス作曲

楽劇「エレクトラ」

5.・クリソテミスのモノローグ “私は座っていることもできないし、飲んでいることもできない”

 

楽劇「サロメ」

・七つのヴェールの踊り  オケ演奏

6.サロメのモノローグ “ああ! ヨカナーン、お前の唇に口づけをしたわ”