2024年5月12日15時 プラシド・ドミンゴ プレミアム コンサ-ト 東京文化会館
プラシド・ドミンゴ
ソプラノ:モニカ・コネサ
指揮:マルコ・ボエーミ
弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団
プラシド・ドミンゴ1941年1月生まれ83歳、スペイン・マドリ-ド生まれ。
年齢から考えると行くのはギャンブルに近い演奏会かもしれないと思った。
果たして初めて生で聴くプラシド・ドミンゴは声が出るだろうか?
前半
1曲目 ジョルダーノ「アンドレア・シェニエ」より〝祖国の敵〟
ドラマテッィクな歌唱力は昨年のパレルモ・マッシモ歌劇場のグリゴ-ロ並みで名歌手の領域。
声量は大きいが若い時と違い声質が暗く少しハスキ-に聴こえた。
2曲目 ヴェルディ「マクベス」より 〝裏切り者め!憐み、誉れ、愛〟
更に歌唱力は上がってきて迫力が増す。
3曲目ヴェルディ:歌劇「イル・トロヴァトーレ」より二重唱〝よいか?~私の願いを聞いてください〟
これはドミンゴ&コネサの2重唱で28歳のソプラノ歌手コネサの声量に負けず艶のある声。83歳が28歳の歌手に負けていない驚異的な歌唱。
後半
4曲目 ソウトゥーリョ/ベルト:サルスエラ「ソル・デル・パラルの女」より〝幸せな時はもはや〟
今回の演奏会で声に輝きが出てハスキ-さがなくなり声量、声質がベスト。
5曲目 ゲレーロ:サルスエラ「ロス・ガビラネス」より〝私の村〟
少し声量が落ち始め出した。
6曲目 ペネーリャ:歌劇「山猫」より〝僕は闘牛士になりたいんだ〟(ドミンゴ&コネサ)
この曲ではソプラノのコネサの声が低いパートから高いパート迄きれいに伸びて声量と声質の良さもドミンゴを追い抜く。
ドミンゴは更に声量と声質の輝きが落ち始め28歳の女性歌手の声量が上回りドミンゴの声は聴き取りにくい。
7曲目 ソロサーバル:サルスエラ「港の酒場女」より〝そんなことはありえない〟
更にドミンゴの声量が落ち声質も輝きが落ち始め夕日が沈むかのよう。
アンコ-ル
「メリー・ウィドウ」の「唇は黙しても」
「ベサメ・ムーチョ」他
最後の曲で力を振り絞って声の輝きは最後の一瞬で取り戻す。
自宅でプラシド・ドミンゴの演奏を聴くと若い時は軽やかなドラマテッィクなテノ-ル。
今はテノ-ルとバリトンの中間の声質になっているようだ。
今回の新日本フィルのHPの公演記事ではバリトンになっている。
歌唱の特徴は感情移入が上手く情熱的で女性歌手に対しラテン系特有のダンディ-な雰囲気。
声量はグリゴ-ロ、ヌッチ同様に大きい。
低いパートの声から高いパートの声はまだ出るのであと数年は歌い続けられそうだ。
年齢的に「最後の贈り物」の演奏会になっても不思議ではないがまたの来日公演に期待する。
ソプラノ:モニカ・コネサはキュ-バ系アメリカ人。
前半は高い声は出るが低い声が出にくそうで喉が締め付けられたような歌唱。
イタリア語歌詞の発音が不明瞭。
後半からがぜん調子が上向き低い声から高い声までマリア・カラスのような細身で深みのある鋭い声が響き出した。
イタリア語とスペイン語の歌詞の発音は良くなかったが将来期待できる歌手。
新日本フィルはオケだけの曲は響きは荒いが迫力はある。
伴奏の時は演奏の表現力と響きのデリケートさがもう少しほしい。
コンサ-トマスタ-のヴァイオリンの楽器音が美しい。
金川真弓さん使用のストラディヴァリウス「ウィルへルミ」(1725年製)に音色が似ていて甲高くなく、各弦の音色はビロ-ドの滑らかさでつながりを持ち、艶っぽい。
指揮者のマルコ・ボエーミは歌手とオケの方へ体を半身にして指揮。
要所要所の曲想の表現力と歌手を引き立てるオケのコントロールは上手い。
座席は5階 2列13番 C席。5階センタ-ブロック前から2列目右側。
舞台から離れているが歌手の声ははっきり聴こえる。
チケット代が安い5階の席でも明瞭度が良いのは魅力的。
観客は9割以上、空席はちらほらある程度。中学生の団体が来ていた。
ドミンゴと似た年齢の女性客が目立つ。
楽屋口のファンからの迎えにサインはしなかったが囲んだ日本人のところへ語り掛ける律儀な名歌手だった。
共演のソプラノ歌手 モニカ・コネサ 画像右
プログラム
第1部
ヴェルディ:歌劇「シチリアの晩鐘」より序曲
ジョルダーノ:歌劇「アンドレア・シェニエ」より〝祖国の敵〟(ドミンゴ)
プッチーニ:歌劇「トスカ」より〝歌に生き、愛に生き〟(コネサ)
ヴェルディ:歌劇「マクベス」より 〝裏切り者め!憐み、誉れ、愛〟(ドミンゴ)
プッチーニ:歌劇「蝶々夫人」より〝ある晴れた日に〟(コネサ)
プッチーニ:歌劇「マノンレスコー」より間奏曲
ヴェルディ:歌劇「イル・トロヴァトーレ」より二重唱〝よいか?~私の願いを聞いてください〟(ドミンゴ&コネサ)
第2部
ヒメネス:サルスエラ「ルイス・アロンソの結婚」より間奏曲
ソウトゥーリョ/ベルト:サルスエラ「ソル・デル・パラルの女」より〝幸せな時はもはや〟(ドミンゴ)
モレノ=トローバ:サルスエラ「マルチェーナの女」より〝ペテネラ〟(コネサ)
ゲレーロ:サルスエラ「ロス・ガビラネス」より〝私の村〟(ドミンゴ)
ソウトゥーリョ/ベルト:サルスエラ「口づけの伝説」より間奏曲
ペネーリャ:歌劇「山猫」より〝僕は闘牛士になりたいんだ〟(ドミンゴ&コネサ)
バルビエリ:サルスエラ「ラバピエスの理髪師」より〝パロマの歌〟(コネサ)
ソロサーバル:サルスエラ「港の酒場女」より〝そんなことはありえない〟(ドミンゴ)