2024年5月3日横山幸雄ピアノ・リサイタル入魂のショパンVol.15 東京オペラシティ
第1部10:30-11:40「天才少年から真の芸術家へ」
第2部12:30-13:40「パリでの若き日のショパン」
第3部14:00-15:10「充実の日々と祖国を憂いて光と影の交錯」
第4部15:30-16:30「さらなる高みへ向かって若き円熟の境地」
横山幸雄1971年2月生まれ53歳。1990年ショパン国際コンクールに日本人最年少19歳で入賞 3位。
パリ音楽院に留学しショパン弾き、ラヴェル直伝のラヴェル弾きといわれたペルルミュテ-ルに師事している。
横山幸雄の演奏は先月27日に初めて聴いたがノリの良さが気に入り再び聴く。
第2部以降から演奏会を聴いたがそれでも演奏時間は3時間20分で集中して聴けるのはこの位。
1日4回の演奏会はB席で5,500円と格安。
同日のラ・フォル・ジュルネ・ジャパンの会場の音響条件を考えるとこちらの演奏会を選ぶ。
ポゴレリッチのような気難しい芸術家タイプではなく、フレンチのシェフのように素材(曲想)の扱い方が上手く洗練されていた。今回はショパンの名作ばかりなので素材はすこぶる良い。
第2部のなかではノクタ-ン第20番の遺作は暗すぎない演奏で良かった。
バラ-ド第1番はホロヴィッツのように劇的な演奏をせず端正でよくよく聴くとしっかり味わいがある。
最後の「24の前奏曲」op.28 「雨だれ」を聴くと最初と最後の同じようなフレ-ズのメロディ-の曲想を変えていた。
初めは日常の何でもない雨音、最後は安堵感が入った雨音の表現。
中間パートのおどろおどろしい風雨の様子もやりすぎの表現ではなくバランス感覚がとても良い「24の前奏曲」だった。
第3部はピアノ ソナタ第2番「葬送」の演奏は昨年12月のクリスティアン・ツィメルマンのような凄みのある演奏ではない。しかし第3楽章葬送のメロディ-から第4楽章の曲想の音楽の流れは自然な演奏。
アントン・ルビンシテイン(1829-1894)がこのソナタを「死の詩(うた)」と評したがこれは当たっているかもしれない。
最後の「英雄」ポロネ-ズは4/27のアンコ-ルのような技術的な破綻はなく無事終了し盛大な観客の拍手で終えた。
第4部は「舟歌」の演奏がニュアンス豊富で良かった。
しかし「幻想」ポロネ-ズから体力が落ち始め少し怪しい指使いになり始めた。
ピアノ・ソナタ第3番の演奏は左と右のメロディ-のやりとりがはっきりしなくなりメリハリがつかず焦点がぼけてきた。
共感できたのは「24の前奏曲」とピアノ ソナタ第2番「葬送」。
「24の前奏曲」は単調にならなかった24の曲想の演奏。
「葬送」第3楽章はショパンの親しい人の死への追悼、冥福の祈りと4楽章の親しい人の死に接して暗澹たるショパンの気持ちと解釈すると「葬送」の曲想は腑(ふ)に落ちる。そういう風に解釈できる演奏だった。
横山幸雄の演奏は全体的にピアノの響きが深めでタッチの明瞭さには少し欠ける。
叩きつけるような打鍵はなくタッチは濁っていない。
曲の理解度は高いが細部にこだわらないのでサ-ッと美しいメロディ-が通り過ぎていく。
ひたすら心地良く、目を閉じて演奏を聴いている観客が多い。
全曲暗譜の演奏は流れがスム-ズとなり内容が深い演奏だった。
使用ピアノはスタインウエイ。
座席は3階R1列6番 B席、3階バルコニ-右最前列。
ピアノのタッチはわかるがペダリングは充分にはわからない。
残響音は美しいがこの場所では舞台上に反射板みたいなものがあり残響音は多め。
観客は第2部と第4部は6割前後の入り。第3部が7割前後の入り。
横山幸雄のマイクの話では第2部は第1部より客は多くなったとのこと。
終始3階正面のセンタ-ブロックと1階左右の後方に空席が多い。
中高年の女性の観客が多く、男性の観客は3割位。
第1部10:30-11:40「天才少年から真の芸術家へ」
12の練習曲 op.10
ピアノ協奏曲第1番 ピアノ版
第2部12:30-13:40「パリでの若き日のショパン」
ワルツ第1番 op.18
ノクタ-ン第20番「遺作」
幻想即興曲 op.66
アンダンテ・スピアナ-トと華麗なる大ポロネ-ズ op.22
バラ-ド第1番 op.23
24の前奏曲 op.28
第3部14:00-15:10「充実の日々と祖国を憂いて光と影の交錯」
スケルツォ第2番 op.31
ピアノ ソナタ第2番「葬送」op.35
ポロネ-ズ第5番 op.44
ノクタ-ン第14番 op.48-2
バラ-ド第4番 op.52
ポロネ-ズ第6番「英雄」 op.53
第4部15:30-16:30「さらなる高みへ向かって若き円熟の境地」
3つのマズルカ op.59
舟歌 op.60
ポロネ-ズ第7番 「幻想」 op.61
ピアノ ソナタ第3番op.58