2024年2月9日午後7時 サントリ-ホ-ル 赤坂

読売日本交響楽団第636回定期演奏会 指揮 山田 和樹

前半

・バルト-ク:弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽

後半

・武満 徹 :ノヴェンバ-・ステップス 

   尺八 藤原道山(どうざん)、琵琶 友吉鶴心(かくしん)

・ベ-ト-ベン:交響曲第2番

 

山田和樹氏2025年6月ベルリン・フィルを指揮に決定、曲目はサンサーンスの交響曲第3番「オルガン付き」、武満徹など。

 

3月末に指揮者山田和樹が首席客演指揮者を退任する最終公演のプログラムは小澤征爾がニュ-ヨ-ク・フィルで初演した武満 徹 作曲ノヴェンバ-・ステップス。

ニュ-ヨ-ク・フィルの125周年記念に正指揮者レナ-ド・バーンスタインへ副指揮者の小澤征爾が武満 徹への作曲を推薦した。

レナ-ド・バーンスタインはTVインタビュ-で能楽を日本で見て感銘した旨の発言をした感覚の鋭い作曲家。

 

・バルト-ク:弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽

1937年バーゼル室内管弦楽団初演、20世紀の音楽の中でも「管弦楽のための協奏曲」と共に名曲。

この演奏会では作曲家バルト-クの指示により弦楽器群は弦楽5部を2つに分けて指揮者の左右に対向配置し、中央にその他の楽器が配置されていた。

管楽器がないこととチェレスタが加わるのが特徴だが実際に演奏を聴くとピアノが大活躍。

ラヴェルのピアノ協奏曲ト長調のようにジャズの影響を受けているようでピアノのノリの良いリズムと弦楽・打楽器の掛け合いが心地よかった。

ティンパニ-が叩かれたあとピッチを変化させるのも面白い。

難点は計算され過ぎていて曲の進行が人工的で鏡のように曲が元に戻って閉塞的に終えるところだろう。

 

・武満 徹 :ノヴェンバ-・ステップス 

後半の演奏開始前に小澤征爾の訃報をマイクで指揮者山田和樹が伝え観客はどよめく。

山田和樹は後半黙とうするか悩んだらしいが結局黙とうはなく演奏が開始。

武満 徹の洋楽と邦楽の音響の扱い方は日本の作曲家の中でも上手さがあり洋楽と邦楽の尺八は琵琶の合いの手を受けながら微妙な音程の変化で洋楽にはない異空間を創る。

水と油のような異質な音響だがそれぞれの存在を脅かすことはなく尺八の演奏で終焉。

尺八をフル-トに置き換え洋楽の協奏曲のイメ-ジで捉えるとわかりやすい。

藤原道山の尺八の演奏はフル-トのイメ-ジ、琵琶は弦をはじいて出る音は小さくバチを胴体に当て打楽器のような音が目立つ。

武満 徹の代表曲だが難点は外国で日本人以外の尺八と琵琶の演奏者がいず演奏機会が少ないことだろう。

演奏後小澤征爾の訃報の余韻で指揮者山田和樹が涙ぐんでいるように見えた。

 

・ベ-ト-ベン:交響曲第2番

この曲は小澤征爾がニュ-ヨ-ク・フィルで1967年初演した武満 徹作曲ノヴェンバ-・ステップスと共に演奏。

収録のためか弦楽器は左右2群のままの配置。通常より弦楽器演奏者が多く音量が大きい。

第1、2楽章まではモーツァルトのオペラ「ドン・ジョバンニ」の響きが時々垣間見える。

第3楽章からはベ-ト-ベンのオリジナルな世界が見えてきた。

ベ-ト-ベン自身がお気に入りの「英雄」につながる交響曲第2番、駄作でなく良い曲なのは大作曲家ベ-ト-ベンの本領。

山田和樹の指揮はいつもより激しく小澤征爾のような指揮でサイトウ・キネン・フェスティバル松本で受けた厳しい小澤征爾の指導の恩返しのような演奏。

 

座席は2階RA4列3番B席。 舞台右の2階バルコニ-席。音量の小さいチェレスタ、琵琶もはっきり聴こえ安くてお気に入りの場所。

 

観客の入りは9割くらい。