もしかしたら最初は良性腫瘍だったのかもしれない。
人間も医者も看護師も最初は本気でそう思っていたのかもしれない。
だけどその腫瘍はいつしか悪性となり、
まずは自分が存在する組織の周辺を破壊し始めた。
体内では、癌によって破壊された組織が「肉体の不調」という形で
人間にアラートを出し始め、
たび重なる肉体の不調に、さすがの人間も異変に気づく。
そして、病院で医者や看護師に相談したところ、
良性だと思っていた腫瘍が悪性化し、「癌」だと宣告される。
けれども、その腫瘍が癌になっていたことがわかっても、
医者も看護師も、その癌に対してどんな処置が最適かは答えが出せず、
手をこまねいて経過観察に留まっている。
たまに薬を処方するも、効果は少しも見られない。
困った人間も悩むことに疲れ、
いつか癌が消えて無くなることを願い、考えることをやめた。
自分では制御できない不調が起こると投薬で鎮痛し、
身体を騙しながらその場を凌ぐ。
けれど根本的な解決は何もできない。
そんなことが何度も続けば次第に薬も効かなくなっていき、
いよいよ癌が身体を蝕んでいく。
自分の身体の中で起こっていることから目を背けていた人間も
本気で考えなければならない事態に直面する機会が増えていく。
けれど、どのような処置がいいのかは決断できない。
癌と対峙して今を失うのが怖いから。
癌と向き合い共生していくのか、
辛い闘病生活を覚悟の上で地道に治療するのか、
思い切って切除するのか、
このまま癌が進行していくのをただ黙って見ているのか・・・
それでも選択肢はたくさんある。
人間が何を選ぼうと、癌を抱えている人間の自由だと思う。
けれど癌の進行は人間が思っているよりもずっと早い。
手遅れになってから後悔することになっても、私は知らない。
これはある癌についてのお話。
ある組織で進行している、癌についてのお話。