キタテハ
キタテハは、全国広く分布し普通に見られるポピュラーな蝶で、年2化~。秋型は晩秋まで見られ成虫で越冬する。冬でも暖かい無風の日には現れることもある。早春最も早く姿をあらわす種の一でもある。なので、他の蝶が活動しない晩秋と早春には目立つ蝶である。
特に早春には地表近くを行動することが多く土塊にとまることも珍しくない。
前記事の三句にある蝶は、キタテハとみてもおかしくはない。
冬の蝶カリエスの腰日浴びをり 波郷
黄立羽蝶をとめし土塊傲るなり 波郷
枯葎蝶のむくろのかかりたる 風生
3句目は、葎は夏の季語。蝶は春の季語。枯葎ゆえ冬の句と思われる。
関連して既掲載の和歌を再掲します。
八重むぐらしげれる里に人なきも 秋の蝶こそ訪ね来るらめ
本歌
八重むぐらしげれる宿のさびしきに 人こそ見えね秋は来にけり
恵慶法師 (拾遺集 百人一首)
意味
むぐらの生い茂っている里には、訪ねる人もないが、秋の蝶こそは訪ねて来ているだろう。
本歌
むぐらの生い茂っている家はさびしく、訪ねてくる人はいないが、秋はやって来ていたのだなあ
八重むぐら(葎)=多くのむぐら。多種多様の蔓草。家の荒れた形容に用いる
葎(むぐら)とはカナムグラ・ヤエムグラなど、蔓でからむ雑草の総称
葎が生い茂っていることを表す歌語。
掲歌の「秋の蝶」はキタテハを詠んだものです。
キタテハは晩秋にも多くみられ、この蝶の食草はカナムグラです。
カナムグラは空き地や道端に群生し、強靭にからみあっているので厄介者ですが、公園や、空き地空き家、農地の際、河川敷、など方々に見られます。
このような、つる草の群生する草むらは人は立ち寄りませんが、こうした蝶には絶好の住み家であるわけです。