パリから帰ってから1ヶ月半
僕はめちゃめちゃ働いた....と、いうのも
1ヶ月間は留守にしていたこともあって仕事が山ずみだった
夏に向けて、今年の秋冬のファッションショーや
いろんな音楽のフェスに、ライブ・・その打ち合わせやら準備やら等々、寝る暇も無い!!
日々を過ごしていた
そして、1ヶ月が過ぎた頃やっと落ち着いたので
実は翔さんの勤めている病院の連絡先を苦労して
本当に苦労して探し出し、フランス語と英語と駆使して連絡をした
その返答が
『ドクター櫻井は辞めました』
え!?え!?え!?
そう、翔さんは病院を辞めていてその後の連絡先は誰も知らなかった
僕の第一声は
あり得ない!!
マジ!!意味不明!!
結局翔さんは、また僕には何も告げずに消えた
翔さんにとって僕の存在はどんな存在なんだろう?そうだよな、しょせん翔さんにとって僕はただの後輩....そうだよ、そうなんだ・・・じゃあ
僕にとって翔さんの存在は?
翔さんは・・・
翔さんは・・・
考えない!考えない!
それからの半年間、僕は何も考えずに働いた
幸い忙しくて余計な事を考える余裕も無かった
そんなある日
いつもの様に夏に向けてのライブの打ち合わせで
ライブ会場にいると
『松本さん、お客様がお見栄ですが?』
『え?お客様?どこの?』
『いえ、松本さんを呼んで欲しいと
中央ゲートでお待ちの様です』
『誰?・・・』
『お名前を聞いてもおしゃらないようで・・・』
『名前を聞いても言わない....って危なくない?』
『はぁ~~お帰り頂きますか?』
『いや、いいよ
行ってみるよ・・・』
僕が歩き出すと回りの人が
『松本、気をつけろよ』
と、皆に言われながら中央ゲートに向かった
ゲートの外にうしろ向きで立っている男
『あのぉ~~・・・・』
『おお~~潤!!』
この怪しいヤツは
この能天気な声は
『翔さん!!』
『久しぶりだなぁ~~潤!!
元気だったか?』
『なんでよ!なんでよ!
なんで翔さんはいつも、いつも突然現れるの?』
『なに?なに?....なんで怒ってるんだよ?』
泣き出しそうな感情で怒鳴る様に言う僕に
不思議顔で聞く翔さんが余計に腹立たしい
『だからなんで!なんで突然現れるのよ?
だいたいどうしてここが解ったの?
いやその前に、なぜ日本にいるの?パリは?
いったい今までどこにいたの?
日本に戻っていたの?いつ?なんで?
どうして今日ここにいる事が解ったの?』
『おいおい、潤、ちょっと落ち着け』
『いやいや、逆になんで翔さんはそんなに落ち着いているの?
わけが解らないよ!!
なんなの?なんなの翔さんは?』
『解った、解った、1つづつ説明するから
とにかく落ち着け』
翔さんが僕の肩を掴んだところで
『松本!!大丈夫か?』
と、スタッフの2人が僕のところに走りよって来た
『すみませんがお宅はどちら様?』
スタッフの1人が僕と翔さんの間に強引に入り
込んで翔さんにつめよったので
そのスタッフの肩を持って
『あ、ごめん、大丈夫、知り合いだから』
『え!本当に?なんか大声で怒鳴っていただろう?大丈夫なのか?』
『うん、ごめん、高校からの先輩だから大丈夫
悪いけど少しだけ時間貰える?』
『そうか、解った
何かあったらすぐに呼べよ・・・』
そう言うと二人のスタッフは怪訝そうに振り返り翔さんを見ながら中へ入って行った
『ほらみろ!潤が大声で騒ぐから俺が変な人になっているだろう』
『はぁ~~あのスタッフ呼び戻して来ようか?
だいたい突然、いきなり、なんの前ぶれもなく
いつも、いつも現れる翔さんが悪いんじゃないの?』
『あ~~解った、解った
だから叫ぶな!って・・・』
『まったく・・・で、!!僕の疑問....説明して』
『あれ?佐藤さんから何も聞いて無い?』
『佐藤さん?・・・・・』
僕はいきなり思いもしない佐藤さんの名前が翔さんの口から出たことに戸惑っていた
つづく