かつてのホラー映画であります「エルム街の悪夢」を思い出させるものでした。連続殺人事件の被害者は全員が眉のつながった奇妙な風貌の男を夢の中で見ていたという部分もとてもゾクゾクしました。この映画の基になっています、今から18年前であります2006年ごろから世界各地で人々の夢に現れた謎の男として世界的に話題を集めたインターネットミームであります「This Man」について非常に知りたくなるものでした。

 

津田寛治演じる刑事が、どう見ても甘いものを普段から食べてなさそうなのに甘いものが好きだと言ってシロップ漬けのスイー
ツを食べているのがいい感じでした。出口亜梨沙演じる八坂華と木ノ本嶺浩演じる八坂義男のふたりのラブラブぶりのオープニングからかなり圧倒されました。般若や、アキラ100%や、渡辺哲などの脇役を固めている出演者もかなり強烈で心に突き刺さりました。

 

八坂華と八坂義男はその後、幸せな結婚生活を送っていて娘もできて日々を過ごしているというのもグッドだなと。かなりのひっかき傷で殺された若い女性を含めた連続殺人事件に一貫した共通点があったと判明するところもなかなかなものを感じました。鈴木美羽演じる小田玲の現役JKの生き生きとした感じ、先生の物まねをしたりする勢い部分も興味深く観ることができました。

 

天野友二朗監督がインタビューで言っていたように、人はいつ死ぬか分からないからこそ、幸せに生きることができるのであり、そんな幸せな生活をしている私たちに死を宣告しに来る存在が謎の男This Manの恐怖なのだなと。天野友二朗監督自身が東日本大地震やコロナ禍などを経て自分では何もできずに大切な人を失ってしまい、日常を傷つけられた人がたくさんいらっしゃるので、そういったことが突然自分の身に起きたらどうなるかということをこの映画は突き付けるのですという言葉にかなりの重みがあったなと。

 

他の人の事だと思っていたら、まさかの眉のつながった奇妙な風貌の男を身内が夢で見てしまったとわかったときのショックぶりこそが、天災に遭ってしまった人たちの率直な反応なのだなと思うところもありました。やはり天野友二朗監督がインタビューで言っていたように、人は身近な人をもっと大切にして日常をもっと大切にしようと思いつつ、さらにこの映画を観た後にそう思う
人が増えたらと願っているという言葉がこの映画のすべてではないかと感じました。

 

お祓いのような行為をみなでする場面もかなりの脅威だったなと。夫婦が娘を亡くしてから、さらに迫りくる恐怖が家庭をぶち壊してしまう恐怖でどん底に落とされてしまうことこそが、普段の生活から一転して奈落の底に落とされるような感覚なのだなと感じました。あらゆる意味で幸せな家庭に降りかかる恐怖をリアルに描いた天野友二朗監督の力作恐怖映画の傑作と実感です。 

 

850点 無意識の中で観た恐怖こそが真の恐怖ポイント 8.5点