小松菜奈や、松田龍平や、大竹しのぶや、片岡千之助や、石橋静河や、田中泯などの豪華なキャスティングはなかなかだなと思いました。佐渡島のロケーションがかなり衝撃的であり、ああいった鉱山の跡地があのまま残ってるのだなと驚きました。オープニングの小松菜奈演じるミドリと松田龍平演じるアオがいきなり心中をしようとする場面からものすごくゾクゾクしました。

 

ミドリが横たわっている雰囲気などかなり特別なものを感じたと共に、小松菜奈自身もかなり雰囲気を変えて登場したのでさらに驚くものでした。大竹しのぶ演じるキイに声をかけられて紹介されるところもかなり謎めいていてよかったですし、田中泯演じる館長の懐の深い雰囲気などはとてもいい感じでした。松田龍平の死を思わせる表情や仕草なども、松田龍平の父親であります松田優作の遺作であります「ブラックレイン」で松田優作が演じた佐藤浩史のような死を匂わせるものを感じ取れてかなり恐ろ
しいものがあったなと。

 

炭鉱の跡地に現れる謎の爛れた男を森山開次がかなりそういった世界の幻想的なものを表現していて、実際幻かも知れないような異質の存在でグッドでした。森山開次は2005年のミュージカル「星の王子さま」でのへび役や、「円卓 こっこ、ひと夏のイマジン」で演じた鼠人間などの異質の動物的なものを演じさせると天下一品だなと思わせるものでした。佐渡金銀山の開発初期の採掘地とされる江戸時代の露天掘り跡である山の存在もかなり目に飛び込んでくるものであり、巨大な金脈を掘り進むうちに形成された山の割れ目の部分を説明している場面も印象的でした。

 

そして何といってもこの世界はピーター・ジャクソン監督の「ラブリー・ボーン」のような煉獄かなとも思えました。石橋静河演じるムラサキの雰囲気もよかったなと。猫の声を追っかけて迷い込んだミドリにアオが話しかけ、ミドリがかけた猫の容器を変えようとするやり取り場面もかなり印象的でした。佐渡島の金山跡地で目を覚ました女が過去の記憶がないために清掃員の女キイに助けられて、キイがアカとクロという女の子と暮らす家に運ばれるという展開も、やはりこういう世界があるのかなと思わせる感じでした。

 

自身の名前すら思い出せない女はミドリと名付けられてキイと一緒に清掃員として働き始めるところはかなりの安心感がありました。アオとミドリが二人は何かに導かれるように山門で待ち合わせては時を過ごすようになる場面など、映像的にかなりの良さを感じ取れるものでした。富名哲也監督自身が幼い頃に父を亡くし、母が日々仏壇に手を合わせているのを見て育ったせいで見えない存在を身近に感じているというインタビューの言葉にかなりの重みを感じました。

 

あの世とこの世の狭間で彷徨う魂たちの行方をオール佐渡島ロケで描いた富名哲也監督の映像力抜群な力作映画と実感です。 

 

834点 彷徨う魂たちの思いと気持ちが大切ポイント 8.3点