北海道の恵庭市に対して非常に興味を持つことができました。宮嶋風花監督商業デビュー作品ではありますがかなりのリアリティと切羽詰まった感が満載であり、ここまで巧妙に生々しく描けるのだなと驚くことが多かったです。窪塚愛流と長澤樹のキャスティングはうまくいっていると思いましたし、繊細な感情部分を表情や言動で見事に表現していると思いました。田中麗奈演じる須藤由美の存在の大きさがすべてかも知れません。

 

宮嶋風花監督の実体験や、人生そのものが物語の中心になっていることも含めてかなり若い頃に苦労していたのだなと思うところも多々ありました。窪塚愛流演じる伊藤宗介と長澤樹演じる須藤愛の幼馴染なふたりの関係性と雰囲気にかなりゾクゾクさせられました。風呂の扉をだまされて須藤愛が開けてしまうところなどの愛嬌ある場面もいい感じでした。須藤愛が母親への気持ちを絵で表現するなど、この映画における絵の重要性を感じることができました。

 

須藤愛を宮嶋風花監督だと考えれば、キャリーケースを盗られたのに浮浪者によって売り物にされている部分などもかなりありえて肯けるものでした。北海道の自然を捉えた映像の迫力はなかなかでした。伊藤宗介が野球部の先輩に食って掛かって殴ったりしてしまうところや、怪我の手当てを須藤由美に優先的にしてもらえなかったために喚き散らすところや、実の母親におまえは母親じゃないと八つ当たりして叫びまくるところなども、複雑な家庭環境と愛憎も含めた複雑な部分がそうさせてしまったのだなと納得できるものでした。

 

伊藤宗介の母親は夫を亡くして心を病んでしまったことへの悪循環がそうさせたのだなと感じました。高校生で須藤愛は母親である須藤由美を亡くしたことがかなり重く心にのしかかっているというのもかなりストレートにひしひしと伝わってくるものでした。須藤由美が伊藤宗介と須藤愛を育てているという部分も含めて、愛情の分配の難しさもあったのだと感じてしまいました。

 

北海道の大自然の厳しさそのものがこの家族の生きることのつらさや大変さに直結しているようで痛々しくて心に突き刺さるような感じでした。ケンカをして家を飛び出した伊藤宗介を捜す最中に、須藤由美が亡くなってしまうというショッキングなところもかなり衝撃的でした。須藤愛は父に連れられて東京へ行くことになり、北海道に残る伊藤宗介と離れ離れになってしまっても、心では離れられない部分を強く感じていたのだなと納得しました。

 

バスケットをしてるときに関係を聞かれて困る場面も印象的でした。北海道の伊藤宗介を須藤愛が訪ねて行ったら女装して母親のようにふるまっているところも恐ろしいけど仕方ないなという感じはありました。野球部を辞めたことや、須藤愛にキスしてしまったことや、家庭環境のことも含めて今までの思いを伊藤宗介が須藤愛にぶつけて懺悔のようにして後悔してしまう気持ち部分もかなり壮絶なものを感じました。雪の中の須藤愛と伊藤宗介入の場面はいい感じでした。あらゆる意味で宮嶋風花監督の時体験を基に描いた衝撃の男女の愛憎をぶつけた衝撃の問題作映画と実感です。

 

866点 恵庭市の自然の厳しさにつながる人生の厳しさポイント 8.6点