1983年に公開された日本映画で谷崎潤一郎の小説の映画化作品の「鍵」の登場は自身にとってかなり衝撃的なものでした。谷崎潤一郎はこの1983年の「鍵」だけでも、三度目の映画化作品であり、いかに谷崎潤一郎の文学があらゆる方面に影響力を与えているのかがわかりました。1983年に公開された「鍵」は主演が松尾嘉代と岡田眞澄であり、公開規模は大きくなかったですが谷崎潤一郎文学が後世へと受け継がれる貴重な映画だと感じました。

 

同じ谷崎潤一郎原作であります同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々に描写した長編小説「卍」を、さらに同1983年に樋口可南子と高瀬春奈主演で映画化しているということからしてもかなりの影響力だったなとさらに再認識するものでした。谷崎潤一郎の長編小説であります「卍」を現代に舞台を置き換えて、さらに原作の小説の設定での登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化したというところはかなり衝撃的なところではありました。

 

いつも映画で気になってしまう部分としましては、ちゃんとした職に就いてなくてもあんな立派な家に住めるのだなと思ってしまう部分でした。ですが、やはり猥雑な狭い部屋よりは大きい建物の広い間取りの家の方が見てて心地いいなと思ってしまうところもありました。鈴木志遠演じる園田、門間航演じる光、中崎絵梨奈演じる弥生、田中珠里演じる香織のキャスティングが絶妙であり、巧妙にバランスをとってるなと思いました。

 

画家になる夢を諦めきれないという部分はやはりそういった設定は時代遅れ的にも思えますが、そういった現代にも通じるように納得させてしまうような雰囲気もうまく作ってたなと思いました。サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田を弁護士の妻であります弥生が生計を支えていたというところもかなり夫婦関係が危うくなるのではと思わせるものもあり、相当ドキドキする部分ではありました。

 

園田が学校で見かけた美しい青年の光とモデルと画家以上の関係にまで進展していく展開はかなりゾクゾクするものがありました。自宅でそういった行為的な部分をしつつ、さらに妻の弥生がブチ切れてしまうくらいの間柄というところをさらっと見せてしまう宝来忠昭監督の演出はいい感じでグッドでした。さらに光の着替えを園田が届けた時に香織の存在が浮かび上がってしまい、園田が驚く展開になるというところも上手く描いてあってよかったです。

 

さらに園田と弥生と光の3人の関係にまで発展してしまい、さらに香織もからめた感じのシナリオもいい感じで入り込めました。あらゆる意味で谷崎潤一郎の原作を現代に置き換えて描いた衝撃の性のトライアングル映画と実感です。 

 

876点 ゆがんだ愛の形から見える真実こそ偉大ポイント 8.7点