濱口竜介監督の最新作だけにかなりの期待値の高さはありました。大美賀均演じる安村巧の存在感がなかなかだったなと。安村巧の雰囲気や立ち振る舞いなどの一匹狼的スタイルは、まるで西部劇の主人公を思わせるものでした。雪が積もった山の中をカメラが捉えた上空からの景色ショットがなかなかな感じであり、かなり鋭いショットだったなと感じました。西川玲演じる安村巧の娘であります安村花にも指摘するほどの物忘れぶりが、ある意味致命的だったのかと思うところもありました。

 

その日の集会関係の事も忘れてしまうくらいだったなと。野生の鹿の通り道や、野生の鹿の生態も含めてかなり後半で重要になってくるといった展開部分もかなり入り込めました。シナリオがうまく構成されてるなと思いました。この土地では自然水がある意味命綱的なものであり、その自然水に惹かれて飲食店をこの土地で営むことを決心した女性の心理部分もかなり肯けるものでした。

 

ホテル並みのサービスを野外で楽しむ魅力的なキャンプでありますグランピングにまつわる芸能事務所関係者とその土地の住人たちとのやり取りなども、やはり起こりうるレベルだなと思いました。山奥の小さな集落であります水挽町についてもっと知りたいなと思いました。小坂竜士演じる高橋啓介と、渋谷采郁演じる黛ゆう子が説明する側として参加したグランピング説明会の場面がかなり強烈な印象を受けました。 

 

基本的には我々全員よそ者だという言葉もあってか、そういった部分でも西部劇をかなり感じさせるものでした。グランピングを計画している場所が実は鹿の通り道だったということも含めて、やはりその土地の人間でしかわからないこともいっぱいあるのだろうと思わせるものでした。父親が迎えに来ると分かってるにもかかわらず、一足お先に家へ帰ってしまう安村花の心理部分もかなり重要だったなと感じました。

 

自然豊かな高原に位置する長野県水挽町ではありますが、東京からも近いということもあって移住者が増加傾向にあるということが今回の企画にもつながったのだなと。濱口竜介監督自身が芸能事務所に対するイメージもあってのものなのかと感じてしまいました。助成金目当ての政府からの補助金を得て計画したものという部分はかなり鋭いものだなと感じてしまいました。安村巧を管理人にスカウトしようとする展開は納得できるものでした。

 

安村花が失踪してし
まうといった事も含めて、新たなものがやってきたことによって起きる不思議な変化の現象というものを感じてしまいました。あらゆる意味で神に取りつかれたような不思議現象を感じられる濱口竜介監督の意欲作映画と実感です。

 

888点 神の領域にまで達するほどのレベルであるポイント 8.8点