中編の映画ですが、濱口竜介監督らしさは出ているなと思いました。今から11年前にすでにこれだけの作品を作り上げていたのは驚くべきことだなと。2005年公開の塩田明彦監督作品「カナリア」で岩瀬光一役を石田法嗣が熱演してたときはまだ幼い雰囲気があってとても印象的でした。2014年3月1日に公開された今作の直也役ではかなり凛々しくて大人びててかっこよかったなと。

 

染谷将太も2007年に「14歳」が公開されたときの雨宮大樹役の時の事を思いますと、ここまで色々な面で成長して大物役者になるとは思っておらず、同じく2014年3月1日に公開された今作の千尋役での存在感ぶりもかなり驚くものでした。染谷将太演じる千尋や、渋川清彦演じる斗吾や、直也石田法嗣演じる直也や、瀬戸夏実演じる里美や、水越朝弓演じる梓や、砂連尾理演じる近藤先生や、河井青葉演じる女性刑事や、村上淳演じる元などのキャスティングもかなりうまくいってるなと思いました。

 

ダンスの練習で上半身裸で絡んでいる千尋と直也の場面がオープニングからかなりゾクゾクしました。色々な意味で実験的な作品ではあると思いますが、やはりカメラの捉え方部分ではかなり鋭いものがあるなと感じました。この作品の要素が、濱口竜介監督のその後の作品であります「寝ても覚めても」や、「偶然と想像」や、「ドライブ・マイ・カー」につながっていくのは間違いないなと感じました。

 

濱口竜介監督が映画監督である以上に映像作家であり続ける部分は、そういった「ハッピーアワー」や「親密さ」などのかなりの長編映画を撮り続ける実験的チャレンジ精神の旺盛さがあってからこそかなと。構想途中の長編映画「FLOODS」の前日譚として撮りあげた中編ドラマというこの映画をつくるきっかけからしても、かなりの監督の個性と実験精神を感じさせるものでした。

 

父を亡くした千尋の見えないものが見える予知能力的なものを感じさせるオープニングの路上場面もなかなかでした。千尋の腹違いの兄の斗吾役を渋川清彦がかなり巧妙に演じててグッドでした。孤独感に苛まれる千尋役を染谷将太がかなりの入れ込みようで演じてるのも印象的でした。梓の若くて気ままな雰囲気もかなりいい感じでした。恐ろしいことが起きているというところも含めて、こういったところが濱口竜介監督の持ち味なのだろうと。

 

斗吾と元の水上調査での水上での会話部分もかなりゾクゾクしました。思った以上にあっさりと罪を告白してしまうラストなども含めて、こういったところも監督らしさとも言えるかもと。あらゆる意味で濱口竜介監督のこれからの輝かしい未来を予見させるぐらいの独特なミステリー映画の傑作中編映画と実感です。 

 

856点 腹違いの兄弟が共通する部分に興味津々ポイント 8.5点