140分という長さはかなり主人公の人生を長く追ってるからであり、共感できるかどうかは別にしても人物をしっかりと描いてあったなと思いました。ドイツとオランダとモロッコとメキシコの合作である国際色豊かな事からしましても、本作はエミリオ・サクラヤ演じるジワ・ハジャビの国際性豊かな行動と活躍ぶりがそれを物語っているのだなと思いました。ジワ・ハジャビはクルド系音楽家のもとに生まれ、かなり厳しく音楽について教育されてきたのがとてもよくわかりました。

 

父親がかなり厳格な人間であり、良くも悪くもそこが大きかったかなと思わせるものでした。亡命先のフランスのパリで音楽の教育を受けたジワ・ハジャビではありましたが、ドイツのボンに移り住んだ時に両親が離婚してしまい貧困を味わってしまう部分もかなりリアルでした。単純なサクセススト-リー映画ではありませんが、どうしてもジワ・ハジャビ犯罪を平気でしてしまう部分は疑問に思ってしまう点でした。

 

貧しくて働く先もない苦しい現状のところもかなり痛いほど伝わってくるものでした。幼い頃の大人しい雰囲気から、急に成長していって頭も丸めた姿に変化した部分はかなり驚きました。どうしても仕事が欲しくて、口コミと実演で用心棒的な仕事を回してもらう過程部分もかなり興味深く見れてグッドでした。街の不良に打ちのめされたジワ・ハジャビがやり返したい一心でボクシングを覚えていき、危険なヤツを意味するXatarを名乗るようになっていくのもある意味自然な流れのように思えました。

 

ドラッグの売人や用心棒で金を稼ぎ、金塊強盗までする展開もかなり驚きました。創作の事ならまだしも、実際にこういう事をしていたという部分がかなりショッキングで苦しく思えました。音楽の学校に行って、ちゃんとまっとうになるかと思いきや、そうはならなかったのがとても残念でした。世界的な指名手配犯となったジワ・ハジャビが逃亡中のシリアで拘束されて、送還されたドイツの刑務所で過ごしていくうちにレコーディングした曲でデビューするという部分もかなり驚くものでした。

 

難民からギャングを経て世界的な音楽プロデューサーになるまでの波乱万丈な人生の締めくくりは、子供が学校で動画を見た同級生からお前の父は犯罪者だと言われたという事実部分。そんな子と付き合うなと子供が言われたにもかかわらず、結果的に大豪邸に住んでるというラストもかなり複雑な心境がありました。悪いことをしても結果的に成功すればいいのだといってるようで…。

 

まるで学生時代いじめっ子で相手を苦しめたにもかかわらず成功して威張ってる人のようで…。あらゆる意味で成功した犯罪者という納得できない部分が付きまとってしまった映画でした。

 

825点 お金になる手段や方法は考えれば色々ありポイント 8.2点