この映画のシリーズの1作目の「止められるか、俺たちを」が2018年11月24日(土) 21時10分からポレポレ東中野で上映されたときに、この「止められるか、俺たちを」の脚本家の井上淳一の舞台挨拶がありました。この映画で若松孝二を演じた井浦新が撮影する前に「我々はモノマネ合戦をやるつもりはありませんよ」と言ってたにもかかわらず、「結果的にモノマネ合戦になった」といった内容の事を言っていたのが印象的でした。

 

ですので、この続編映画を作るにあたって、前作同様に若松孝二役を井浦新に任せたという部分では納得しつつも解せない面もありました。若松孝二監督が代表を務めた若松プロダクションの黎明期を描いたシリーズの1作目であります「止められるか、俺たちを」は映画作りの勢いと情熱をいっぱい感じさせるものがあり、かなり入り込めた映画でした。ですので、続編の内容が若松孝二監督が名古屋駅裏のミニシアターのシネマスコーレを舞台に描いた青春群像劇と知ってさらに期待できる思いが膨らんでいました。

 

自身が大学生になってから数多く通った映画館であり、若松孝二が所有する映画館というのも知ってました。ゆえに、この映画の秘話的なエピソード部分はかなり納得して理解できるとともに、若松孝二のような大監督でさえも自分の映画をかけることに対してここまで苦悩して選んだ決断といった点ではかなり意外でした。結婚を機に東京の文芸坐を辞めてから、地元名古屋でビデオカメラのセールスマンをしていた木全純治の存在を知らなかったために、こういったいきさつにかかわる人物もかなり重要だなと思いました。

 

新宿文化で若松孝二監督作品をかけることでトラブったことなども含めての措置、立地条件の値段的な部分も含めて名古屋で映画館を作ったことなどもわかりやすく描いててよかったなと。自身が通っていたときはすでにピンク映画はかかっておらずにミニシアター系映画ばかりでしたので、今回の1983年2月19日にシネマスコーレがオープンした当初関係のことはかなり驚きでした。映画館のあるビルがあそこまで風俗店があったのも知りませんでした。

 

そういったこともあり、支配人に抜てきされた東出昌大演じる木全純治が若松孝二に振り回されながらも、家族の事を考えながらも明るい性格で経済的危機を乗り越えていく場面はとても共感できました。芋生悠演じる金本法子の監督になるために立ちはだかる3重苦的なエピソードもかなり心に沁みました。ですが、井上淳一監督の予備校時代からの映画館通いや、予備校での事や、新幹線に飛び乗った事や、助監督時代や、さらに河合塾映画で若くして監督になってからのエピソードなどすべてが結果として若松孝二がらみであるがために映画の後半でこうして描いた点が悪くはないのですがどうも…。

 

映画批判に厳しい井上淳一監督の純な部分はいいのですが、自己陶酔的な自慢的部分が多少の抵抗感を感じました。足立正生にまつわる恐れ部分は興味深かったです。結果的には井上淳一監督が若松孝二監督にリスペクトをするがゆえの作品であるならそれはそれでいいと思いますが、在日女性の部分はどうも…。あらゆる意味で青春を感じる映画館と若松孝二監督一大決心映画の快作ですが、井上淳一監督自身描写に疑問符映画でした。 

 

895点 周りが止められなくなるほどの情熱こそがまさに映画愛と人間愛ポイント 8.9点