やはり紛れもなく相米慎二監督作品だなと。自身の現在の年齢と同じ年齢で相米慎二監督が亡くなられたという部分を知ってかなりショックに思えました。シナリオ募集コンクール準入選作を脚本にしてることもあり、生々しさとドラマ的でない会話部分がかなり強烈に思えました。これまで真面目で二枚目で正統派な優等生的部分を強調するような役で完全にイメージが定着していた三浦友和が、イメージを崩してだらしない男を演じさせて体を張っているところも含めて相米慎二監督マジックの凄さを感じました。

 

三上祐一演じる三上恭一や、紅林茂演じる清水健や、工藤夕貴演じる高見理恵や、大西結花演じる大町美智子や、三浦友和演じる梅宮安たちのキャラクターの濃さや自己主張の激しさ部分もかなり恐ろしくてダイレクトに強烈なものを感じました。特に梅宮安が数学の授業中に知人女性から婚約者との結婚の約束を引き延ばしにしていることを罵倒されて、生徒の前で赤っ恥をかくぐらいのだらしなさぶりはかなり強烈でした。

 

夜のプールで女子たちが楽しんでるところに男子が一人で潜んでいるのがバレて、女子たちからコースロープで縛られたまま失神するくらいに水に顔をつけられる場面がまるで拷問のようでかなり恐ろしく思えました。こういったところでも手を抜かない相米慎二監督の懸命なさがうかがわれました。大西結花がこの作品で第7回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞を受賞したというのは喜ぶべきことだなと。

 

だんだん迫りくる台風の存在が、まるで将来の選択を迫られてる若者たちの切迫感のようでかなり痛々しく思えました。台風の襲来をきっかけとに日頃のうっぷんを爆発させる少年少女の姿が、思春期のときの若者の危うさや脆さを体と言葉で過激に体当たり表現部分してるようでものすごく壮絶なものを感じました。高見理恵の家で一人にいるところから、ついには行動を起こして東京に原宿まで行ってしまうくだりの場面描写も台風の凄さと共にインパクト大でした。

 

台風場面は相当リアルで音も映像もかなりの迫力と臨場感で凄かったなと。本当に台風被害を受けてる場にいるような臨場感的リアルさが全面に出ていてグッドでした。台風の中で高見理恵が懸命に走っていく姿も痛々しくて心に突き刺さってきました。やはり何といっても男子生徒のひとりが女子の制服の中に金属片のようなものを入れて背中を大やけどさせる場面はまさに狂気そのものだったなと。

 

わらべの歌の「もしも明日が」を若者たちが下着姿で歌いながら狂喜乱舞する場面こそががこの映画そのものであり、こうした長回しをしながら若者たちに絶叫させるのは、「ションベンライダー」なども含めて監督の心の叫びの代弁ではないかと思う次第でした。あらゆる意味で相米慎二監督の渾身の強烈青春映画の傑作と実感です。 
 

890点 台風が通過していく事で起きることこそが青春のそのものポイント 8.9点