美しく繊細な映像で物語を紡いでいく映像感覚はまさに真似できないものだと感じました。カンヌ国際映画祭やベルリン国際映画祭でも注目を集めるベルギーの映画作家バス・ドゥボスだからこそのこの作品かなと。バス・ドゥボスの長編第3作目であり、この作品辺りになりますと、監督自身もかなりコントロールできてるなと感じる部分も多々ありました。感覚鋭いなと。

 

夜の街を車両が走っていき、その光景を表現する様子、街のネオンや、車のヘッドライトなどのシャープな映像部分もかなりストレートに心に突き刺さってきました。ブリュッセルの町を舞台に、最終電車で乗り越してしまった主人公が真夜中の町をさまよい、その中での思いがけない出会いがあった後に心のぬくもりも描くというコンセプトと展開がかなり好感でした。

 

サーディア・ベンタイブが清掃作業員のハディージャをいい感じに演じててグッドでした。長い1日の仕事終わりに最終電車で眠りに落ちてしまうという感覚こそすべてかも知れません。自身も長い1日の仕事終わりに最終電車で眠りに落ちてしまうという事が多々ありましたので、この映画のヒロインがそうなってしまったのもかなり納得できるものであり、とても他人事とは思えませんでした。

 

終点で目を覚ましたヒロインが家に帰る手段を模索している様子もかなりドキドキしました。もはや徒歩で帰るしか方法はないことを知るというのもよくわかりました。自身ももはや徒歩で帰るしか方法はないと悟ったことが何度もあったため、今回のヒロインの絶望感やショック部分もかなり心に沁みると同時に、自分と置き換えたらかなり信ぴょう性もあってリアルだなと感じました。

 

結果的に小さな旅路はやがて遠回りをはじめるという展開もかなりいい感じであり、やはり旅は道連れ世は情けではないですが、途方に暮れた時に出会った人たちほど忘れられない人になるのは間違いありません。ヒロインがお金をおろそうとして困ってるときに警備員にお願いして何とかキャッシュコーナーまでたどり着くところは素晴らしかったなと。結果的に残高不足でお金をおろせない現実部分もストレートに伝わってきて色々と思うところありました。

 

全編を通して舞台となる夜の街の風景を16ミリカメラで撮影することで、暗闇の中に独自の雰囲気もたらしている手法も見事でした。あらゆる意味で人情部分が心に沁みる感動的な貴重なヒロインさまよい映画の傑作と実感です。

 

880点 夜の街に吸い込まれていく感覚の不思議さ鋭いポイント 8.8点