こういった感じの作品とは知らずに観ましたので、松村北斗と上白石萌音のふたりが主役にキャスティングされたことに関しても納得のゆくものでした。HK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」で夫婦役を演じた松村北斗と上白石萌音だからこそというのもあったなと。原作者の瀬尾まいこは2011年に退職するまでに中学校教諭の傍ら執筆していたという事もあり、愛知県で高校の国語教師をしながら執筆している汐見夏衛の事もあり、こうした教育現場の実態を知っている人が描く小説はまた違ったものがあるのではと感じてしまいました。

 

「そして、バトンは渡された」や今回の作品も含め、女性独自の視点や考え方もかなり反映されてるのではと感じる部分が多々ありました。三宅唱監督作品では「ケイコ 目を澄ませて」が絶大な人気ですが、自身はこの作品の方がじっくり落ち着いて観れたとともに、しっかりとテーマに向き合ってたこともあって惹かれる部分が多かったです。松村北斗演じる山添孝俊の存在感や行動ぶりはかなり肯けるものが多く、この人物にかなり入り込めました。

 

松村北斗は大げさ過ぎずに着実にこの人物像を伝えようとしている真摯な部分がうかがわれてよかったです。上白石萌音演じる藤沢美紗も実際にいそうな人物像でもあり、かなりその人物像も興味がわいて共感できました。上白石萌音が美少女ぶりを覆い隠しつつ体当たりで役にのめりこんでてグッドでした。オープニングからのナレーションあっての藤沢美紗の病気影響受け場面の見せ場部分もかなりわかりやすくしっかり描いていてよかったなと。

 

前の職場でのハプニングのち即退職場面や、症状による警察厄介出来事などもしっかり見せてていい感じでした。この時点でPMSをわかりやすく解説してて、しっかり向き合っててよかったです。藤沢美紗が月経の影響で月に1度ヒステリックになるところからの、山添孝俊に八つ当たり的になってしまう展開もわかりやすくて入り込めて納得できました。イライラを抑えられなくなる藤沢美紗が怒りを爆発させてしまう感情部分もほどよくコントロールしてて、ほどいい感じでした。栗田科学社長を光石研がかなり抑えて雰囲気で演じてて好感でした。

 

山添孝俊が不満もあり、元の職場に戻りたがっているにもかかわらず、なぜこの職場にいるのだろうと次第に明かされていく見せ方も、かなりわかりやすくて納得できて共感できました。山添孝俊がパニック障害による発作を起こす場面はかなり強烈なものを感じました。藤沢美紗と山添孝俊の間に恋人でも友達でもない同志のような特別な感情が芽生えはじめるという部分はかなりしびれるとともに、本当に素晴らしく思えてわかりやすくていい感じでした。ふたりがそれぞれおのおのの症状は改善されなくても相手を助けることはできるのではないかと考えるようになるという気持ち部分も心に沁みました。芋生悠演じる大島千尋の存在感もなかなかでした。

 

移動できるプラネタリウムの場面も感動的でよかったです。あらゆる意味で主役ふたりをじっくり観察して、誇張なくうまい具合に感情表現させた貴重な青春持病抱え若者映画の傑作と実感です。 

 

895点 悩み多き人間だからこその特別な感情ポイント 8.9点