映画に限れば三度映画化されてます横溝正史原作の「八つ墓村」ですが、配収19億9000万円を挙げた松竹映画の大ヒット作となった野村芳太郎監督のこの作品が最もヒットしただけでなく、流行語になるくらいの社会現象にまで発展するほどのインパクトと衝撃度のあるものだったなと。2年3ヶ月の製作期間と7億円の製作費がかかったのも納得です。しかしながら、加藤武が出ていなかったり、金田一耕助を渥美清が演じていたりという独自路線部分もこの映画の特徴であったかなと。

 

推理探偵映画というよりは完全に歴史的事実に即した怪奇ミステリー映画というのがこの映画がさらに異色作品に見られがちな部分でもあったのかなと。金田一耕助自体があまり関係者に深く接したりしないで独自の路線で調査していく部分は気になりました。橋本忍の脚本がいいからか、野村芳太郎の演出力と構成力がいいからか、重厚でわかりやすくて見ごたえのある作品に仕上がってたのは間違いないなと。

 

萩原健一や、小川真由美をはじめとしたキャスティングも見事に思えました。オープニングの落武者たちが滝のところ必死に登っていき、高い場所で景色を見渡したときに村落を見つける場面は何度見てもゾクゾクするなと。津山三十人殺しという実際の事件をモデルにしてるのも、よりリアリティを与えていたと感じました。多治見家と八つ墓村にまつわる由来は戦国時代にまで遡らないとちゃんと語れないという部分もあり、実際にそういった祟りにまつわる事例もあるのかと思うほどでした。

 

小川真由美演じる森美也子が萩原健一演じる寺田辰弥に何もかも知ってるように客観的に語るのも、自分は西家の人間であり、そういった事には直接関係ないというような事をアピールしたかったからかもというようにも感じてしまいました。尼子義孝を演じてる夏八木勲や、その他の落武者を演じてる田中邦衛や、稲葉義男の演技に関しましては、かなりの迫力で毒殺されるときの部分も含め壮相当絶なものを感じました。

 

殺害テクニックや、忍び込み詳細などを見せたりしてないのは、市川崑の監督作品とは異なるかなと。沖永良部島の鍾乳洞でロケをしてるようであり、そういった部分もとても気になりました。当時の落武者殺害の事件の首謀者である村総代の庄左衛門は褒賞として莫大な山林の権利を与えられ、多治見家の財の基礎を築いたにもかかわらず、まさかの大量殺しで全滅する一家というのも…。

 

そういった伏線部分はあらためて納得して凄いなと実感しました。尼子義孝という武将についてもっと知りたいなと思いました。この恨みは末代まで祟ってやると呪いの言葉を吐いて死んでいく部分も、最初はかなり現実とかけ離れてると思ってましたが、実際に置き換えてみるとまんざらでもないかなと。こうもりや、火事などで滅びゆく多治見家の悲劇こそが真実かなと。あらゆる意味であらゆる方面に影響力を与えた野村芳太郎監督による歴史的衝撃作と実感です。 

 

895点 祟られるほどの裏切り騙し行為が末代まで続いていく恐ろしさ壮絶ポイント 8.9点