本陣殺人事件 1975年作品 高林陽一監督作品
中尾彬の追悼企画でこの映画を観れたのはかなり大きかったなと。ずいぶん前の小学生の時にテレビで見た時のこの映画の衝撃具合は今でも忘れられずにここまで来てしまったなと。映画館では浅草東宝のオールナイトで観た以来でしたが、やはり映画館で観れる喜びは大きいなと感じました。「本陣殺人事件」は横溝正史の長編推理小説であり、金田一耕助シリーズの第1作でありますが、映画化は2回のみという事も含めてこの映画がかなり完璧だったからなと感じさせるものでした。「本陣殺人事件」が原作ですが、松田定次監督作品で片岡千恵蔵主演で1947年に映画化した「三本指の男」はかなり観たいなとさらに思わせるものでした。Gパンの金田一耕助で時代設定も違うのだけども、やはり真実を描くという点では気にならないものではありました。ATG作品であるので、見れば見るほど東宝作品などの金田一耕助作品と比べてもかなり登場人物も出てくる場所もかなり限定されていたなと。一柳鈴子役を高沢順子がかなりのアプローチで演じてて素晴らしいなと。警察署だったり、事件関係者もかなり少ないにもかかわらずちゃんと形にしていてさすがだなと。こういった中身で106分にまとめた技術にまとめたカッテイングと編集技術は本当に素晴らしいなと思いました。見直してわかった部分としましては、一柳賢蔵に紙を渡してほしいと女性に紙を渡す三本指の男を演じていたのは今までは一柳三郎かと思っていたら、一柳賢蔵本人だったところでした。金田一耕助役の中尾彬や、一柳賢蔵役の田村高廣や、一柳三郎役の新田章や、久保克子役の水原ゆう紀や、久保銀造役の加賀邦男も完璧な配役だった思いました。一柳賢蔵役の田村高廣の役作りは本当に素晴らしくて一柳賢蔵役にしか見えなかったなと。中尾彬はこの当時は本当に二枚目であり、やはり晩年の中尾彬とは違ってたなと。水車のアップのオープニングからかなりしびれるものでした。三本指の男が犯人で完結するはずが、季節外れの雪で足跡を消し去ってしまったところから判明する展開もわかりやすくてグッドでした。一柳賢蔵の性格から真実を見抜くのはかなり鋭かったなと。アップの多いカメラワークなどはかなりの技術があったからこそかなと。自害した一柳賢蔵が使った刀が滑車のように欄間を通るときに血がついてるはずだからそこにも血がつくかもと思わせてしまうところ、久保克子は自分が殺されると思ったにもかかわらず抵抗しなかったことや、一柳三郎がおじさんを車で送った後に本当にそのままおじさんの家にいて帰ってこなかったのかという事と、雪が降っていて一柳賢蔵が気づいてしまったと思いつつもそのまま計画を実行に移してしまうところなどは気になったところでした。ですが、そういった事を度外視しても問題ないくらい、この映像も世界観も完璧であったと思わせる完璧金田一耕助のミステリー映画の大傑作と実感です。905点 一柳賢蔵のプライドの高さが起こした悲劇の大きさの衝撃度絶大ポイント 9.0点