完成した琵琶塗りのご紹介・・・ | 装飾工房『瑞緒 mizuo』よかよかブログ

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螺鈿細工、漆芸品、装飾品、工芸品を制作する福岡の工房。
日々の作業の様子、体験談などをご紹介します。

ご依頼があってから、構想~完成までほぼ1年をかけて製作した

琵琶塗りのご紹介です。

 

今回は、ご自身が持つ筑前琵琶に塗りと装飾を施して欲しいとのご依頼でした。

ご依頼主は、葵祭で有名な京都上賀茂神社の氏神を祀る加茂氏のご家系ご出身。

元宝ジェンヌでもらっしゃる方です。

そのようなご自身の生涯、そして筑前琵琶に纏わる内容を

琵琶塗りの中に込めるということで製作を承りました。

 

ご依頼主のご希望もありましてモチーフは「植物」となり、

お誕生日や宝塚歌劇団での在団年数、筑前琵琶(五弦の琵琶)など、

関係する数(五、六、十一)で構成するという方向で意匠をまとめました。

 

以上のような内容を軸として図案を作成し、仕様はそこから考えて行く・・・

という流れで制作が進んで行きました。

 

そして、腹板全体を色漆塗りに、加飾の大半を螺鈿細工にして

部分的に蒔絵を施すということとなりました。

 

◎琵琶は霊的な楽器。図案をイメージする上で、

 少しストーリーを考えてみました・・・

 「音色の鳴る方へ十一輪の菫が導かれる。」 

 「背景(中央)には凛として橘が立つ。華やかな流派としての象徴。花と実と成れ。」 

 「傍らには双葉葵が茂り、菫と橘を見守る。」*源流・守護としての双葉葵 

 「上方には天を向く橘と菫の花弁あり。『成就』を表す。」*橘と菫の会合。象徴的、紋章的に。

 

◎意匠的なコンセプトは・・・  女性的に。エレガントで華やかな雰囲気に。

  東洋と中東の中庸的なイメージにして、格調ある紋様に。

  ベースの色漆には京紫を用いて「京都」を印象付け、緑や橙色をアクセントカラーに。

 

図柄全体の右下には、、、  源流としての『双葉葵』を。

 

*『双葉葵』は、京都 上賀茂神社のご神紋です。

 

 

中央には、筑前琵琶の創始者=橘旭翁とその流派=橘流に因んで「橘」を。

*橘の実は、橙色の裏彩色を施したアワビ薄貝に金梨子地塗りを施して。

 

*花弁には白蝶厚貝をレリーフ調に。

*花弁の周囲には、金丸粉蒔絵で五つの音色の輝きを。

 

 

そして、加飾全体をまとめるものとして、

宝塚歌劇団の象徴=「菫(すみれ)」を配しました。

*自然に見られる菫の姿から、紋様的な「菫唐草」へと変容させてみました。

 

実際に製作に入ってからも、新たな試みをしていた為に

試行錯誤が繰り返され、かなり時間や手間を要しました。

楽器としての機能の維持(下地設計)、白蝶厚貝を貼るタイミング、

橘の実をどのように表現するか・・・など、幾つも課題がありましたが、

何とか頭をひねりながら一つ一つクリヤーして、

やっと完成にこぎつけることが出来ました。

 

ここまで到達出来たことは、お客様の熱意とご協力の賜物でもあり、

心より感謝申し上げます。本当にありがとうございました!^^ 

 

◎琵琶名称   「紫漆蝋色塗 橘葵紋様菫唐草螺鈿琵琶」

 

☆本日は中秋の名月。ご依頼主が「月見の歌会」にて本琵琶を奏でられました。

 幽玄な世界をぜひご堪能下さい^^ 

 https://www.facebook.com/events/317206839724232 

 10月1日 17:30~20:00  月見の歌会 -披講と静謐、笛と琵琶の豊かな時間