獅子座の口元付近のお話です。

 

西洋占星術で使用する10分角のデカンは、春分点を基点に10度に分割したものです。古代エジプトでは2000年ほど前のプトレマイオス朝のデンデラのハトホル神殿の天井画などが該当します。黄道分割はメソポタミアの暦や占星術と結びつきがあり、古代エジプトといえばこのデカンを取り上げて研究書や一般本に書く人が多いです。

 

古代エジプトの星時計は暦であり、時計です。上述のデカンと異なる実視観測に基づた美しい仕組みです。宇宙と星の調べです。記録は末期王朝時代にもありますが、新王国時代の王墓の壁画や天井画にも見られます。より古いものでは木棺に記されており(対角線暦ともも呼ばれる暦)、以前は第1中間期が最古でしたが近年では古王国時代のものも見つかっているという情報が出ています。木棺の数も大分増えました。

 

星時計の基本的な仕組みですが、基点はシリウスのヒライアカルライジングです。日の出直前に、随分離れた東南の地平線に忽然ととシリウスが姿を見せる日です。黄道座標は関係ありません。

 

新王国時代のシリウスのヒライアカルライジングでは、太陽はサインのかにの初めの方にありますが、古王国時代の太陽の位置はふたごです。これは恒星を基準に暦を作る場合、歳差運動により季節が少しずつずれることを表しています。3000年ほど続いた古代エジプト王朝ですが、幸運にも、歳差運動による恒星と季節のずれがナイル川の増水の予測に大きく影響しない好都合な期間でもありました。

 

古代エジプトでシリウスのヒライアカルライジングが起きた時期、太陽は今の獅子座付近にありました。図はソフトウェアPlacidus7の3DでBC1289年(ソフトウェア表記ではBC1290年)のおおよそのシリウスのヒライアカルライジングの頃を捉えたものです。Zenithが観測点でルクソール。獅子座の絵を右上から左斜め下に横切る線が、ルクソール基点の天文学上の地平線です。座標上ここに太陽が来るとルクソールで日の出が始まり一条の光が大地に射し、羽を広げた太陽神のホルスが大地に光をもたらすのです。

 

獅子座の口元に太陽があります。

 

 

Amazon.co.jpの「占星術の起源」の紹介のところに、現在セティ一世の王墓の星時計の写しを掲載しています。実際の壁画もこんなふうに漫画チックです。jpgでのアップなので本よりも画質がかなり落ちています。画像の表の上の恒星のリストは右から左へと、日周運動で見える順に並びます。4つ目にライオン頭部、5つ目にライオンの胴体です。表の下はその時間を司る神の名前です。3番目にセクメト神(ライオン)、4番目がイシス神です。

 

なお、この記事はライオンズゲートを知らない私が書いております。

 

以上、占星術の起源(Amazon.co.jpにリンク スターメディアにまとめてあるのでご存知の方もおられると思いますが、昨今のネット上の話題に連動して簡単に記載しました。興味のある方は、占星術の起源をお読みください。よくいただくメッセージに、「価格が安いのでもっとラフな本だと思ったらものすごくよく調べた研究書でした。これは読んでもらうためにわざと安くしたのですね」というものがあります。全くその通りです。