船橋市で大変痛ましい事件が起きてしまいました。生後11か月の長男の顔面を殴るなどの暴行を加えて死亡させたとして、26歳の母親が逮捕されました。母親は「ストレスで頭にきて殴って床に投げた」などと供述し、容疑を認めています。
 この事件を受け、県が管轄する児童相談所が会見し、長男が生まれた当時、容疑者一家が暮らしていた千葉市の児相が、母親に育児放棄の恐れがあると判断し長男を一時保護していたことを公表しました。加えて、船橋市に転居後、県の児相や船橋市の担当者が合わせて4回家庭訪問を実施し、その中で長男の身体に傷やあざは確認されず、身体的な虐待の疑いはなかったと判断していたことを明らかにしました。その上で熊谷知事は、児童虐待死亡事例等検証委員会で、児童相談所の対応などを検証することを明言しました。
 船橋市として、悲願でもあった市独自の児童相談所の建設を進めている最中での出来事でした。これまで船橋市の管轄は、千葉県が設置する市川児相が担当をしていました。そのため市川にとっても、船橋市独自の児相創設は対応数が軽減されることになります。両市にとってメリットのある施策だからこそ、どのような再発防止策を新たに講じることができるのかを冷静に考えることが求められています。
 なお先月は市川市の住宅で、生まれたばかりの女の赤ちゃんの遺体がスーツケースの中から発見される事件も発生しています。取り調べに対し逮捕された22歳の母親は「自分と赤ちゃんの将来を悲観した」と供述しています。20代の母親が逮捕された2つの事件は、どちらもストレスや将来不安といったメンタル面の不調が原因で発生したという事実を、私たちは真剣に受け止める必要があると理解しています。
 現在、世帯の約8割を占める核家族化などを背景に、子育ての孤立化が懸念される中、出産後の母親らを支援する「産後ケア」の需要が高まっています。船橋市と市川市の場合、ともに市内や近隣の指定病院で産後ケアを実施しています。原則として、宿泊型・通所型・訪問型合わせて7日以内の利用ができます。
 問題は「施策が必要な人に届いているか」という点にあります。自身が産後ケアの対象だとは思っていない女性は数多くいます。初産かつ若い方であれば尚更です。その他虐待歴と精神疾患の合併も増加しており、複合的に絡み合って、心の健康に問題が出てくることもあります。
 産後うつは、育児疲れだけでは説明できない倦怠感や抑うつ、不眠などが症状で、産後の女性の10-15%が該当すると言われています。実家にも頼れず、弱音を吐けないまま育児を必死にこなす間に心身のバランスを崩してしまう人は少なくありません。追い詰められてしまう前に、サポートをすることが極めて重要です。誰もが気軽に産後ケアを利用できる環境整備を、国として早急に進めていかなければなりません。