野田元総理はご自身のことを「自衛官の倅」とよく仰っています。なぞらえて言うのであれば、私は「教師の倅」となります。母は小学校(海神南小・葛飾小・法典小・若松小など)で教師として働いていました。だからこそ、教育政策についても主体的に取り組みたいと考えています。
 戦後の経済復興を支えた日本の底力は、教育立国の精神だったと思います。そして資源の乏しい日本だからこそ、更に発展するためには子どもへの投資、すなわち未来への投資が不可欠です。しかしながら現場では、教員離れが止まらなくなっています。その原因は「長時間労働の改善がなされない」というイメージがあるからだと、日頃活動を支援してくれている大学生メンバーと話す中で感じています。
 優秀な人材が集まらなければ、次代を担う子どもの教育は成り立ちません。危機的な現状を踏まえ、文部科学省の諮問機関である中央教育審議会が、教員の確保に向けた対策案を示しました。残業代の代わりに上乗せする「教職調整額」を基本給の10%以上にすることが主な内容でした。
 教職調整額は教職員給与特別措置法(給特法)によって定められています。現在の調整額は基本給の4%で、1971年の同法制定当時の月8時間程度だった残業時間などから算出されました。しかし2022年度の調査では月平均の残業時間の推計は小学校が41時間、中学校が58時間と大幅に増えており、「定額働かせ放題」とも批判されていました。そのため、現行から6%のプラス改定をする方向性となりましたが、給与の改善だけでは教員の魅力向上に繋がりません。
 教師の友人と話していても「残業を減らすための法律改正をしてほしい」と言われており、賃金以外の処遇改善も同時に進めるべきだと感じています。昨年4月公表の教員勤務実態調査でも、 いわゆる「過労死ライン」を超える教員が中学校で 36%、小学校で14%いることが明らかになるなど、教育現場は疲弊しています。長時間労働を何としても是正しなければならず、そのためには、廃止を含めた給特法の抜本的な見直しが必要であると考えます。
 労働基準法が残業代の割増賃金支払いを命じている趣旨は、長時間労働の抑制です。使用者は労働者を残業させると、その労働者の時間単価以上の残業代支払いを命じられます。この残業代支払いを避けるために、使用者は労働時間削減に向けて努力し、結果として長時間労働抑制に繋がると言うのが法の狙いです。しかし給特法下では、使用者に残業代支払い義務が課されず、労働時間管理の意識が鈍くなります。管理職が教員に過大な業務を命じていても法的には教員の自発的な行為とみなされ、長時間労働が蔓延する元凶となっています。かつて田中角栄内閣が「人材確保法」を導入し教員の処遇改善を大胆に行ったように、有為な人材がたくさん集まる魅力的な職場にしなければなりません。そのためには、給特法を変革すべきです。