他方、国レベルでの子ども政策は迷走しています。少子化対策拡充の財源として2026年度から徴収を始める「子育て支援金」について、子ども家庭庁が年収別負担額を公表しました。例えば年収600万円の被保険者の場合、2028年度に月額1000円の負担となります。岸田首相は2月の国会で「加入者一人当たり平均500円弱と見込まれる」と答弁していましたが、わずか2か月で倍増しました。その理由は「親の扶養に入る子どもにまで払わせる」というおかしな前提で算出していたためでした。一人当たりの負担額を少なく見せるためのトリックであり、このようなごまかしを平気でする姿勢に強く憤りを感じます。
そもそも支援金は医療保険料と併せて徴収する仕組みとなっており、これでは「自分や家族の病気やケガに備える」という保険本来の趣旨と乖離が生じてしまいます。保険業界出身の私からすると理解ができません。それどころか現役世代の手取り額が減り、企業側の事業主負担が重くなるため、賃上げ意欲が低下し正規雇用を控えることにも繋がりかねません。社会保険の仕組みを使えば現役世代の負担が重くなり、少子化対策の狙いと逆行します。
社会全体で少子化と向き合うのであれば、正々堂々と税金で財源を集めるのが筋です。私は、使途が不明瞭な膨大な基金、委託業者による中抜きなどを徹底的に改革した上で、税制の所得再分配機能が先進7カ国で最も低い現状に鑑み、所得税の累進性強化、「1億円の壁」を解消する金融所得課税改革など、フェアな税制改革を実行することで財源を捻出すべきであると考えています。
そして最大の問題は「子育て支援金が少子化対策にならない」ということです。支援金は、児童手当の拡充や妊娠・出産時の支援強化、男性育休率の引き上げなどに使われます。どれも必要な施策だと思いますが、「少子化対策」にはなりません。子どもを増やすためには、「子育てのしやすい環境整備」ではなく「結婚する人を増やすこと」が必要です。何度も訴えているこの論点を、国会の場でもより真剣に議論したいと考えています。