2024年の春闘が始まっています。私も前職では労働組合準専従という立場で処遇の維持向上に邁進していましたので、この時期になるとボルテージが高まります。中央組織の連合では、昨年の3.58%に続き、今年は5%の賃上げを掲げています。目標実現に向け全力で後押しする所存です。
 中小企業に求められているのは、自力で持続的に賃金を上げていけるだけの収益構造を創り上げることです。発注者側の不当な圧力を防ぎ価格転嫁を後押しすることも大切ですが、新たな需要を掘り起こす商品・サービスを創造し消費を拡大させることこそが、デフレからの完全脱却や経済の好循環を実現する確かな道であるはずです。そのためにも、労使で収益構造改革を徹底して議論できる環境を春闘を通じて整えることが重要です。
 大企業は「成果の公正な配分」を実現することが肝要です。法人企業統計調査では、従業員給与と役員給与は1960年の50倍まで現在は伸びましたが、株主還元は90倍にも増えています。このような事実を踏まえると、本来闘うべき相手は無理な還元を要求する投資家・株主であることが見えてきます。
 現在増えているのが外国人投資家です。外国人投資家はいわゆる機関投資家であり、主に大企業に対して投資しています。日本をリードする大企業の多くで、株主の半数以上を外国人投資家が占めています。従業員は一生懸命働いて利益を出しても、50%以上が外国に行ってしまうのが現状であり、こうした状況で従業員が一層頑張ろうと思えるでしょうか。そもそも証券市場というのは、お金を入れてくれるから社会的に重要視される存在であり、法律は投資家を保護し優先してきました。しかし、経済が成熟化してしまった後は、証券市場はもう我々の味方ではありません。投資家が回収家に転じて20年以上経っても彼らを優遇しているがために、日本が大変苦しんでいると感じています。株主資本主義の状況を是正すべきです。
 具体的には自社株買いを制限することを提案します。参考として通常の自社株買いを制限したうえで、通常配当を1%下げた場合を想定します。金融機関を例にすると、現状4.7%の配当を3.7%に下げると、まずは役員の給与を50%上げることができます。それでもまだ余剰があるので、従業員が現金でもらう給与を10%上げることができます。それでもまだ余剰があるので、資産形成として、従業員には現金のほかに株式報酬を与えることができます。
 当然、配当を下げるという点だけを捉えれば、投資家は反対すると思われるかもしれませんが、付加価値を適正に分配すれば、従業員のやる気は上がり、イノベーションを起こして、売上が伸び、利益も増えます。その結果として株価が伸びれば、すべての人にとってプラスとなります。私は「株主がもらい過ぎている利益を少し下げて、成果を公正に分け合う」ことこそが、今の日本が実行すべき政策だと考えています。