私も共著者として執筆した書籍「イノベーションの競争戦略」が日本マーケティング本大賞2023を受賞しました。学術的側面でも大きな評価を頂戴し、大変光栄です。
 日本では「イノベーション=画期的な技術革新や発明」という偏ったイメージが深く根付いてしまっています。しかし本書はそれによって世の人々を「行動変容」させることをゴールと捉えています。そのため、イノベーションの定義は「これまでにない価値の創造により、顧客の行動が変わること」としています。
 例えば、アメリカで2000年に生まれた「セグウェイ」という電動立ち乗り二輪車がありました。スティーヴ・ジョブズやビル・ゲイツも絶賛したといわれる革新的乗り物でしたが、広く普及しないまま、2020年にひっそりと生産終了しました。逆に、技術的に新しさはなくともイノベーションと呼べる商品やサービスは存在します。例えばコロナ禍以降、オンライン会議ツールとして最も広く普及したのは「Zoom」です。しかし、オンライン会議ツールには先行者が存在し、Zoomは発明とは言えません。ですがZoomは「使用するためのハードルが極めて低かった」ことで勝者となりました。従来のWeb会議システムは、あらかじめソフトをインストールしたり、IDを登録したりする必要がありました。対してZoomは、主催者以外の参加者はURLをクリックするだけで会議に参加できるように設計することで敷居を下げました。
 日本企業の事例もあります。リポビタンDを海外進出させた結果、模倣品が多く登場しました。そこに目をつけた1人の実業家が、タイに既に存在したリポビタンDと同じタウリン入りのドリンクを発見しました。そこでタイ以外での販売ライセンス獲得し、ヨーロッパ向けに改良した上で「レッドブル」と名付けて発売しました。その内実は、既にある商品のターゲット層を「疲れている中高年」から「元気溢れる若者」に、商品コンセプトを「疲労回復」から「何か始める前のエネルギー注入」へと変えただけです。しかし結果として、レッドブルは世界市場で圧倒的なブランド力を持つ飲料となりました。またドコモのiモードがなければ、iPhoneも生まれていなかったと言われています。これらの例を踏まえると「日本企業にはまだ、世界に先駆けるだけの技術力・発明力がある」ということは自明です。
 ただ、日本企業には開発をゴールと捉え、その後の行動変容に重きを置かない傾向があり、それが阻害要因となっています。加えて日本企業は「全て自前で揃えよう」という真面目すぎる風土があります。アップルなどは製品の製造を完全に外注しています。日本企業が極端な「自前主義」を放棄することも、イノベーション力向上のためには不可欠です。水沼ひでゆきは理論と実践のベストミックスを図り、日本経済復活に向けたアプローチを、仲間と共に取り組んで参ります。更なる詳細は本書をご確認ください。
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