6月1日付で首相秘書官が更迭されました。首相公邸に親戚を招き入れ、大宴会をしていたことが原因だとされています。以前にも「公用車を乗り回して外遊先のパリやロンドンを観光していた」との“私物化”疑惑が報じられたこともあり、さすがに守り切れなくなったのでしょう。報道を受けて、私は12歳の頃に抱いた気持ちを思い出しました
野田さんとの衝撃的な出会いをし、「政治家にも素晴らしい人はいる」と思った当時の私は、他にどんな人がいるのか気になっていました。
手始めに当時の総理大臣のことを調べてみたところ、先祖代々政治家をしていることが分かりました。「何で国会議員が世襲によって決まるのだろう」。これが正面から初めて政治に向き合った時に覚えた、最初の違和感でした。
勿論、家族の影響を受けて育ち、役職が人を成長させる面もあるので、一概に二世や御曹司・ご令嬢がダメだとは思いません。しかしそれは芸能や民間の世界の話であって、政治に世襲を持ち込むべきではありません。なぜなら議員という職は、我々の納めた税金が投入される公職だからです。
呉服屋の子供が放漫な経営をしてお店が潰れた場合、そのご家族はお気の毒ですが、地域経済という規模で考えると被害は少なく済みます。ですがそれが国会議員の場合、その被害者は「国民全員」となるのです。責任はより大きいといえます。海外の方々が日本の世襲議員に驚くのはそれ故です。
政治家の地位が世襲されると、政治がその家系の「家業」となり、「権力」「人間関係」「利害関係」などが全て引き継がれます。これにより「権力の私物化」が起き、政治の腐敗を招きます。
そうした腐敗を防ぐためにかつて政党自身が世襲の禁止を打ち出したことがありました。野田さんが事務局長を務めていた「政治改革推進本部」における2009年4月の取り組みです。民主党はマニフェストに「現職の国会議員の配偶者と3親等内の親族が、同一選挙区から連続して立候補することを党のルールとして認めない」と明記しました。これに対抗する形で、自民党も同様の対象を「次回の総選挙から公認、推薦しない」と公約しました。政権交代可能な二大政党制の実現により、政治に緊張感をもたらした好例でした。
しかしこうした動きは、自民党の政権復帰を経て雲散霧消しました。喉元過ぎれば熱さを忘れるとはまさにこのこと。最近ではHPのトップに家系図を掲げる議員まで出る始末です。冒頭に記載した総理の息子も家系図を掲げた議員も、私と同じ32歳。呆れてものも言えません。
「職業選択の自由」と言う観点で言えば、国に資する人材が、世襲という自分の力ではどうにもならないしがらみにより現実問題として立候補出来ないことの方が、よほど多くの有為な方々の職業選択の自由を実質的に侵害していると言えるでしょう。せめて同一選挙区における世襲の禁止を打ち出すべきです。
政治家が特権階級になっていないか、利権との癒着がないか、公正にチェックすることで政治への信頼を取り戻さなければなりません。