日本銀行で金融政策決定会合が開かれ、政策金利が0・5%から0・75%へ引き上げられることになりました。1月以来の利上げであることから「利上げに始まり利上げで終わる1年」でした。もっとも、実質金利(政策金利からインフレ率を引いた金利)は依然として大幅なマイナスです。3年半にわたる2%超のインフレと円の独歩安を踏まえれば、今回の利上げは金融引き締めというよりも、特異な金融緩和状態をわずかに是正する措置だったと理解しています。

 重要なのは、金融政策・財政政策・為替の三者の整合性です。米国が利下げに転じる中で日本だけが利上げする構図は異例ですが、それだけ物価と為替の安定を日銀が重要視していることの証左でもあります。

 そして市場の関心は、今後の利上げペースや政策金利を最終的にどこまで引き上げるのかという点に移っています。前提として現在の日銀は、景気を刺激も抑制もしない「中立金利」が利上げの最終到達点だとみなしています。なお中立金利は1~2・5%の間にあると過去推計されていますが、日銀は最新のデータで再計算する旨を公表しています。なぜなら中立金利の下限が1%だと、次回の利上げで到達してしまうからです。到達すればその後も利上げを続ける根拠が薄弱になります。そのため日銀は、円安進行に備えて下限を引き上げる準備に入ったのだと理解しています。

 そもそも利上げは、一般的にネガティブな印象を持たれがちです。確かに利上げをすれば景気が鈍化するのがセオリーですが、利上げをしなければ円安とインフレが進むことになり、更に景気が悪化しかねないリスクも存在しています。所得分配の観点でも、金利の引き上げは金融資産の豊富な高齢者の利子収入を増加させる効果もあります。公的年金がマクロ経済スライドで先細りしていく中では、利子・配当収入など財産所得が増えなくては、年金生活者は展望が描けず消費も進みません。政府が配る給付金などは単発であるため、利上げによって財産所得を増やすことで、継続的な所得増を目指す方が合理的です。

 その他の大きな問題として財政再建があります。政府が過剰な歳出拡大をすれば、長期金利は上昇し、それによって供給力強化は進みにくくなります。日本は人手不足に悩まされているので、中長期的な供給力の強化が重要であり、だからこそ賢い支出を徹底することで予算規模を縮減し、長期金利を下げることが求められています。この3年間のインフレによって、直近の国の予算は見込みよりも税収が増えていますが、その多くが利払費の増加分で相殺されてしまっている事実を直視すべきです。

 ゼロ金利政策は、数年であれば投資や消費を刺激し、景気を回復させる力があります。しかし恒常化した場合、個人に対する実質的な増税となる可能性があります。日本の場合、仮に平均的な預金金利が3%であれば、家計は年間25兆円程度の追加的な利子所得を得ていた可能性が指摘されています。つまりバブル崩壊からアベノミクスに至るまでの金融政策は、日本国民が1990年代以前に受け取っていた預貯金の利子所得を、政府に差し出し利払い費に充当するような政策効果も有してしまっていたのではないかと推察しています。

 様々なジレンマの中で、日銀が今後どのように動くかが問われています。私も財務金融委員会理事として、植田総裁と国益に資する対話を深めて参ります。最後となりますが、今年もNextageをご愛読いただき誠に有難うございました。深く感謝申し上げます。良いお年をお迎え下さい。