先日、会食中に、

 

出てきた漬物を一口噛んだ瞬間、

「あ、これ腐ってるわ」

と思いました。

 

匂いがね、ただごとじゃなかったんです。

ただ、僕、グルメじゃないんで、もしかしたらこういう食べものかもなぁと思って、念のためもう一つ食べてみたんですよ。

で、確信しました。これは腐ってるぞと。

 

2個目に関しては、ゴングと同時に、「腐敗」がダッシュして左飛び膝蹴りで「発酵」をKOするみたいな状況みたいになってたんですよ。


僕、グルメじゃないんですけど、こういうのすごく敏感なんです。

地球上で一番売れる本書くまで生き続けようと思ってますんで、毒に対する恐れが半端ないんですよね。

ただ、会食中で、しかも僕が選んだお店じゃないんで「これ腐ってません?」って言えないじゃないですか。

ただ、このまま放置した場合、他のお客さんのことを考えると、相当数の人が苦しむ可能性があるじゃないですか。

そこで、漬物が乗った小皿を――あのときの動きをここで動画で見せたいくらいなんですけど、もし、ヒーローが万引きするとしたらあんな動きになると思うんですけど、会食出席者の目に触れないように素早く手の中に隠して、部屋を出ました。

それで、ちょうど店員さんが通りかかったので呼び止めて、小皿を差し出して、、、

ただ、僕ってこの世で一番クレーマー嫌ってる人間じゃないですか。

新宿の伊勢丹メンズ館で受付の女性にすごい勢いでクレームつけてたおじさんに「どうされました?」「どうされました?」と泣きそうな顔で言いながら密着し続けるという、「対クレーマー小泣じじい」で見事撃退して、伊勢丹メンズ館の店長的な男性にお礼を言われた男じゃないですか(実話です)。


そこで、店員さんに漬物の入った小皿を差し出して、


「もしかしたら、これ、こういう食べ物なのかもしれないんですけど、腐っているような気がしまして、ただこれは、クレームというわけじゃないんですけど……」

僕としてはかなり丁重に話したつもりだったんですけど、この店員さんがあわあわし始めてしまったので、クレーマーじゃないということを強調するために、


「(腐ってたとしても)僕は全然気にしないタイプなんで! 全然、気にしないタイプなんで!」


と散々「気にしないタイプ」を強調しながら部屋に戻ったのですが


数分後、その店員さんが部屋に来て、僕を外に連れ出してこう言いました。




「厨房に確認したところ、こういう食べ物のようです(腐ってないです)」





――このあとは、地獄でしたね。


「全然気にしないタイプなんで!」って連呼した自分に対する恥ずかしさ。


さらに、この話を笑い話として場に出せない苦しさ(お店を選んだ人に失礼ですし)。


いや、最初の一つ目を食べた時点で「何も言わずに残す」という選択をしておけば、こんな気持ちを味わうことはなかったんです。


ただ、それは僕の美学が許さなかったんですよね。


万が一腐ってたとしたら、多くの人が犠牲になる。その被害を最小限で食い止めるために最善を尽くすのがリアル・ヒーローじゃないですか。


ま、その意味では、店員さんから驚愕の事実を知らされたとき、

 

「そうか、腐った漬物を食べた人は、一人もいなかったんだ……」

 

と微笑みながらスコッチ飲んで終わりにしなきゃいけない話ではあるんですけど、


すみません、これだけは飲み込めないんで、ここで言わせてください。


もし、あの味で成立してるんだとしたら、




「ぬか漬け」って何なの?





剣道部の部室みたいな味したんだけど。