先日、港区役所に行ったら素晴らしい企画を見つけました。

資生堂が協賛している LAVENDER RINGという企画で、

がんを患っている人に、資生堂の人がメイクアップをしてヘアスタイルを整え、写真家が撮影するという内容なのですが

http://lavender-ring.com/index.html

もちろんこちらも素敵な企画なのですが、僕が特に衝撃を受けたのは、その横にあった


DRAWING THE FUTURE


という企画です。

これは、親子のどちらかが、がんを患っている家族に向けた企画で、親子で「将来一緒に何をしたいか」を語り合い、イラストレーターの協力のもと、絵を描いて3Dプリンターでイメージを残すというものなのですが、




これ、すごくないですか?

何がすごいと感じたのかといいますと……

まず、自己啓発のジャンルでよく言われることで「将来手に入れたいもののヴィジュアルを見える場所に置く」というものがあります。

たとえば、住みたい家があるとしたら、その家の詳細が分かる写真を見える場所に置いておくことで脳が刺激されて夢に向かって努力しやすくなる、というものです。

ただ、この方法には前々から課題があると思っていて、夢というのはいわば自分の秘められた欲望であり、他の人も見える場所に置いておくのは恥ずかしいという感情が生まれてしまいます。自分にとってすごく大事なものなのに人に見られると恥ずかしい、これは大きな課題だと感じていました。

『人生はニャンとかなる!』という本が生まれた背景にもこの恥ずかしさがあります。

自分が大好きな名言を壁に貼っていたのですが、取材で人が部屋に来るたびに(恥ずかしいなぁ……)と思って取り外していたのですが、あるとき「一緒に名言を楽しめる状態にできないか」と考え、部屋にあっても(いても)恥ずかしくないものということで、犬や猫の写真を使うという演出が生まれました。

そして、先ほどの

DRAWING THE FUTURE

ですが、

「夢」という、そのまま人前に出したら恥ずかしさを感じる可能性のあるものを、



キャラクター化することでいつも手元に置いておくことができる


これが、本当に、本当に、素晴らしいのです。


そして、僕は、「どうしてこんな素晴らしい企画を思いつけたのだろう」と区役所の一角にあった企画展を端から端まで見ながら考えていたのですが、一つの仮説を思いつきました。


それは、がんを患っている人(がんサバイバー)たちの思いの「切実さ」が、この企画を呼び込んだのではないか、ということです。


家族ががんを患ったとき、それでも生活の明るさを失わないためには夢が必要で、その夢はいつも身近な場所に置いておきたかった。

いつも身近にいていいものに、可愛らしいものに……

こうした思いが、課題を乗り越えさせていったのではないでしょうか。

もちろん、思いついた人は素晴らしいですが、本当に素晴らしい企画とは、見えない思いの集合が、人を通して生まれるのだと感じています。

それは、裏を返せば、こうした企画を必要としない人というのは、夢を切実に必要としていない、夢をいつも意識している必要がないと言えるかもしれません。


でも、僕はこの企画展を見て思いました。


病気を患っていない僕たちも、


余命宣告を受けていないだけで、何十年後かには必ずこの世を去る「サバイバー」であり、


そのうちの多くは、将来のがんサバイバーであり、


また、がんサバイバーよりも早くこの世を去る場合もあるかもしれないのです。


だから、僕たちも、今この瞬間から、


DRAWING THE FUTURE


を外側から眺めるのではなく、

 

企画の一員として、

 

大切な人と夢を語り合い、

 

イメージを描き始めていいのだと思いました。