我らが文響社にも超優秀な編集者が加入いたしまして、

彼が新宿の近くに住んでいるので新宿で1杯飲もうということになったんですけど、

楽しく飲んでたら酔っぱらってしまって

「やっぱりね、本にしろ、映画にしろ、食べ物にしろさ、魂が込められてるものはすぐ分かるよね。そりゃもう、一瞬で分かる。向こうから訴えかけてくるもんね」

と語り出してしまい、その勢いで、



「俺が、今から新宿の『魂』見せるから」



と彼を店から連れ出したわけです。


ちなみに、この新宿の『魂』を先に言ってしまうと、




ギラギラガールズ




なんですね。

このお店は「ダンス+キャバクラ」という少し特殊な形態のお店なんですけど、僕も一年ほど前にディープな新宿を知り尽くした編集者の人に一度だけ連れて行ってもらったんですけど、

店の前に着いた瞬間、衝撃を受けましたよね。


やっぱり、水野は「魂のかぎ分け師」なんで、


神様からは「すっと通った鼻筋」は与えられませんでしたけど、


「これ、代わりに」


って渡されたのが「魂をかぎ分けられる鼻」でしたからね。



「株やろかな」って思ってるくらいですから。


僕、社会の流れとか全然分からないんですけど、その会社の出してる商品とかサービス見た瞬間「かぎ分け」られちゃうんで、それで、商品やサービスっていうのはその会社の絞り汁みたいなところがあるんで、そこに魂が入るってことはトップに魂が入ってるってことなんで、俺、全然株イケるんじゃないか、ウォーレンバフェ也になれるんじゃないかって思ってるくらいなんで、


「ギラギラガールズ」の店前に着いた時点で、プンプン匂いましたよね。


まずね、ギラギラなんですよ。


店頭のイルミネーションがギラギラなんですわ。


「ギラギラガールズなんだからギラギラしてて当たり前じゃねえか」って言うお前の顔面をつかんで、ギラギラガールズの立体看板の一番痛い部分であろう「 ゛」(濁点)の部分に打ちつけながら言いたいのは、



看板のイルミネーションが、一点の曇りもない、完璧なギラギラなんですよ。



もののけ姫のアシタカは「曇りなき眼で世界を見る」と言いましたけど、この看板見た瞬間アシタカは眼を欲望で曇らせまくりながらオッコトヌシを率いて店内に飛び込んむことになると思われますが、


僕が感動したのは、看板だけじゃないんです。


僕が編集者に連れられて行ったときは、店が満席でお客さんが数人、外で待ってたんですけどその人たちが真面目そうなサラリーマンだったんですよ。


しかも、集団じゃなくて一人でぽつねんと立ってる人が結構いたんです。


これはすごいことだと思いました。


そもそも歌舞伎町って怖い街じゃないですか。「歌舞伎町に遊びに行く」は「身ぐるみはがされに行く」と同義じゃないですか。


そんな場所に一人でいるってこと自体、相当ハードル高いはずなんですよ。



でも、それをさせるだけの魅力が、ギラギラにはあるってことです。




いやはや、神はディテールに宿ると言いますが、お店に入る前からすでに「水野の魂アンテナ」はバリ3で立ってたわけですが、店内に入ったらアンテナがバリ4になりましたよね。




もちろん、4本目はチンポです。




まあ、今回の記事で女性読者は3分の1くらいになるのかな。


でも、女性読者が減るのと、ギラギラの素晴らしさを伝えるのを、どちらを取るんだって言われたら、


迷うことなく、ギラギラです。


なぜなら、それが、「すっと通った鼻筋」を与えられなかった側の人間の使命なわけだから。


というわけで、ギラギラガールズは女性は魅力的だったわけですが、どうしてこの店の女性は素晴らしいのかというと、


それは、女性たちが「カッコイイダンサー」として扱われているからなんですよ。


それは「大勢の女の子が、過酷なトレーニングに耐え安月給のアイドルになりたがる理由」と同じだと思います。


「輝ける」からなんですよね。


つまり、お店というのは、もちろん、それは会社に対しても言えることですが、ただ給料が高いだけじゃだめなんです。


そこで働く者たちに「輝き」を与えなければならない。


そしてまさに、その輝きこそが「ギラギラ」だったわけですね。


その輝きを与えられるからこそ、ギラギラガールズがギラギラガールズたる所以なんですよ。


だから女の子のダンスにもすごく気合が入るし、みんな楽しそうに働いている、そんな場所の空気が盛り上がらないはずがない。


これはもう、こんな場と空気を作り出した経営陣に乾杯ですよね。



――という話を、飲みながら編集者のMくんに熱く語りまして、そしたらもちろん「行ってみたいです」ってことになったんで


「ついてきなさい」


と、お会計を済まして店に向かったんですけど、







「入店拒否」されたんですよ。(実話です)





それで、その理由なんですけど、乙武くんの事件みたいになっちゃうとアレなんで、詳しく書いておきますが、



まず、僕がこの店に行くのが1年ぶりだったというのと、前の店で日本酒を飲んでかなり酔っぱらっていたので



店の前で従業員に








「あれ? ここギラギラガールズじゃん! ギリギリガールズじゃないじゃん! ギリギリガールズじゃないじゃん!」






と言い続けた、


つまりは、







ギラギラガールズとギリギリガールズの区別がつかなくなっていたのです。(実話です)







そしたら、その言葉が地雷だったのか、お兄さんの表情がガチで変わって




「ウチ、酔っぱらったお客さんだめなんで」



って言われたんで、最初冗談かと思ったら、全然マジなんで



そこで携帯電話取り出してグーグルで自分の名前検索して見せて







「ほら、これ、俺だから! 俺、水野だから! 俺の検索件数、水野美紀と水野真紀の次だから! 俺、『日本三大水野』のうちの一人だから!」






って言ってたらいよいよ「こいつおかしい」と思われたみたいで



「入店お断りします!」



って言われて、本当にお店に入れてもらえなかったんですね。






いや、めちゃくちゃ恥ずかしかったですよ。





「顔パス」という言葉があるこの世の中で、まさかの「入店拒否」ですよ。




しかも編集者の前で。




しかも、あれだけホメ上げた店からの入店拒否ですからね。




ただ――この場を借りて、これだけは言わせてほしい。



この水野を入店拒否するっていう、己の信念を曲げない姿勢、






さすがギラギラだわ。






そして、その素晴らしさを見抜くあたり、





さすが俺の鼻だわ。




正直、今回の事件は、僕の鼻が優れ過ぎたことで起きた悲劇でしたよね。




ちなみに、そのあと





帰るために乗ろうとしたタクシーにも乗車拒否されました。