基本的に、寝不足になることはほとんどないのですが

今、書いている映画脚本の締切りが2日後とか3日後で設定されているので

間に合わないと朝の5時に提出みたいな状況になり、久しぶりの寝不足を経験しているのですが

そして、昔からよく言われることですが

寝不足になると男は子孫を残そうと性欲がめちゃ高まるということで

そして、例に漏れず僕も男なんで

脚本を提出した朝の5時なんてもう性欲が高まりまくっておりまして

それでちょうど自宅には1週間前に借りた「日活ロマンポルノ」がありまして

「おい、水野。お前忙しいとか言っておきながらポルノ借りる余裕あんじゃねーか」って言われそうなんですけど

資料として見なきゃいけない映画を借りに渋谷のTSUTAYAに行ったところ

たまたま日活ロマンポルノのコーナーを横切ってしまいまして

このブログの親愛なる読者の皆様方はすでにご承知だとは思いますが、

水野は日活ロマンポルノを、ほぼ全部見ている状況なのですが

このとき、VHSの作品でいくつかまだ見逃しているのを発見してしまったので、


「ロマンポルノはコンプリートしなければならない」


これが水野のコンプライアンスなんで、

VHSを3本借りてきたんですけど、全然見る暇なくて

ついに、1週間レンタルの最終日で朝の8時までにポストに投函しない状況まで追い込まれてしまったわけです。


仕事が忙しかったからね。ずっと頑張ってたからね。


というわけで、仕事を終えた朝の5時、ビデオテープをビデオデッキに挿入したんですけど、


……まあロマンポルノの話は過去のブログにも20回近く登場してるので改めて言う必要もないと思いますが


まあ、「プロ」ですよね。


ロマンポルノを見るという意味で、水野はプロフェッショナルですよね。



いわば、エロフェッショナルですよね。


ちなみに僕は「ロマンポルノの見方」として38の流儀を持っているのですが


その中でも一番重要な流儀として


まだNHKのプロフェッショナル仕事の流儀が続いていたら、次の一行が黒バックに白地でポーンと浮かび上がるはずなんですけど





水野は決して、ポルノを早送りしない





その理由は「なぜ水野はロマンポルノを見るのか」という根源的な問いにもつながってくるのですが


僕はストーリーに興奮するタイプなんですよ。


だから普通のAVで普通に興奮できる人の意味が分からないというか、


「かわいい」とか「胸の形がいい」とかよりも


その女性がどういう状況でどういう感情を持ってその行為をするかが非常に重要になってくる、というかそれがすべてなんですよ。


だからこそ決して早送りはしない、それが僕のポルノの流儀なのですが、


ここで勘の良い読者の方ならお気づきかもしれませんが



A この日、仕事が終わったのが朝の5時


B ポストに投函しなければならないのが8時


C 見る予定のロマンポルノが3本


D 早送りしない



この4つが成立するには明らかに時間が足らず


「おいおい水野、そんなんでお前はエロフェッショナルと呼べるのか?」


という心配の声も聞こえてきそうですが、その質問に対しては



「イエス。アイ、アム エロフェッショナル」


と答えることになりましょう。


そもそも僕はVHSを借りた時点で

「この3本を全部見ることはないだろう」

と予想していたのですね。


というのも、僕レベルになると、ポルノ映画の「最初の1分」見ればその作品のクオリティが分かってしまうんですよ。


少し話は逸れますが


ロマンポルノやエロ漫画、エロゲームなど、「ストーリー」が重視されるエロ市場において、水野は、カバー、タイトル、そして最初の1ページ(1分)を見れば、


そのクオリティを確実に看破できます。


僕の著作の内容全部忘れてもいいので、次の一言は絶対に覚えておいてください。そして、できれば僕の死後、水野敬也名言集の最初の名言の一つに、次の一言を掲載してください。






優れたエロ作品は、タイトル、ジャケット、冒頭のシーンで、一切のエロを使用しない。









悪い例を挙げるのであれば


「団地妻淫乱地獄」


これはもう間違いなく「分かってない」側の作品です。


アラーキーの言葉で


「女は脱がしていくから興奮する。最初から全裸の女に誰が勃起するか」


というのがあるのですが、この意見に僕も賛成で


エロというのは、エロでないところからの落差に生じるものなので


客にいきなりエロを見せるというのはエロのことが何もわかってない、ノン・エロフェッショナルな人間のすることであり、今すぐ神聖なるエロ市場から足を洗って欲しいところです。


逆に、本当に優れたエロ・クリエーター(略して「エローター」)は、タイトルからとてつもないラインを突いてきます。


一つ、例を挙げましょう。





「ダブルベッド」





これは超有名な日活ロマンポルノで、柄本明さんなども出演している映画のタイトルです。

そして、このダブルベッドというのは、本来はいやらしくもなんともないただの言葉なのですが

同時になんともいえないHな響きがあり、かつ、この作品は、奥さんが不倫する話なので2つベッドがあるという意味でも「ダブルベッド」が比喩として表現されているわけです。




え? 水野が「ダブルベッド」で何回抜いたかって?




具体的な数字は控えさせていただきますが、日活・水野コンプライアンスでは




「優れた作品には敬意を表して三ケタ以上抜く」を遵守しなければならない




とだけお答えしておきましょう。



――というわけで、早朝5時にロマンポルノを見始めたわけですが、


いきなり2本外しましたよね。


1本目は、いきなり濡れ場で「無いわ」ってことになり、


2本目も同様に、速攻で女のシャワーシーンになったんで「無いわ」と判断できました。


まあ今回は「コンプリート」を優先してたんで、この2本はタイトル的にも無いかなーって思ってたやつなんですけど。


こうして最後の1本になったわけですが、


また、これは自分の中で最も期待できそうだと考えていた作品だったのですが、


ここでアマチュアの人だったら、「この1本に賭ける」みたいなことになって焦りまくることでしょうけど


そこはやっぱりプロなんでね。エロをフェショナってる人間なんで。


無理に抜くくらいなら、これまで大切に集めてきた水野コレクションの中から良質なものを選べばいいわってことで


むしろ、「駄作で抜いた」ことによって、自分のエロフェッショナルとしての純粋な姿勢が穢されることの方が怖いんで


あくまで、借りたビデオの1/3としてのね、


何ら気負うことなく、ビデオを再生し始めたんですよ。


そしたらね、オープニングから


「こ、これはっ!!!」


と思わせる内容だったんですよ。


お金持ち令嬢が夜道を歩いているのですが、その雰囲気からして「この監督、気合入ってんなー」って感じなんですよ。

それで、「これは腰を据えて見ないといかんぞ」ってことで姿勢を正して、ティッシュの箱を隣において、いわゆる「正しい所作」でもって臨むことにしました。



そしたら、そのあと、予想もしなかったことが起きたんですよ。



最初は本当に、何が起きたか分かりませんでした。



結論を言うと、突然、画面の中で男女が、おっぱじめたんです。



ただね、


これは作品が悪いわけじゃないんです


僕の見立ては間違っていなかったはずなんです。



じゃあ、どうして画面の中で男女がおっぱじめたのかと言うと、







僕、寝ちゃったんですよ。






疲れてたんで、見てる途中で寝ちゃったんです。





それで、



「ハッ!」



と目を覚ましたら



もう、目の前でズッコンバッコンですよ。




時、すでに遅しですよ。



とりあえず、猛スピードでリモコンを手に取りビデオ画面を一時停止したんですけど


完全に濡れ場の映像が頭に焼きついてしまっているわけで、


ここでテープを巻き戻してストーリーを追ったとしても、もはや犯人が分かってるミステリーを見るようなもので


何も興奮できない訳です。



(ど、どっちだ!?)


僕は頭を抱えました。



ここはやはり、ストーリー重視派として、ビデオテープを巻き戻して再生するのか?



それとも、このままベッドシーンで抜くのか?



このとき僕は、エロフェッショナルとして、過去一度も立たされたことのない窮地、いや





勃たされたことのない窮地





に追い込まれました。




焦りました。



死ぬほど焦りました。


しかも、こうしている間にも、どんどん自分の興奮は冷めていってしまう。決断は一刻も早い方がいいのです。


そして、結果として僕が選んだ道は――





目の前のベッドシーンで抜く




でした。





なぜか?





その理由は――






ストーリーを見るのが面倒臭かったから




です。




だって、朝の6時ですよ。


目の前に女の裸があるのになんでこれから何十分も何のエロさもない映像見なきゃいかんのっていうね。


ダるいよっていうね。


眠いよっていうね。


でも、せっかく3本も借りたんだから1回くらい抜いておかないともったいないっていうね。



だから僕は、ビデオテープを少しだけ巻き戻して、ズボンを降ろして抜いたわけなんですけど、



ただ、このとき僕は、心の中で泣いていました。



普通の男に成り下がってしまった自分に――



今まで自分の中で大切にしてきた、エロフェッショナルとしてのプライドが失われたことに――。



だから、この日の早朝6時、



僕が濡らしたティッシュには




2種類の液体が含まれていたような気がするんです。