「損切り」とは、投資したお金が回収できそうもないときに、そのお金をあきらめて被害を抑えるという株式用語ですが

 これは本当に素晴らしい言葉だと思います。

 たとえば、すごい労力をかけて進めてきたプロジェクトが間違っていたことが分かったときも
「白紙に戻す」
と考えると決断することが難しいですが

「ここは損切りした方がいいんじゃないか」

と考えると、「捨てる」という行為の向こうに、自分にとってのメリットを感じることができるからです。

 こうした言葉には「ネガティブな状況の中にポジティブな視点を与えることができる」効果があり、そういう言葉がたくさん増えれば、仕事の効率が良くなったり、仕事が楽しくなるのではないかと思いました。
 そこで今回は損切りのような言葉を考えてみましたので、もし気に入ったものがありましたらぜひ使ってみてください。





 アポロ

 これは僕と事務所社長の山本くんの間で実際に使われているビジネス用語ですが、アポロとは、apology(謝罪)の略称です。電通の鬼十則の有名な言葉「摩擦を恐れるな」がありますが、やはり良い仕事をするためには通常のやり方を逸脱する必要があり、結果、よく人に怒られることになります。しかし怒られるのを恐れてしまうとお客さんにとって一番良い選択をすることができなくなり、そんなジレンマに悩む日々を過ごすうちに、いつしか僕と山本くんは「謝罪」のことを「アポロ」と呼ぶようになりました。
最近では謝りにいくときも

 「今から、アポロ行ってくるわ」

 と言って颯爽と向かい、相手先の会社に着いたときは

 「ただ今、月面着陸しました。今日は額を月面にこすり付けることになりそうです」

 などとメールを送ったりすることで恐怖を和らげています。



 

 D&D

 これは「ダメ(D)出し(D)」の別称ですが、 ダメ出しをD&Dと呼ぶことでまるでM&Aのような新しい成長をイメージすることができ、さらに、「ダメ出しの方が良いやすいのに、わざわざD&Dという長い名称に変換していることで相手に対する気遣いがある」というニュアンスを出すことができます。





 マリコ

 会社にいる年上の女性社員を「お局」と呼ぶことがありますが、これを「マリコ」と呼ぶようにしてはどうかと思いました。マリコとは言わずもがなAKBの篠田麻里子ですが、この呼び方をすることで「最高齢だけど、若い世代に負けてない感」を演出し女性のプライドを傷つけずに済むことができます。使い方としては
 お局的扱いをされているAさんに対して
 「AさんはAKBでいうところの篠田マリコ的存在ですよね」
 ということを言い、Aさんからダメ出しされたときはすかさず
 「今日のAさんは、かなり『上からマリコ』じゃないですか」
 などと言ってどんどんマリコに寄せていき、最後はマリコと呼んでしまえるようになれば成功です。





 アンコール

 アシスタントやスタッフたちが帰る時間になったとき、もう少しだけ仕事して欲しいときは、「アンコールお願いしたいんだけど」とサイリウム(蛍光棒)振りながら言うことで、ただ頑張って欲しいというだけではなく、「君の仕事が良かったからもっと続けて欲しい」という意味付けができます。



 KS

 一時期KYという言葉が流行し、これは「空気(K)が読(Y)めない」の略でしたが、KSというのは「恐(K)縮(S)」の略です。人に言いづらいことを頼んだりするとき、社内で、恐縮=KS という共通認識が出来ていれば
 「これ、かなりKSなんだけど」
 「すみません、KSなお願いがあるんですけど」
 と言うことで、後に続く言いづらさを緩和する効果があり、

「KSなんだけど、アンコールお願いできる?」

 というハタから聞くと意味不明なセリフが当たり前のように飛び交うオフィスの急成長は確実と言えるでしょう。




 人名+る

 よく「陰口は良くない」と言われますが、それを逆手に取る方法がこの
「人名+る」
です。
 たとえば、あなたの会社の同僚が
 「また牧野が言いわけしてさ……」
 と陰口を言っていた場合、
 ここで「言いわけ」する行為を


 牧野る


 という言葉にしてしまうのです。
 すると、同僚が言いわけしたとき



 「お前、牧野ってない?」



 と言うことで、牧野に対して悪口を言ってきた分、同じ行動を取ることができなくなった同僚は成長せざるを得なくなります。
 
 

 ――ぜひみなさんも友達や会社の人と新しいビジネス用語を作って、仕事の効率化とアトラクション化してみましょう!


※ 「ウケる日記」は来週火曜日更新です。



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