今回からスパルタ婚活塾は「実践編」に入る。

 今後は「出会い」→「デート」→「交際」→「プロポーズ」という流れにおける恋愛理論を教えていく。これまで講義を受けてきた女の中には
「愛也先生は第1回の講義で『仮』の彼氏を作れと言われましたが、今のところ回転寿司屋で『ガリ』を食べることくらいしかできていません」
という女もいるだろうが、今後の講義を聞けば必ず理想の彼氏を作ることができるので今まで以上に気合を入れて聞くように。
 
 それでは「出会い」に関して話していくが、これまで再三述べてきているように、女の基本姿勢は「待ち」である。女であるお前たちは、言うなれば回転寿司屋の寿司であり、男たちの目の前をひたすらまわり続け、取られるのを待たなければならない。もし回転寿司やの寿司が食べて欲しいという気持ちが昂ぶるあまり、自ら客前に降りていったらどうなる? 
「この寿司、気持ち悪」と思われるだけである。

 だがこの話を聞いたお前たちはこう言うだろう。


 回ってるうちに、どんどん腐っていきますけど?


 そんなことは分かっとる。男の目の前をひたすら回り続けたお前たちは、まさに回転寿司やの寿司がそうであるように、カッピカピの肌になっている。その身体は腐り始め、「あれ?これ酢で締めたっけ?」と思われるほどのすえた臭いが漂ってる。
だが、今のお前たちにとって大事なのは

「食べ物は、腐り始めが一番うまい!」

と自らを鼓舞しながら俺が教えた恋愛理論を実践し続けることである。

 これまで俺の講義を受けてきた者なら、俺の言う「待ち」がただの「待ち」でないことは理解できるはずだ。予定調和を崩す「コミュニケーション」と、日々磨き続ける「ファッション」を手にしたお前は男にとってかなり魅力的に映っている。それに加えて、「おさわり四十八手」だ。この技を使って相手の身体を触りまくれば必ずやお前に連絡先を聞いてくるはずである。

 「でも、最近の男は『草食系』だからぁ」

 そんなことを言う女に対しては草間彌生の真っ赤なドット柄になるくらい全身をビンタし、「前衛芸術」というタイトルプレートを添えて森美術館の前に放置することになるだろう。

――草食動物がどうして角を持っているのかお前は知っているか? 

それは他のオスとメスを奪い合って殺し合いをするためである。この世の生きとし生けるもので、魅力的なメスを口説かないオスは存在しない。もし相手が口説いてこないのなら、自分の魅力が足りないと自覚せよ。再び「基礎編」に戻り、自らを磨き直せ。そうすれば必ず男はお前を誘ってくることを俺が保証する。

 さて。こうしてお前は男から連絡先を聞かれ、メールが届くことになる。

 ここからが重要だ。

 ここで恋愛本や雑誌の恋愛特集では「メールはすぐに返信すると安い女だと思われる」そして何日か後に「ごめーん!忙しくてメール返せなかったけど、うれしかった!」的な、いわゆるアメを与えよなどと書いてある。
 そして、この戦略は、間違っていない。
 出したメールがすぐに返ってこないと男は不安になる。そしてそれから相手を安心させればその分だけ感動が増える「サプライズ」と同じ構造と言えるだろう。

 だが、しかし。

 この戦略を使う女たちの多くには根本的な欠陥があるのだ。
 そして、俺が今から言う話は、知っておくだけでお前の恋愛能力を劇的に変える可能性があるので心して聞くように。
 
 先ほどの恋愛本で書かれた方法は、最も一般的な「駆け引き」とされるものである。
 しかし、ここで改めて問う。

 「駆け引き」とは一体何か?
 
 好きな男からメールが来た。本当はすぐに返信できるけど、「すぐ返信したら安い女だと思われるから」忙しいフリをした。

 
 それは、一言で言うと、ウソである。

 つまり、駆け引きとはウソである。

 そして、ウソは、バレる。

 
 実際に忙しそうな女の返信が遅くても気にならないが、忙しくもない女が全然メールを返してこないと「不自然さ」が漂い、
「こいつわざと返信遅らせてるんじゃねーか」
と勘ぐられる。
そして、女の行動の裏側に「テクニック」が透けて見えたとき、男は猛烈に冷めるのである。
 それは、これまで再三言ってきたように、服屋の店員が「これ、残り1点なんですよ」とテクニックを使ってこちらをコントロールしようとするときに感じる気持ち悪さと同じである。
 
 だが、(ここからが重要なのだが)お前が駆け引きをせずに、すぐにメールを返信してしまうのも間違っている。
 YUIも歌詞の中で「すぐに返信してはだめだって聞いたけど返信してしまう」と女心を歌っているが、俺はYUIと携帯電話の間に両手を広げて立ちはだかり、「YUIよ、お前の魅力を持ってしても、その行為は危険すぎるぞ!」と止めざるを得ない。やはり、すぐにメールを返信してしまっては「あ、この女俺に気があるかも」と男を調子に乗らせてしまうのだ。

 「駆け引きはウソである。だが、メールはすぐに返信してはならない」

 この矛盾する状況を打破するにはどうしたらいいか?

 方法は一つしかない。


 メールをすぐに返信できないように「本当に忙しく」するのである。


 メールを打つ時間も惜しいくらい多くの予定を入れる、さらに、好きな男からのメールが埋もれてしまうくらい、いつもメールをくれる知り合いの男をたくさん作る。すると、その男のことを考える時間も少なくなり、結果的にメールを返信するタイミングが「自然に」遅れていくのである。

 これこそが、愛也の提唱する

「あれ?これ、結果的に駆け引きになっちゃってます?理論」

 略して「AKKKNM理論」である。

 このことを理解できたなら、お前の恋愛テクニックの読み方がまったく変わってくるだろう。そもそも恋愛マニュアルに書いてある方法は、うまくいっている人の「結果」を分析したものでしかない。しかし重要なのは、結果ではなく、そこに至ったプロセスを再現することなのである。

 たとえば「メールをすぐに返信しない」というテクニック以外でも
 「男に仕事をさせることで達成感を感じさせる」という方法が本に載っている。

 これをそのまま鵜呑みにして、デート中に「荷物持って」と自分の荷物を差し出す女がいるらしいが男からすると「俺はホテルマンじゃねぇ!」となる。
 それよりも「結果的に」男に仕事をさせるにはどうすればいいかということを考えたら、例えばデート中に自分の欲求をうまく口に出すことを心がけたり
(デート中にすぐに「疲れた」と不平を言う女より「30分おきに休憩したいタイプです」と言う女の方が可愛く、男が「じゃあお茶する場所探すわ」となりやすい)
 また、男が仕事をしたとき、それがベストの行動ではなかったとしても
「あんた、優しすぎ」
「ミスター・ホスピタリティって呼ぶことになるけどいい?」
「『紳士的』っていう言葉を辞書で引いたときあなたの名前を載せるように岩波書店にメールしとく」
などとホメて気持ちよくさせることで、男はどんどん仕事を探し出す。こうして結果的にお前が重い荷物を持っているときには

「その荷物、持たせてもらえます?(懇願するような表情で)」

となり、最終的には

「結婚してください(ハリー・ウィンストンの婚約指輪を頭の上に置いた状態で土下座しながら)」

となる。
 もし、お前の手元に恋愛本や雑誌があるのなら、「AKKKNM理論」の観点からもう一度読み返してみよ。お前の恋愛能力は驚くほどアップするはずだ。


■ 第11講 まとめ

「AKKKNM理論」
駆け引きとはウソをつくことである。しかし、ウソは必ずバレる。
だから駆け引きをするのではなく、結果的に駆け引きになってしまっている状況を作り出せ。


それでは、また来週火曜日、この場所で会おう。





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