今日も猛烈な暑さの福岡・春日市です。
みなさまはいかがお過ごしでしょうか?
暑中お見舞い申し上げます。
司法書士Oです。
福岡には大した影響はなかったものの、台風が通過したためいつものようには海に遊びに行くこともできず、日用品の買い物で週末は終わってしまいました。
ここ最近、政治家と宗教の話や、憲法改正の話題が多く取り上げられているので、「憲法」についての記事を書きたいと思っていろいろと考えています。
今年は「憲法」施行75年です。
重たい内容なので、前もってお断りをしておきます。
私自身は、「改憲論者」でも「護憲論者」でもありません。
また、特定の政党に対する支持や宗教に関する信条も、とりたててありません。
ただ、法律に携わるものとして世の中の「憲法」に対する理解が深まることを期待してこのブログの記事を書いている次第です。
「憲法」は小学6年生と中学3年生で一応学校でも学ぶのですが、「憲法」の定めていることをならうだけです。
また、大学の法学部でも「憲法」は全員が詳しく学ばなければならないものではありません。
「司法試験」を受ける場合には当然必須です。
「公務員試験」では「憲法」が必須になっているものがあったり、記述で解答しなければならず深い理解が求められるもあります。
「公務員」には憲法第99条で「憲法尊重擁護義務」が課されています。今回はこの条文から憲法について考えてみたいと思います。
憲法第99条
天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。
そもそも、「憲法(近代立憲主義憲法)」とは、個人の権利・自由を確保するために国家権力を制限することを目的とします。『憲法 芦辺信喜(岩波書店)』
つまり、憲法制定権力の保持者は「国民」なのです。
まさに、立憲主義を定めているのがこの第99条です。
「憲法」で定められている国民の義務は、①子女に教育を受けさせる義務②勤労の義務③納税の義務の3つのみです。12条の人権保持義務は抽象的な義務なので除きます。
①は「教育を受ける権利」を支えるための義務、②は「働ける人は働いて自ら生計をたてて下さい」という意味で、働かない人を強制労働させるという意味ではなく、③は「納税」してもらわないと「国の仕組み」を動かすお金がないので、これは国民が負担しましょうということです。
「国民」が憲法を定めるので、国民が果たさなければならない「義務」を定めるということは基本的にあり得ません。
「公務員」は憲法に定められた権力を行使するので、憲法に従って行動しなければならないというのが、「憲法尊重擁護義務」です。
簡単に言えば、「国民に対し、権力を行使していい範囲は憲法で定めた範囲内でお願いします。」ということを定めているものです。
ここで、この条文について、ある党の「憲法改正草案」の対応する条文をみてみると、
○条 全て国民はこの憲法を尊重しなければならない
2 国会議員、国務大臣、裁判官その他の公務員は、
この憲法を擁護する義務を負う
第2項もおかしいですが、第1項は本末転倒としか言い様のない条文です。
「国民」である「私」が、憲法を変えた方が良いと思えば、自分の考えに賛成してくれる「国民」に協力を求めて「国会」で「憲法改正の発議」をしてもらうように行動するだけです。
繰り返しますが、憲法を定めるのは「国民」であって、時の権力者ではありません。
わざわざ自分の首を絞めるような憲法を定めるようなことはしない方がよいと、私は思います。
弁護士会をはじめ、さまざまな組織や個人が「憲法改正」について同様の声をあげています。
しかし、その声は多くの「国民」には届いていないと思います。
なぜなら、小学校・中学校で学んだ知識では、自らが「憲法」を制定するものであるということに「気付けない」からです。
「気付いていないもの」について考えたり、行動したりすることは不可能です。
他の法律等の場合は、各政党の主張する案の中から自分が納得できるものを選べば良いのですが、「憲法」はその反対の目線で考えなければならないという点を重要視しなければなりません。
法律等は、「憲法」の範囲内でつくられるものです。
逆に言えば、「憲法」が許す範囲で法律等をつくることができます。
これは、第98条に定められています。
第98条
この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
(第2項 省略)
「国民」は、作られた法律等を守らなければなりません。罰則があれば罰を受けることになります。
実は、この第98条・第99条はその前の第97条と併せて「第十章 最高法規」の章にあります。
第十章 最高法規
第97条
この憲法が日本国民に保証する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得努力の成果であって、これらの権利は、過去幾多の試練に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。
なぜか、その党の改正草案では、97条が削除されています。
憲法は基本的人権を永久の権利として保障しないということでしょうか?
この党の憲法改正草案なるものは、果たして「国民」の望むことを叶えるものでしょうか?
これから、「憲法改正論議」がますます活発になるものと思われます。
「憲法」について少しでも関心をもって頂けた方は、「第9条」、「緊急事態条項」、他の改正についてもご検討いただけると幸いです。
近いうちに憲法改正の「国民投票」があるかもしれません。
勢いだけで憲法が改正され、現在及び将来の「国民」の「権利」が制限されることになってしまっては元も子もありません。
一人でも多くの方が「憲法改正」について熟慮して頂いたうえで、今後の行動に反映してくださることを心から望みます。
今日は、重たい内容でしたが、最後までおつきあい頂きありがとうございます。