第七話 生い茂る


(4)

 一応話し合いが出来そうな雰囲気にはなってきたが、こう暑くちゃかなわない。なにせ、野原には日陰というものがまるっきりないからなあ。俺はともかく、有美ちゃんにはしんどいだろう。

「ああ、ちょっと待っててくれ。車に冷たい飲み物が積んである。取ってくる」
「ありがとう」

 すぐに余計な一言が口から飛び出す有美ちゃんにしては珍しく、素直にそう言った。それだけしんどかったということだろうな。精神的にも暑さにも負けそうで。
 ちんちんに暑くなっていた軽のバックハッチを開けて、クーラーボックスから麦茶のペットボトルを二つ引っ張り出す。開けたハッチの下なら日差しをいくらか遮れるかもしれないが、あえて元の場所に駆け戻った。

「ほら」
「わ、冷たい」
「今日みたいな日は水分補給なしじゃ無理だよ」
「うん」

 手渡したペットボトルの蓋を力任せにひねった有美ちゃんは、ごくごくと音を立てて麦茶を半分以上一気飲みした。

「ふうっ」
「旨そうに飲むなあ」
「すっごい喉乾いてたから」
「緊張したんだろ。俺とどっかに行くことなんて一度もなかったからな」
「う……ん」

 有美ちゃんは、自分を捨てていった父親のことは死ぬまで許さないだろう。その一方で包容力のある父親という存在に憧れを抱いていたんじゃないかな。優しい、怒らない、自分をすっぽり包み込んでくれる、そういう年上の男に対する無上の憧れ。憧れが憧れのままで終わってくれりゃよかったんだけどな。
 愛情に対する剥き出しの飢えは、ろくでもない男どもに丸見えなんだろう。陽花ほど極端ではないにせよ、結局男どもの都合のいいように人生を搾取されてしまう。

「ねえ、おじさんはさ」
「うん?」
「浮気とか……したことあるの?」

 思わず苦笑いする。

「そんな甲斐性があったら、もっと華やかな青春時代を送れてたよ」
「ええー?」
「陽花に聞いてみたらいいよ。俺がどんなに鈍臭いか」

 有美ちゃんがおかしいなという顔で首を傾げた。

「そういやママは、おじさんの話をまるっきりしないんだよね……」
「最初に言っただろ? 俺たちは相性が悪いんだよ。仲が悪いわけじゃないんだけど、なんか噛み合わないんだ」
「どうしてだろ」
「俺は意思表示はちゃんとするよ。ただ猛烈に鈍臭い。陽花は正反対だ。行動はちゃきちゃきしてるけど、意思表示しない。全部愛想笑いの後ろに押し込めてしまう」

 いらいらがぶり返したんだろう。有美ちゃんがぎゅうっと顔をしかめた。

「ママのあのどうしようもない性格! なんとかならないのかな!」
「それはお互い様だよ」

 自分軸でしか物事を見ない有美ちゃんに釘を刺す。有美ちゃんだって、みんなからしょうもない性格だって思われてるんだよ。しかも実害込みで。いつまでもほっかむりしてないで、そろそろ自分の大穴を自覚してほしい。
 作業用のタオルで額の汗を拭って、ぷうっと頬を膨らませる。

「俺がこの歳までずっと鈍臭いままのように、陽花の秘密主義も変わらん。直球しか投げられない有美ちゃんだって、今更性格は直せんだろ?」
「そうだけど……さ」
「だから今回有美ちゃんとのごたごたで俺に助け舟出してくれって泣きついたのは、陽花にしては画期的なことなんだよ。これまでどんなにしんどくたって、親にも俺にも一言も弱音を吐かんかった。一言もな」

 俯いてしまった有美ちゃんに、構わず言い足す。

「もし陽花がこれまでと同じだったら」
「……うん」
「首を吊ってたよ。最後まで俺たちに何一つ見せないまま」

 急に恐怖を感じたんだろう。くっそ暑いのにがたがた震え出した。

「親父やお袋も、俺も。心配はしてたよ。でも、陽花がちゃんと本音を晒してくれないと動きようがない。みんなそれぞれに問題を抱えてるんだ。自分のトラブルを放置したままお地蔵さんの陽花を支えるなんて芸当は、絶対にできない」
「共倒れになっちゃう……から」
「そう。先回りはできない。親にも俺にも章子にもそんな余裕はなかった。みんなしんどい思いをしてたからね」
「うん」

 残っていた麦茶を飲み干して、もう一度ぷうっと頬を膨らませる。

「陽花もさすがに懲りたんだろ。すぐにはナマを吐き出せないにしても、サインは出すようになった。それが俺のオーダーだったからな」
「サイン、かあ」
「それでいいのさ。俺の鈍臭さがずっと治らないのと同じで、一気に全部変えるのは無理だ。失敗の全てを鈍臭さのせいにしないっていうだけで、いくらかはましになる。俺はそうやって生きてきたんだ」

 空になったペットボトルで牧柵をぽこんと叩く。

「だから。一度ここで各自足元を見直してほしい。偉そうにこうしろああしろって言うつもりなんかないよ。そんな権利も義理も俺にはないからね。あくまでも提案だ」

 さて、そろそろ本題に入ろう。さすがに暑くてへばってきた。有美ちゃんもしんどいだろう。

「さっき陽花との同居延長は無理だっていう話をしたろ?」
「うん」
「陽花は俺の家へ引き上げる。ずっとじゃないよ。当座だ。その間に、気持ちの整理をつけてもらう」
「気持ちの整理……って?」
「もう親には頼れないんだよ。同じように有美ちゃんにも頼れない。それぞれに守らなければならないものがあるからね」

 唇をぎゅっと噛んだ有美ちゃんが、ぐんと頷いた。

「あいつには、それをちゃんと納得してもらわないとな」
「ママが納得する?」
「するだろ。俺の家にいる間に、あいつには親父と章子の遺品整理をさせる。ただ飯は食わさない。客扱いはしないよ」
「うわ!」

 ずっと倒れ込んできた娘にはだらしない姿を見せられる。だが、俺は兄と言ってもかまどの違う他人だ。があがあ文句言いながらも、結局陽花のわがままを認めてきた有美ちゃんとは違う。奉仕はできない。
 遺品整理は本来俺がすべきことさ。だけど、俺は日々の仕事をこなすだけで精一杯なんだ。この野原の今後のことも考えなければならないし。まあ有美ちゃんも陽花も、どこかで過去との間に線を引くきっかけが要るだろ。俺が一時確保した距離を、そのきっかけにしてほしい。








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第七話 生い茂る


(3)

 わたし一人でも絶対に生き抜いて見せると即座に啖呵を切ったなら、それが根拠のない強がりでもまだ自立の芽はあっただろう。だが有美ちゃんは、保育費用の話を出しただけで沈黙した。そりゃそうさ、出て行けとぶち切れたのはいいけれど、本当に出て行かれると即座に生活が行き詰まるからな。家賃と生活費だけでもかつかつなのに、その上保育費用なんか出せるわけがない。いや、育児のことなんかまだましさ。もっとどでかい問題があるんだ。

「なあ、有美ちゃん。一人暮らししたことないだろ」
「……うん」
「俺も陽花も一人暮らしの経験がある。子供らもだ。一人は気楽だが、何かあった時には逃げ場がない。自分以外何もあてにできないんだよ」
「……」
「有美ちゃん孕ませた男に誠意があれば、話は別だけどね」

 そう。正妻の地位を勝ち取ったと言っても、それは書類上だけのこと。二股かけた男は、もう有美ちゃんに見向きもしない。離婚した前妻と子供たちに払う慰謝料と養育費用の確保でいっぱいいっぱいだ。困窮すればこのかちゃんのことなんか何も考えないで、少ない有美ちゃんの稼ぎから自分の生活費を掠め取ろうとするだろう。そりゃそうさ。陽花がバックアップしてる限り、有美ちゃんは放っておいても大丈夫だと思っているはずだから。

「おじさんに……なにがわかるっていうのよっ!」
「さっぱりわからんよ。わかろうとする気もないし。俺にとっては人ごとさ。陽花のことも有美ちゃんのことも」
「くっ」
「見えてるものしか判断材料がないんだ。今見えているものがどうしようもなくぐちゃぐちゃなのに、どうして突っ込めるんだよ。有美ちゃんなら突っ込むか?」

 具体的に言おうか。ぐうの音も出ないように。

「俺が病気の親父と認知症のお袋抱えて、右往左往してた時。有美ちゃんは俺に何かしてくれたか?」
「う……いや」
「有美ちゃんは自分のことで精一杯だっただろ? 俺だってそうさ。今でも自分のことだけで精一杯なんだよ。仲裁に首ぃ突っ込む余裕なんかどこにもない」

 熱風を受けてざわつく野原を見渡す。静かで変化がないように見える草の波も、よく見るとあるかないかの風を受けてひっきりなしにざわついている。じっとしていられない。じっとしていたくない。今こそ盛りの時。片時も無駄にするなと言わんばかりに。
 俺たちも夏草と同じように、己の在り方だけをひたすら追い求められればいいんだけどな。そうは行かない。

「じゃあ、なんでわたしをここに連れてきたわけ?」

 話が元に戻ってしまったが、もう一度説明し直す。

「最初に言っただろ? 頭を冷やしてほしい。出て行く、出て行かないの二択になっちゃったら、他に考えなければならない大事なことが全部下敷きになって潰れてしまうよ」
「これまでと同じように、ママと一緒に暮らせって言うわけ?」

 はあ……やっとスタート地点だよ。冷静に話し合い出来ていれば五分で済むのに。

「無理だ。それは無理だよ」
「え?」

 俺が、同居継続しろという提案をすると思っていたんだろう。興奮して顔を真っ赤にしていた有美ちゃんは、一転真っ青になった。

「え? え? だってそういうことだと」
「無理だって。今のままなら全員共倒れ。このかちゃんを巻き込んで、ね」
「……」
「仕事こなすだけでも四苦八苦してるのに、陽花の世話まで有美ちゃんが背負いこむのは絶対に無理だって」
「う……ん」

 よろよろと牧柵に近づいた有美ちゃんが、ロープをぎゅっと握ってぼろぼろ涙を流した。ふうっ……。

 しんどさを抱えられない有美ちゃんは、行く先々でそれを刺々しい態度と言葉で吐き出し続けてきた。ストレスレベルを下げるやり方としては最低最悪だけど、そうしないと心が保たなかったんだ。汚いげろを吐き続けたら、周囲の人が逃げるのは当たり前だよ。誰も有美ちゃんのしんどさを汲んでくれなかったと思う。

「汗も涙もただの塩水だけど、違うものだ。汗は暑けりゃ勝手に出るけど、涙は意識しないと出ない。厄介なんだよ」
「おじさん……も?」
「当たり前だよ。まだ涸れてないなあ。お袋も子供や孫も元気なんだから大丈夫だろみたいなことを、つらっという奴がいる。ぶん殴りたくなるよ」
「うん」
「親父や章子を失った空洞は、他の誰にも埋められないんだ。その空洞に涙が溜まる。勝手にね」

 本当のことを言えば。俺は、永遠の野原を訪れた日々を懐かしむことはまだできない。親父に連れられてここに来た幼い頃。そして、章子と一緒に子供たちを放牧に来た頃。どちらも全てのシーンが失ったものに直結しているからだ。俺は、それをすっかり過去にはできない。この野原が何も変わっていないから、なおさらな。

「なあ、有美ちゃん」
「うん」
「有美ちゃんだけじゃない。みんなそろそろ冷却期間が要るんだよ。目の前のことだけをこなして、遮眼帯かけたまま全力で駆け続けて来た。一度足を止めて、自分と自分の周りをしっかり見つめる時間がどうしても必要なんだ。人生ぶん投げていいならともかく、俺らはまだ生きて行かなきゃなんないんだからさ」

 目の前の野原を指差し、その奥にある見えないものを意識させる。

「この野原。有美ちゃんはお気に入りだったんだぜ」
「え? 覚えてないけど」
「ははは。そうだろなあ。でもここに来ると、いつもは忙しいと言ってかまってくれない陽花が、渋々だけど付き合ってくれる。陽花もガキの頃はここで遊び回ってたからね。まあ……童心に戻れたんだろ。わずかな時間だったけど」
「ふうん」
「そのわずかな時間が。どうしても要るんだ。景色ってのは立ち止まらないと記憶にも感情にも残んないから」

 牧柵の上に両腕を組んで乗せた有美ちゃんが、けだるげにもたれかかった。

「わたしは……何が楽しかったのかなあ」
「さあ。それはわかんない。俺も陽花もここで遊んで楽しかったというおぼろげな記憶しか残っていないんだ。どうしてかは忘れちゃう」
「同じかあ」
「でも、ここに来て楽しかったという思い出だけでも残れば。真っ黒けで汚くて目を背けたいもので埋まるよりずっとましだろ?」
「そうだね」
「だから。一度立ち止まった方がいい」








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第七話 生い茂る


(2)

 今陽花と有美ちゃんが住んでるマンションは、持ち家ではなく賃貸だ。築年のいったおんぼろマンションだから家賃は安いものの、古い規格の2DKで決して広くはない。世帯用というより、狭くてもいいから部屋数が欲しい独り者用の間取りだ。
 その狭いマンションに相性の悪い親子が同居しているわけだから、年中喧嘩が絶えない。いや、喧嘩にはならないか。常に有美ちゃんが陽花をどやし倒しているんだ。
 互いにストレスフルなら居を分ければいいと思うんだが、これまでは陽花が有美ちゃんにずっとしがみついてきた。有美ちゃんも、陽花が働いている間は家賃も生活費も母親持ちだったから、母親を蹴り倒してまで家を出るつもりはなかったんだろう。

 ところが。有美ちゃんの不倫騒動とこのかちゃん出産がきっかけで陽花が精神を病んで引きこうもり。仕事もぶっちし、箸にも棒にもかからない中年ニートと化してしまった。今までは稼いだカネを全部自分に使えていたのに、折半通り越して家賃も生活費もいきなり全負担じゃあ落差が大きすぎるわなあ。ぷっつんした有美ちゃんがとっとと出て行きやがれと暴れるのも無理はない。もちろん俺も、心情的に陽花の側には立ちにくい。どっちもどっちだとは思うものの、言い分がまともなのはどう考えても有美ちゃんの方だからな。
 それに、有美ちゃんは生ける屍(しかばね)と化している陽花の面倒をこれ以上見られないだろう。筋がどうのこうの以前に、現実問題として無理だ。関係者の物理的距離を空けないことには、全員共倒れになってしまう。俺に何かできるとすれば、有美ちゃんのガス抜きと、陽花が退去するまでの時間稼ぎだけだ。うまくこなせるかどうかわからないが、まあやってみるさ。

◇ ◇ ◇

 陽花のマンションを訪ねた俺の目的が陽花ではなく有美ちゃんを連れ出すことだったのを知って、有美ちゃんは最初同行に難色を示した。俺が陽花の側に立ち説得に来たと警戒したんだろう。「話がある」と言った俺の話の中身も百パーセント仲裁だと思い込んでいたはず。よく単独で俺についてきたよ。絶対にマンションを離れないとゴネるならまだましで、室内で大暴れしかねないと思っていたからな。

「ねえ、おじさん!」

 実際、俺は有美ちゃんの伯父だが、それでもおじさん呼ばわりは堪えるわ。

「なに?」
「ママに頼まれたの?」
「もちろんだよ」

 があっと血が上ったんだろう。暑さのせいではなく怒りで顔が真っ赤になった。だが、有美ちゃんの口が弾丸をぶっ放す前に、俺の方から消火剤をぶっかけた。

「なあ、有美ちゃん。陽花が今まで俺を頼ったことが一度でもあったか?」
「……」
「俺と陽花は兄妹だが、小さい頃から互いに苦手意識を持ってた。仲良しこよしっていう関係になったことは今まで一度もない。い・ち・ど・も・な!」

 普段からぼよんとしている俺がでかい声を出したから驚いたんだろう。有美ちゃんが顔を真っ赤にしたまま俯いた。

「その陽花が初めて俺に、直接、頼み事をしたんだ。俺が他人なら別だよ。一応兄だからな。話くらいは聞いてやらないかんだろ。俺の考えはおかしいか?」
「だって」
「だってもあさってもないよ。親父もお袋も、陽花のホンネは最後までわからんかった。俺だって今もわからない。実の親や兄にすらわからないココロが、他の誰にわかる?」

 俺のぶっかけた消化剤は一応効果を発揮したんだろう。固く口を結んだまま、有美ちゃんが視線を逸らした。抑止効果はいくらも続かないと思うが、ここでいきなり大爆発されるよりはいい。

「まず最初に言っとく。俺は陽花の兄だが、有美ちゃんの父親ではない。親のような顔をして説教するつもりなんてさらさらないよ。もう三十過ぎてる成人に俺が何言えるっていうんだ」
「じゃあ! なんでっ?」
「ここに連れてきたってことだろ」
「そう!」
「決まってる。頭を冷やして欲しいからだよ」

 俺のぶっかけた消化剤はすぐに効果が切れたらしい。一度引きかけた血が逆流したのか、また顔が真っ赤になった。

「あのさ。陽花をあそこから出したとして、そのあとこのかちゃんをどうするわけ?」
「え?」

 陽花ではなく赤ちゃんの話になったことで、有美ちゃんが絶句する。

「今は有美ちゃんが働いてる間、陽花が面倒を見てる。でも陽花が家を出ると、働いている間保育所に預けないとならないよ。その保育費用、出せるの?」
「……」

 現実を見ようよ。有美ちゃんは行く先々ですぐ闘争をおっぱじめる。喧嘩相手と自分のどっちに非があるかという是非論に突っ込むばかりで、冷静に場を見て自分の居場所を作ろうとする努力を最初から放棄している。下っ端のくせに態度がいつも俺様だから、どこで働いても長続きしない。当然稼ぎは最低で、将来展望も保障も何もない。陽花以上の場当たり出たとこ勝負だ。そんな状態で、職確保以外にトラブルと赤ちゃん抱えて生活できると思う? 無理……っていうより、自殺行為だ。
 本当は、陽花が有美ちゃんに現実を見ろって説教しないとならないんだよ。親なんだからさ。でも、立場が逆になっちゃってる。陽花が何をどう考え、判断して今まで生きてきたのかは知らないよ。でも、陽花の真情は誰にとっても謎のままで、身内にすら読み取れなかった。代わりに見えるのは、オトコによろめき続けるだらしない生き方だけだ。それはオトナの生き方じゃない。欲しいおもちゃにしがみつき続けるコドモそのものじゃないか。

 オトナ二人の生活? とんでもない! 申し訳ないけど、社会性ぼんぼろりんのコドモ二人が生活の真似事をしてるだけ。互いに寄っかかってたから、深刻さが認識できなかったんだよ。陽花がもし働いていても、結果は同じだったと思う。

 どこかで必ず破綻するって。








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