翳っている時に
初めて気づく世界がある
「彼女がそこにいることに、気づかれていたんですか?」
「もちろんだよ。最初からね」
「なぜおっしゃらなかったんですか?」
「君が尋ねなかったからさ。聞かれてもいないことをぺらぺらしゃべるのは趣味じゃない」
「十分悪趣味ですよ。黙っているなんて」
「そうかい? 女性は数多(あまた)いる。目移りしていたのは君だ。陽光が降り注いでいる時には、その陽光で輝いている女性にしか目が行かないよ。違うかい?」
「う」
「彼女が日差しで変わったわけじゃない。彼女はいつでもいつまでも彼女だよ。日が翳って、見え方が変化しただけさ」
「……」
「つまり。また日が差せば、君は彼女を見失うってことだよ。今度は永遠にね」
「もう少し日差しがあれば、群舞がもっと映えたんだけどな」
「そうですね。でも、十分ミステリアスで美しいと思いますよ」
「もう少し日差しが強かったら、うるさい観衆が目立って厄介だった」
「そうですか? 観衆すらも画にすると豪語されてた監督らしくないですね」
雲が厚い時、雨天の時。しっかり光量を確保することは難しい。どうしてもぼけた画像ばかりになるので、天気の悪い時にはできるだけ画像を撮らないようにしている。
だが翳りの中でしか見られない世界があり、それらを撮って残すことも必要なのだと思わされる瞬間がある。なぜなら、私自身がずっと翳りの中にあるからだ。
だからこそ、翳りの中にだけ見えるものに安易に同調し、同類にはしたくない。
それは彼らであって、私ではない。同じように翳っていても、私の翳りの中に無造作に放り込んではいけないのだ。
苺立て陰に練乳落としてみる
Made In The Shade by Sara K
《 ぽ ち 》
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