まだ咲いているのかと咎められたから、むっとして反論した。

「俺はサザンカじゃない。ツバキだ。春の花なんだぞ!」







 咲いている間にも滅びは忍び寄る。
 日差しに透かされた花弁には、すでに朽ち花の染みが浮き出ていた。

「それでも日が当たってる分、わたしはまだましよ。葉に埋もれたままの子も結構いるから」







 ここが終わりという区切りすら与えられず、運命が花を容赦無く切り落とす。
 地に落ちてなお咲く花は、その形のまま萎えていく。やがて地に残らず吸い込まれるまで。

「上と下で二度咲くってことね」







 きっと。
 一つ一つの花に主張も言い分もあるのだろう。
 だが季節はそれらを一顧だにせず、粛々と押し流してゆく。
 そこに在ったという気配すら残さず。




  落椿 川に身を投ぐもの二つ





Sea Of Love by 椿


《 ぽ ち 》
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