(バラ)


 何かいいことがあったから薔薇を贈るわけではない。
 薔薇はいつだって薔薇だからだ。
 贈った者、受け取った者の感情など斟酌せず、やんわりとほころんで見せる。





(ラナンキュラス)


 薔薇は棘があるから嫌いだと言われた。
 棘があるのが薔薇だろうと思ったが、仕方なく棘のない薔薇を贈った。
 薔薇はぴしゃりと突き返された。これは薔薇じゃない、と。





(ラナンキュラス)


 花束にして欲しいと言われたが、薔薇の花束は値が張る。
 なので純白の大輪を一枝捧げ持った。その薔薇は、ものの見事に無視されてしまった。
 ああ、いいよ。次に贈る時には大量の薔薇に埋もれて窒息してもらおう。それがお望みなんだろ?





(サザンカ)


 薔薇を傾げたまま渡してはいけないらしい。
 花弁が散りそうになっていても、立てていれば華やかさを保てる。寝かせるとアラが目立つのだそうだ。
 そんな理由じゃない。横にすれば花より棘が目につくだけさ。





(バラ)


 そもそも薔薇を贈ることに何の意味があるのだろうかと。一輪の薔薇を翳しながら考えている。
 嬉しいのはもらった薔薇そのものではなく、贈られた心なのだということを今痛感している。




  青銅の娘が捧ぐ薔薇は青





Rose by Jereena Montemayor


《 ぽ ち 》
 ええやんかーと思われた方は、どうぞひとぽちお願いいたしまする。(^^)/


にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ
にほんブログ村