読書ノートの236回めは、野崎まどさんの『[映] アムリタ』(2009年発表。メディアワークス文庫)です。電子本での読書。
野崎さんについては先日『パーフェクトフレンド』を取り上げたので、略歴等の紹介は割愛いたします。ラノベというカテゴリーにはちょっと置きにくいかなあ。独特の世界観とセンスをお持ちの作家さんだと思います。
あらすじ。
主人公は二見遭一という男子大学生で、役者の卵です。二見が憧れている美人の画素さんという女の子から映画に出ないかと誘われ、浮かれて二つ返事でオーケーを出したものの、監督は最原最早(さいはら もはや)という一年の天才少女。『アムリタ』というタイトルの脚本を渡された二見は、最原が書いた脚本を五十六時間見続けるはめになってしまいます。内容的にそれほど惹かれるようなものではなかったはずなのに。
取りあえず映画の撮影が始まったものの、二見はどうにも違和感が拭えません。主演女優も兼ねる最原があまりに完璧すぎることに……。
撮影は順調に進んだものの、その合間に二見は自分が代役だったことを知ってしまいます。最初に出演する予定だった学生は、原付の事故で亡くなっていたのでした。すっきりしない状態でクランクアップし、いよいよ試写ということになるのですが……。
というお話。
感想を。
うーん、そうですね。
めちゃくちゃおもしろくて、でも最低。
そうとしか言えません。
基本的なトーンはパーフェクトフレンドに良く似ています。でも、パーフェクトフレンドは最高でした。後半のどんでん返しをこれでもかと活かしていたので、「いい意味で」とことんやられた感がありました。がっつり衝撃を受けたんです。
でも、本作はその真逆。オチの破壊力は半端ないんですが、「悪い意味で」とことんやられます。
それしか言えません。
ネタバレしたら元も子もないので、これくらいで。
尺的にさっと読める文量ですが、その倍くらいのインパクトはあります。でも……わたしは二度と読まないでしょう。悔しいくらいよくできた作品ですけどね。
テクニカルなところを。
まあ、基本はパーフェクトフレンドのトーンと同じです。軽くて、ギャグ満載。でも、パーフェクトフレンドでは小学生同士のやり取り。ギャグの幅をかなり広く取れていました。本作では登場人物が全て大学生なので、そこに枠がはまります。ギャグをフル装備したことで、最終盤がとんでもなくきつくなります。
どういう風にきついかは、読んでもらうしかないかな。
基本的に仕込み一発の話ですが、その仕込みの秀逸さにはこれでもかとうならされました。
でも、わたしはちょっと……ね。
◇ ◇ ◇
なんだかなあと思ったのに短評で済ませなかったのは、それだけ文章と構成にごっつい密度があるからです。
当然のこと、評価は真っ二つに割れるでしょう。
次回の読書ノートは、大倉崇裕さんの『小鳥を愛した容疑者』です。
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