(ヤブミョウガの果実)


「黒い果実というのは、実際にはないんだろ?」
「ありませんねえ。濃い紫が幾重にも重なることで、結果として黒く見えるんでしょう。黒葡萄しかりブルーベリーしかり、です」





(アオツヅラフジの果実)


「つまり、見る者によっては、黒以外の色に見えるということだな」
「そうですね。藍青色、濃紫色、黒褐色……黒以外の色の方が印象に残ることもあるのでしょう」





(ユズリハの果実)


「黒くはないものをあえて黒く見せる意味はあるのか?」
「そう言うのは野暮というものですよ。彼らは自分を黒く見せているつもりがないのですから」





(サカキの果実)


「我々が勝手に黒だと思い込んでいるということか……」
「でしょうね。でも彼らは、自分がどんな色をまとっているのか知らないでしょう。それを知ったところで、どうにもできませんし」






(トウネズミモチの果実)


「黒には明暗があっても吉凶はない。そういうことだな」
「いや吉凶はありますよ。食われれば吉、食われなければ凶です」





 果実の色は千差万別。同じ果実でさえ、光の加減で複数の色に見える。それがどんな色であるかよりは、その色で誰をどのくらい呼び寄せられるかの方が重要なのだろう。

 黒に近い濃色は、赤や黄色に比べ目立たない。だが、目立たないから永劫に見つからないということでもない。黒に模された色の中には、とても魅力的な色が潜んでいるのかもしれない。

 残念ながら、私にはその色を見分けることはできない。実のところ、黒いかどうかすらよくわからないのだ。

 私の視野は……常に闇で塞がれているからな。




  鳥群れて鼠黐(ねずみもち)の実少し減る

 色が目立つかどうか以前にあまり美味しくないようで、なかなか減りません。しゃあねえ、不味いけど食うか……って感じなんでしょうね。(^^;;




Blackberry Song by Kurt Vile


《 ぽ ち 》
 ええやんかーと思われた方は、どうぞひとぽちお願いいたしまする。(^^)/


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