ねえ。
 腐るのは、どれも同じだと思っていませんか?

 根性が腐っているのと、豆が腐っているのと、貴く腐っているのでは、どれも意味が違うんですよ。
 根性が腐っているやつは煮ても焼いても食えないし、豆が腐っているのはよく食卓に乗りますし、貴く腐っているワインは高価でなかなか飲めません。

 くされだまは腐れ玉ではありません。草連玉です。
 腐れもとは、腐らないと醸造の役に立ちません。
 よく腐っていない腐葉土は低品質でしょう。
 腐った鯖のような目をしている人は、眼科に行った方がいいですね。
 半腐れが旨いと言われても、どのあたりが半分なんでしょうか。
 腐って敗けることはあっても、腐って勝つことがないのは不公平だよなあと、気分が腐ります。

 とか。腐った思考回路からはろくなアイデアが出てこないので、腐ったものを見比べて和みましょう。









 どちらも腐った木材なんですが、色も印象も違いますね。
 上の色の濃い方は褐色腐朽、下の白っぽいのは白色腐朽と言います。

 同じ腐ると言っても、こんなに違っちゃうんですよ。
 褐色腐朽と白色腐朽。それぞれ木材を腐らせるきのこの性質の違いでそうなります。

 硬くで丈夫な木材は、主に三種類の構成成分から作り上げられています。鉄筋にあたるセルロースとヘミセルロース。コンクリートにあたるリグニンです。木材を腐らせるきのこは、そのどちらか一方を利用するものがとても多いんです。

 食用のきのこであるシイタケ、ナメコ、エノキタケ、ヒラタケ、マイタケ、タモギタケなどは、どれも白色腐朽菌。主にリグニンを分解して自らの栄養にします。セルロースやヘミセルロースは食べ残されるので、それらが白く見えるんです。
 白色腐朽した材は、筋しか残っていない状態。見た目はそれほど劇的に変化しないんですが、小さな穴が無数に空いてスポンジ状になり、ふにゃっとした触感になります。

 一方サルノコシカケの仲間には、カイメンタケ、ナミダタケ、ホウロクタケ、マスタケのようにセルロース類を好んで分解・利用するものがいます。それらのきのこによって腐った材は筋(繊維)を失い、残ったリグニンの色が顕著になって褐色に見えます。
 褐色腐朽した材は弾力を失ってもろくなり、縦横に亀裂が入ってブロック状に砕けます。

 木材を腐らせるきのこは、それぞれ何を食べるか(腐らせるか)が決まっているということですね。

◇ ◇ ◇

 木材は丈夫で腐りにくくできています。風雨に負けず長生きするためにそう進化してきたんですが、一度出来上がった木材がいつまでも腐らないで残ると世の中が枯れ木の残骸で埋まってしまいます。枯れ木も山の賑わいなどとしゃれていられないんです。(^^;;
 腐るというのは、一度組み上げられた完品を分解して、元の部品に戻すプロセス。どうしても必要ですし、全ての生物はいずれ「腐ります」。いいも悪いもなく、そういうものなんですよね。

 ということで、わたしも遠慮なく腐ることにいたします。腐女子ってのがあるくらいだから、腐おじさんてのがあってもいいじゃんか。腐っ腐っ腐。




  ふすふすと万物黴びるけふも雨





Rotten Apples by Smashing Pumpkins


《 ぽ ち 》
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