カレットというのは、再生利用のために砕かれた色ガラス片のこと。きらきら輝いて美しいんですが、それ自身はただの破片にすぎません。炉で溶融され、再度成形されて初めて再びの生命を得ることになります。
でも、ものとしては製品と同じ色ガラスなんですよ。不定形の破片か、それに何らかの形が与えられるか。その違いでしかありません。
情報量の多い長編よりも、きちんと印象に残る掌編を書く方が難しい……確かにその通りだなと思います。
限られた文量の中で、何を印象に残せるか。再生ガラスで作られたガラス器が長編だとすれば、砕かれたままの色ガラス片、カレットが掌編になるのかも。それが「きれいね」だけで終わってしまうと、話に破片以上の意味を置いてもらえません。
そういう自戒もこめて、これから三話ほどカレットというサブテーマで話を編みたいと思います。
起点になる画像は、全て破片です。
カレットは、最初からカレットだったわけではありません。ガラス瓶なり、板ガラスなり、ガラス器なり、それぞれに与えられた用途があったんです。使われているうちに破損したもの、使用済みになったものがカレットにされるんですよね。
わたしたち自身も同様で、自他の視点次第でガラス器にもカレットにもなりえるんです。じゃあ、カレットをどう位置付けるか。そんなことを考えながら、若干苦めの話を編んでお届けいたします。
ちなみにわたしは、書いている掌編が全てカレットだと思っています。答を与える形では書いていないので、容器にするには寸足らず。でも、うかつにさわると手が切れるくらいのエッジは立っている……そんな感じで。
カクヨムで独自にまとめている掌編集をカレットと名付けているのも、同じ理由です。そちらもさくさく読める話ばかりですので、お暇な時にでもお目通しいただければ。
*カレット*
ガラス窓を撫でても手が切れることはない
でもガラスの破片を擦れば手が切れる
どちらも同じガラスなのに
同じものを手にし
撫でて安堵する人と
傷付いて嘆く人がいる
言葉というものは
それによく似ている
Walking On Broken Glass by Annie Lennox
《 ぽ ち 》
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