昨年の10月から11月にかけて、カクヨムで『あなたの街の物語』(通称街コン)という短編作品の募集があり、どれ一発応募してみるべいと、三編ほどエントリーしました。

 都道府県を明記したタグをつければ、小説でもノンフィクでも紀行文でも評論でもなんでもいいというゆるーい規定。入賞しても賞金とか賞品が出るわけではなく、受賞作品集に掲載されるだけという地味なコンテストなんですが。

 これね。主体がカドカワではないんです。

『本プロジェクトは、内閣官房オリンピック・パラリンピック推進本部事務局の委託により、平成28年度オリンピック・パラリンピック基本方針推進調査として実施しています』

 おもしろいですね。オリンピックに向けて、日本という国の隠れた魅力を掘り出して、もっとアピールしよう。そういう目的で街コン以外にもいろいろな企画が提案され、企画が採用されればそれを実施するという実験的なものなんです。
 総務省の企画募集サイトを、今回応募した人たちのどれほどが見に行ったか、はなはだ疑問ではあるんですが。それでも情報発信だけでなく、海外からのアクセス傾向まで探ろうという欲張りな狙いはなかなかのものだと思います。

 わたしは長野県で二編、福井県で一編応募したんですが。
 その一つ『松風』(←クリックでそこに飛べます)が入選になりました。いひひ。(^m^)

 いやー。それがどんな賞であっても嬉しいですよ。受賞確率は1%ですから。

 受賞作は、主要な図書館や博物館などで無料配布されるだけでなく、英語と中国語に翻訳されてオンライン公開されるんです(もう翻訳版も出ています)。日本の知られざる一面を紹介するオナー(名誉)を頂戴したというだけでも、とても嬉しいです。はい。

◇ ◇ ◇

 ただ。

 受賞作を書いたわたしが言うのもなんですが。文化の保全以上に、自然環境の保全というのは極めて困難なんです。まさにチャレンジですね。せっかくですので、気比の松原の現況写真をご覧になってください。



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 確かに松は生えてますね。鉛筆のようなひょろっひょろの松が。

 松は一度枝が枯れ上がってしまうと、下から新しい枝が出ないんです。つまり、混み過ぎたところを切り空かしてやっても、もう枝ぶりは変わりません。柄の端にもふもふのついた耳かきがあるじゃないですか。あれがずらっと立ち並んでいると思っていただければ。そのてっぺんに湿雪が乗ったり、強い季節風が氷雨となって吹き付けたりすると……。



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 ばったーん。

 こんなの、信じられないです。松は本来は非常に根が深い。よほどのことがないと倒れないはずなのにね。植栽時に根がうまく張らなかった影響が、後になってこんな風に出てしまうんです。

 風倒や幹折れの他に、松枯れ(マツノマダラカミキリが媒介する線虫病)で毎年二、三百本が枯れてしまいます。



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 そして、侵入してきた広葉樹が、ものすごい勢いではびこります。画像は、松原に侵入した広葉樹を整理伐したものの断面なんですが、年輪を数えてみてください。さっきのやせっぽち松よりも、この広葉樹の方がずっと若いんですよ。成長速度が桁違いです。

 林床に広葉樹の落ち葉がどっさり積もるようになると、量も地面への張り付き方もはんぱじゃなくなります。落ち葉掻きが恐ろしく重労働になって、実質出来なくなります。松が競争に勝てないだけじゃなく、地面のクリーニングも極めて難しくなるんですよ。

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 受賞そのものも嬉しいんですが、いろいろな困難を抱えながらもなんとか松原を守り、その魅力を後世に伝えようと奮闘している方々がいるということをぜひ知っていただきたいんです。
 それは気比の松原だけでなく、日本各地の貴重な自然遺産を守るためにどこでも行われていること。ぜひとも、そういうアクションに関心を持っていただければなあと。はい。

 気比の松原保全事業については、福井森林管理署のサイト(クリックでそちらに飛びます)をぜひご覧になってみてくださいね。




  松風に雪混じり初む気比の浜





Wind In The Woods by Mairtín O'Connor