半月 予告



 だんだん暮れが近付いてまいりました。
 クリスマスと年末年始という華やかなイベントが待ち構えているので、お届けするお話の方もそれに合わせて明るい内容をと思ったんですが……。

 カクヨムへのアップが終わった半魚人の食卓は、話としては明るいんですがカクヨムオンリー。

 年末公開の予定だったみさちゃんのパート4は、予想通り長くなった上に、内容が真っ黒けでねえ。ちと……このタイミングで長々展開するのはしんどいということで、すっぱり来年回しにすることにしました。

 ですので、これまで公開していなかった昔の作品を若干手直ししてお届けします。それが『半月』です。



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 もともと詩ばかり書いていたわたしが小説を書こうと思ったのは、秀逸なフリーサウンドノベルに強い刺激を受けたからです。ですので一般的な小説という形式ではなく、エンディングが複数あるシナリオという形で文章を編み始めました。

 最初期の作品はすでに公開済みの『みどり』ですが、ほぼシナリオのままアップしましたので、その構造がどうなっているかが分かりやすいと思います。分岐点一つで、エンド二つ……そうなってるんです。

 分岐点が一つなら、それを一般的な小説形式に手直しするのはそれほど難しくありません。ですが今回お届けする半月は、かなり多くの分岐点を持った凝ったシナリオだったんです。
 トゥルーエンドの他にノーマルエンドが四つ、バッドエンドが二つ。これだけ構造が複雑になると、さすがに小説に書き直すのが難しいんですよ。わたしは、シナリオのサウンドノベル化を諦めているわけではないので、これまでずっと本作の公開をためらっていました。

 ですが今の状況だと、とても執筆以外の時間確保が出来そうにありません。音をつけたり、立ち絵を描いたり、スクリプトをいじったりする余裕がないんです。でも未公開のまま死蔵してしまうっていうのも、なんだかなあと。
 それで、今回トゥルールートだけを切り出して公開することにしました。オリジナルは13万字ですが、分岐先のシナリオを全部削りましたので、10万字ちょうどくらい。それでも、そこそこ文量があります。



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 わたしの長編処女作は『みどり』なんですが、今回お届けする『半月』は二作目の長編ということになります。そして、個人的にとても思い入れのある作品です。
 起稿は、今から八年前の2008年。三ヶ月ほどで書き上げましたが、その後も間断なく手を入れ続けています。今回アップした後も、まだいじり続けることになるんじゃないかと。それくらい、強い愛着とこだわりのある作品なんです。

 もっとも、それと『半月』が自信作であるかどうかとは全く別個のこと。わたし個人としては、きちんと描き上げた大作というより、素描に近いかなと思っています。
 でもラフな素描でありながら、わたしが描きたかったイメージにもっとも近付けることが出来た作品。それが……『半月』です。



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 短い間章二つを含む九つの章とあとがきという構成ですが、それぞれの章には名前がありません。章は、いくつかのイベントをくくって分かりやすくするための単なる目印と考えていただければ。実際には、大小様々な二十五の話とあとがきで構成されています。

 登場人物はそう多くありません。スナック『半月』のオーナー長戸美月(ながと みづき)、その夫の長戸文三(ながと ぶんぞう)。バーテンの伊東あさみ、バイト板さんの大学生佐之原卓人(さのはら たくと)、客の谷口久士(たに
ぐち ひさし)、沢木実李(さわき みのり)、迫田俊和(さこた としかず)、御堂慈恵(みどう よしのり)。あとは卓人の両親と若干名のモブ。それだけです。
 そしてほとんどの話は、美月さん、あさみちゃん、卓ちゃん、ぐっちぃ、さわちゃんの五人で回されます。

 全体にとても変わった設定、展開なんですが、奇をてらってそうしたわけではありません。わたしがあえて素描と書き置いた意図を汲み取ってくださると、とても嬉しいです。

 本話の基調は夜。舞台も人物も、です。ですから、ベーストーンは決して明るくありません。救いのない話ではありませんし、読後感も悪くないと思うんですが、シンプルなハッピーエンドものではありません。登場する人物にご自身を投影した時、そこに何が映るかを確かめてくださると嬉しいです。

 カクヨムでも同時展開しますので、読みやすい方でお目通しいただければ。話の流れを切らないようにするために、一日に複数アップすることもあります。息抜き無しのぶっ通しで、一ヶ月前後でのアップ完了を目指します。

 こちらでは、いつものように随時画像と音を付けますので、それも併せてお楽しみください。





Half Moon by Depapepe