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 秋がそろそろと遠ざかり、冬の足音が近づいてきましたね。紅葉の見頃も山から里へと降りてきました。その彩りも少しずつ褪せて、これから世界は日を追うごとにすっぽりと冬の傘の下に収められるのでしょう。

 寒さに身を縮める日が増えてくると、どうしても思考も行動も一緒に縮んできます。元々怠け者のわたしは、外を出歩くより室内でぬくぬくとリラックスしたい。その室内イメージの導きに任せて、えとわでこれから五話ほどオムニバスの話を続けようと思います。

 サブテーマは『らいぶらりあん』。
 はい。司書さんのことですね。



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 本シリーズの舞台となっているのは、『しっぽのいたずら』の主人公、石田未由(みゆ)が通っていた美津沼学園。登場人物も一部被りますが、そちらをおさらいしなくても、全て各話単独で読めるように仕立ててあります。

 美津沼学園は、そこそこ歴史のある私立高校。かつては校則の厳しいミッション系女子校だったのが、経営者が代わって宗教色が薄れ、今は共学の進学校になっている……そういう想定です。その美津沼学園の図書室で起こる話を、オムニバス形式でお送りします。

 ナレーターはまちまちですが、五話を通して岡崎さんという若い女性の学校司書さんが狂言回しを務めます。図書室という閉鎖空間。部屋としては閉ざされていながらも、蔵書がもたらす想像世界には果てがありません。有限と無限、現実と夢想の間で振り回される人々の姿を、少し古臭い伝統校の図書室で象徴させてみました。

 トーンを統一していませんが、ぎゅうちゃんシリーズの時に比べるとかなりウエットで黒めかもしれません。

 どの話にも、かちっとしたオチはありませんので、閉館後の図書室を出た気分でそれぞれのアフターを考えていただければ幸甚です。



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 ちなみに。わたしは、中学の時には図書室の主でした。三年間で四桁近い冊数の本を借りて読んでいます。
 特に、民話・歴史物が大好きで、ギリシア神話や三国志、水滸伝、金瓶梅は全てその時に読破しています。大っ嫌いだったのはロシア文学で、あの冷たい石造りのような文体がどうにもダメ。もっとも、中坊のくせにロ文大好きじゃ、そっちの方が怖いかもしれませんが。(^m^)

 小中で浴びるように本を読んだ反動で、その後は今に至るまでほとんど読書の習慣がありません。当然、図書室にも縁がないんです。今、図書室に行ったら、何を手に取るかなあ。そんなことをふと考える。

 ……秋の終わりです。



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  焼け落ちて空を支える裸木(はだかぼく)





Book Of Kells by IONA