幸福を色で表すのは、とても難しいと思う。なぜなら、幸福であるというある時点での現況よりも、その前後の過程の方が色を大きく左右するからだ。

 幸福になるまでずっと待たされていた期間。そして、幸福であり続けられる期間。それらが幸福にどのような色を足すかで、結果としての色は大きく変わってしまう。



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(レンギョウ)




 春早くから寒に鉄槌を下すが如く道端を鮮やかに彩っていたレンギョウの花。色鮮やかに大気を温めていたその花は、まさに私にとって幸せの黄色いリボンであった。最初から儚げな色合いの桜とは違う。ずっと確かで、もっと力強い。

 だが春が過ぎ、徐々に初夏の装いを見せ始める頃。暖気がすっかり私を緩めるに従って、いつの間にかリボンは色褪せ、風景からも記憶からも取り外されて、どこかに打ち捨てられていく。




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 待ち望んでいた時が来たことを私に知らしめる、幸福の黄色いリボン。だが、幸福は日常に埋没していく。まるで、それが当然であるかのように。

 幸せの黄色いリボンはただのリボンに成り下がり、私を無味乾燥な日々に縛り付けるようになる。

 ああ、そうしたら。
 幸福の色は黄色だなんて言えなくなるじゃないか。




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「あなた。きんとん食べる? おいしいのをいただいたんだけど」
「おお」

 うむ。そうだな。幸福ではなく口福であれば、時節で色褪せることもないのだろう。レンギョウには大変申し訳ないのだが、黄色いリボンは来春まで思慕の中からも外しておくことにしよう。

 花より団子、だなあ……。




  しあはせは鬱金で染めたべろの色

 カレー、ほんとに好きっす。




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