みなさん、お久しぶりです。

気づけば大晦日、いかがお過ごしでしょうか。
しかしまあ、長らくブログを放置していてごめんなさい!

ここ1年はいろいろありました…。

海外はクロアチア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、トルコ、サンマリノ共和国、イタリア、スリランカ、マレーシア、シンガポール、デンマーク、スウェーデンなどへ取材に行き、

本を5冊書かせていただき、旅の講座や講演、キャスターのお仕事をさせていただいたりと、遊牧民をしておりました。

 

ついラクなTwitter発信になっていましたが、

断食シリーズを完結せねば年を越せない!

ということで、忘れた方も初めての方も、どうかお付き合いくださいませ。

 

 

<これまでの話①~④>

①断食修行に潜入! 水だけで3泊4日過ごしてみた@成田山新勝寺

②断食修行に潜入! 1日目は煩悩だらけだった

③断食修行に潜入! 2日目。なぜ僧侶は日本一長生きなのか

④断食修行に潜入! 3日目。世界平和とちりめんじゃこ

 

 

 

 

▼5月29日(日) 断食修行4日目 

 

地獄と極楽にも、食堂があるらしい。

 

こんな本を読みました。

ある人が亡くなってあの世で道を歩いていると、「地獄食堂」という看板の店があります。

中を覗いてみると、1mもの長い箸を使って食事をしていました。

 

みんな自分のことばかり考えて食べることに必死なので、

長い箸の先が向かいの人の目玉を突いたり、隣の人の耳を突き刺したりと、

食堂内は怒号が飛び交う阿鼻叫喚の修羅場。

 

あまりに悲惨なので店を出て歩いていると、

次に現れたのは「極楽食堂」という看板のお店です。

 

ここでも1mの長い箸を使うルールは同じ。

でも人々は和気あいあいと、笑顔で食事をしています。

 

では一体、先ほどの食堂と何がちがうのか。

 

よく見てみると、向かいに座る人同士が

互いに何を食べたいのか尋ね合い、

自分の長い箸でつまんだものを相手の口へと運んでいたのです。

 

つまり、地獄と極楽のちがいは環境や状況の違いではない。

心のもち方のちがいだけだ、

という仏教のお話。

 

断食中に読んで、余計じわじわと響きました。

心のもち方次第、か。

 

 

 

 

 

▼空腹の向こう側

 

ランナーズハイみたいな、断食ハイ? があるのかもしれない。

 

断食4日目は空腹のピークも過ぎて、昨日よりも体調は良好でした。

どこか吹っ切れたような、静謐な高揚感。

これが”空腹の向こう側”なのかしら。

 

遠い目をしつつも、同期のSさんと「いよいよ、お粥ですね!」と歓喜していると

新人のFさんが起き抜けに「おはようござ…おなかすいだぁーー」と、嘆きの叫び。

 

彼女の前で「お粥」というワードは、あまりに酷だったかも。

 

 

 

 

▼文字の牢屋

 

清々しい空に、冷えた手足をゆっくり伸ばしてみる。

 

早朝の健康チェックと、掃除、朝護摩をいつものように済ませ、

最終日に課せられるのが感想文の提出。

400字詰めの、これぞザ・原稿用紙という用紙を渡されます。

 

そういえば小学生のころに思ってた。

 

律儀に居並ぶ原稿用紙の400個のマス目。

文字はこの窮屈な四角い小屋に閉じ込められて平気なのか。

独りぼっちで淋しくないのか。息苦しくないのか。

隣りの文字とおしゃべりしたいんじゃないか、って。

 

文字の牢屋を壊したかった。

あのころのわたしは何と闘っていたんだろう。

原稿用紙のマス目に、なぜか一方的に敵対意識を燃やしておりました。笑

 

 

そんなわたしが提出した断食修行の感想文は、ぴったり400文字。

律儀に埋めた。怨念なのか、ライター修行の賜物か。

 

いや、もしかしたらあのマス目は牢屋じゃなく、バスや電車や飛行機の座席みたいなものだとしたら。

文字を載せたらいろんな場所へ連れて行ってくれる乗り物だったとしたら。

思考を旅させてくれる、眺めのいい座席。

 

なんだかそんな気もしてきて、空腹の向こう側で久しぶりに対面した原稿用紙に謝罪したくなりました。

 

 

 

 

▼米の輪郭

 

どれだけ切望したことか。

 

いよいよの食事。この日卒業する同期Sさんと彼、そしてわたしの3人で、神聖な儀式のようにお粥の土鍋を囲みます。

献立は、お粥(重湯)、梅干し、焼き味噌、緑茶。

芸術的に美しい和食。

 

玉手箱を開けるみたいに土鍋の蓋を持ち上げると、お米の甘い香りが湯気とともにふわっと漂い、深いため息が漏れました。

示し合わせずとも3人揃って「いただきます」と、深い深い合掌。

 

ずっと生ぬるい井戸水だけで過ごしただけに、体内に温度が宿る感慨はひとしおでした。

温かい飲み物がどれだけありがたいことか。

緑茶ってなんて友好的な味なのか。 

 

そして、お粥。

ほぼ重湯なので、ほろほろと箸から滑り落ちるお米をもどかしくも愛おしく、ていねいに掬って口に運ぶ。

水分を含んだやわらかな米粒。久しぶりの固形物。

舌で米の輪郭を感じて、泣きそうになる。

甘い…。お米ってこんなに甘かったんだ。

 

甘じょっぱい焼き味噌は、まさに身体の細胞から求めていた味でした。

敏感な舌がびっくりしないよう、梅干しも箸で細かく刻んで、お粥に慣らしてそっといただく。

想像でしか出なかった唾液が、ここぞとばかりにあふれてくる。

 

3人とも「んーー! おいしい…!!」の連発。

最高にゆるんだ顔。たまらなく幸せな時間。

 

身体がじわじわ、温まっていくのがわかりました。

わたしの臓器としてわたしの身体に配属されて以来、胃や腸たちは初めての長期休暇を得たわけです。

ようやく彼らが仕事復帰にかかった今、身体を温めてくれるのは食べ物だけじゃなく、内臓がコツコツけなげに働いてくれているからなんだと当たり前のことを実感したのです。

 

 

 

 

 

▼飽食時代の栄養失調

 

これだけ食べ物があふれている時代。

 

身体の声に耳を傾けず、臓器に休みを与えず、むやみに働かせて

本来の栄養を吸収利用できない状態にしていなかったか。

飽食時代の栄養失調になっていないか。

 

身も心も、ほんとうに幸せな食事をしていただろうか。

そもそも、幸せってなんだろう。

 

仏教の本によると、幸せの語源は奈良時代の「為合わせる(ものごとを互いにする)」というものらしい。

室町時代には「仕合せ」となって、試合のことも「仕合」と書いていたそうです。

 

つまり「めぐり合わせ」の状態を表す言葉だから、自分だけが幸せになりたいと思って成り立つものじゃない。

かならず周囲のいろんな状況と合わさって、幸せは生まれるわけです。

 

だから切実に思いました。

 

今回お粥を作ってくれた人、お米を育ててくれた農家の人、

梅干しや味噌造りや稲作を継承してくれた日本の先人たち、

お皿を洗ってくれる人、ゴミを収集してくれる人、

そして、おいしいねと言い合える人がいること、

心から食べたいと切望する自分がいること、身体の細胞レベルまで。

 

もういろんな関係者各位にひたすら感謝!

 

心をこめて「ごちそうさま」

一生忘れない、とても有意義な食事体験でした。

 

 

 

 

▼別れ

 

「次は1週間の断食に挑戦してみてください」

別れ際にサラッと受付係が言うので悲鳴を上げそうになりつつも、いつか私はやりそうだなとも思う。

 

我慢することも、感謝することも、スマホを4日間断つことも、人と励まし合うことも、働いて食べるということの尊さも、いろいろと深く感じるところがあって、

「この修行、会社の新人研修でやるといんじゃないですかね」

などと同期Sさんとマジメに語りながら、名残惜しくも握手をして別れました。

 

びっくりしたことは、

帰りにお腹が空いてウィダーインゼリーを買ってみたら、ひと口で舌がピリピリとしびれる感覚。飲みきれなかったのです。

断食直後は化学調味料などの味がわかると聞いていたけど、こういうことか。

 

そして、電車内の匂い。

嗅覚も究極に敏感になっていて、香水や化粧品、シャンプー、柔軟剤などの人工的な香りが鼻にまとわりつくように迫ってくる。

かく言う3泊4日入浴禁止だったわたしは、思いっきり護摩の煙に燻された燻製風味…。

 

でも人間の恒常機能というのはすごい。

良くも悪くも、あっという間に平常運転に戻るんですね。

原始人みたいに研ぎ澄まされたと思った味覚も、嗅覚も、聴覚も、体重も。

 

 

 

 

▼食欲の華ひらく

 

3泊4日の断食で、体重は合計3.4kg減っていました。

 

そして、たった3日で元通り。

いやむしろ増えました。笑

 

断食後の食欲といったら、もうルネサンスのように開花してしまう。

3日間は肉、魚、卵、乳製品などはNGなので、お粥と自分史上最高においしい味噌汁を作り続けては感激のあまり食べすぎ、塩分でむくみ、通常食に戻れば今日は何を食べようかと楽しみで仕方ない。

 

メールでやりとりした同期Sさんも「何を食べてもおいしくて、食欲が止まりません!」とのことで、ちょっとほっとしましたが。

断食後の自己コントロールのほうが、ある意味修行でした。

 

急激に何かをすると、副作用もでかい。

変えたいものがあるなら、地道にコツコツ着実に、です。

むろん、ダイエットしたい人に断食はおすすめしません!

 

でも心身リセットできるのは確か。

個人的には、ほんとうに挑戦してよかったです。

 

 

なにはともあれ、年末年始ですからおいしく楽しく、食べましょう!

(この時期に書く話じゃなかったなあ…汗)

 

 

 

 

 

↑最終日に買ったお守り。両親には健康長寿、自分にはやっぱり仕事。

恋愛とか縁結びとか選ばないのが可愛くない!!

 

 

 

 

みなさま、今年もありがとうございました。

 

2018年もみなさまにとって幸せな食卓であふれますように♪

 

 

 

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みなさん、こんにちは。
いつも気長に読んでくださってありがとうございます。

前回の続き、いよいよ断食潜入シリーズも終盤です!




▼5月28日(土) 断食修行3日目


動物や虫たちも断食をするらしい。

ケガをした動物たちはエサを口にせずじっと回復のときを待ち、生命力を高めることがケガを治す最良の方法といいます。

おたまじゃくしもカエルになる前の数日間は食べないそうです。
ある実験によると、おたまじゃくしにエサを与え続けたらカエルになれなかったとか。

カイコも糸を吐き出す脱皮前や、さなぎちゃんの時代も断食状態だそうで、新たな生命のステージに至る際には重要なんだそう(『脳がよみがえる断食力』山田豊文著)。

そんな本の話を同期のSさんにすると、

「なるほど、じゃあいま断食中の私たちのエネルギーは何に使われているんでしょうね?」

との問題提起。うーん、確かに何に使われているんだろう…。
これからカエルに進化するわけでもないし、糸を吐き出す予定もないわけで。


相変わらず体温の上がらない冷えたカラダを震わせながら歯を磨き、早朝4時55分の健康チェック、掃除を済ませながら、私はぼんやりとした頭の中でハンバーグとたこ焼きと、小さい頃にバケツから消えたおたまじゃくしのことを考えていました。







▼体力は落ちるも、良い変化も

昨日の雨も上がり、この日は縁日ということもあって早朝5時半というのに参拝客が多い。

朝護摩に向かう際、Sさんとフーフー言いながら急な階段を上りました。
サラリーマンはともかく、ご年配のおじいちゃんおばあちゃん方が颯爽と私たち2人を追い越していく様子には、さすがに

「私たち、確実に体力落ちてますね…」

と、Sさんと苦笑い。
普段からヨガやマラソンなどをしているSさんでも、断食3日目にして少し気分が悪いそう。

私はというと、昨日より元気なものの、脈が速く、なんだか息苦しい。
空気の薄い富士山の頂上にいる感じ。ふわっとした妙な浮遊感です。

唯一、口にしている水の味や匂いにも、昨日よりさらに敏感になって消毒の薬品っぽさを感じる。
断食の症状で舌苔ができて、口の中が不快。

けれども、よい反応も多いのです。
まずは体の余分な水分が流れてむくみがとれたこと。

そして、ミス肩こり部門があれば優勝しそうなほどひどかった肩こりがなくなっていることにはびっくり。
長年詰まっていた排水溝を掃除して、水がさらさらと流れ始めたような感じです。

それから、肌の吹き出物が驚異的なスピードで消えたこと。

もしかしたらカエルに進化しない分、こうした修復にエネルギーが使われているのかしら。






▼分け合う、ということ

縁日はお不動様のパワーがいちばん宿るときで、この日にお参りするとその多大なパワーをいただき守ってもらえると僧侶が話してくださいました。

朝護摩の荘厳な雰囲気で焚かれる炎を見ながら、この日、3日目に願ったのは…
思いもよらぬ「世界平和」でした。

なんというか、ああ、お腹が空くってこんなにツライことなのか、と。
こんなにツライ思いを好き好んでしている私とはちがって、世界中には望まずして食べられない子どもたちがいっぱいいる。

食べられることが、どれだけ心身を温めてくれる幸せで尊いことなのか
私は明日を乗り切れば食べられる。好きなものを食べられる保証がある。

けれども、いつ食べられるかさえわからない子どもたちが世の中にはたくさんいる。
何も保証がない。どんなに不安だろう。

食べ物も技術も知識も不安も喜びも、競うのではなく、もっと分け合える世界になってほしいと切に願いました。

世界平和って、隣の人と柿を分け合うみたいな、すごく些細なことの集合体なんじゃないかな。




▼静岡から参戦の新人美女

この日、新たに入堂したFさんは、20代後半の読者モデルさんみたいなキュートな女性。

3泊4日の断食予定で、静岡から来たとのことです。
成田集合は早朝のため、昨夜は1300円でマンガ喫茶に泊まったそう。たくましいです。

断食修行に参加した理由は、転職中のリセットとのこと。

「東京で4年間働いて、インプットが多すぎて疲れちゃって。静岡の実家に帰省中の1ヶ月の間にアウトプットしたいな、無になりたいなと思ったんです。断食なんて周りからありえない、って言われたんですけど。笑」

そりゃそうですよ、こんな可愛い子がねぇ。
これから3泊4日お風呂も入れず、髪もベタッとなり、モンゴルの羊みたいなニオイになるのですよ、いいんですか!?

と、私も親心のように心配してしまった。




▼お経とは? はじめての写経体験


そんなFさんと一緒に写経体験をしてみました。

最初にお清めのための塗香を人差し指でとり、左の手の平の中心につけて広げた後、輪袈裟を首にかけて開始します。
「般若心経」をひたすら筆で書き写し、最後に日付と自分の名前を記して床の間に奉納します。


そもそもお経とは。

仏教発祥のインドにおいて、昔は大きな葉っぱに文字を書き、文字量が増えると何枚もの葉に書いていたそうです。
それをつなぐために両端に縦糸を通したのですが、その縦糸を「経」と呼びました。地球の緯度、経度の「経」ですね。
やがて葉に書かれた仏さまの教えそのものを「お経」と呼ぶようになったのだそう。

お経は「生死について」「世界の在り様について」「煩悩について」など、お釈迦様の没後に膨大に書かれました。
その中からエライお坊さんが「私はこのお経がいい」と、自分の悟る方法に適したお経を選んでいったことが、仏教に宗派がたくさんある理由なんですね。





写経体験は一般客だと2000円ですが、断食者は無料で参加できます。
所要は「般若心経」1枚で1時間ちょっとですが、私は驚異的な集中力で45分ほどで終えました。

墨の匂いが懐かしく、筆の感触も大好き。

筆は正直者ですよね。
早く終わらないかなっていういい加減な気持ちも、誠実に向き合おうとする気持ちも、見事に文字に表れる

心を見透かされているようでドキドキします。







▼ちりめんじゃこに多大な感謝

この日もたくさん本を読みました。

『仏教的生き方入門』(長田幸康著)によると、多くのチベット人は魚を食べないらしい。

たとえば、ヤクという大きな動物1匹からは多くの肉やソーセージ、毛皮がとれ、ツノも役に立ちます。
けれども魚一匹ではお腹が満たず、何匹も殺さなければいけない。
ましてや、ちりめんじゃこときたら大量虐殺級ではないですか。

大きなヤクも、小さな魚も同じひとつの尊い命には変わりない、というわけですね。


また、チベットでは子どもが亡くなると川に流すため、魚はその肉を食べるから食さないという由縁もあるそうです。




敬虔な仏教徒のチベット人となると、虫や蚊さえ殺せないといいます。

まさに、お釈迦様が説いてガンジーも唱え実践したアヒンサー(不殺傷、非暴力)ですね。


私は肉も魚も大好きだし、断食したからといってベジタリアンになるつもりもありません。
でもやっぱり、あるものをいただく感謝、だけは決して忘れたくないですね。

さらに、その命を育む森も川も海も、人間が守っていくのは当然のことで
命だけいただいて自然環境や生態系に無関心、むしろ破壊するばかり、では勝手すぎるなぁと、あらためて痛感します。






でも不思議です。

世界中のどんな宗教だって「命を大切にせよ」という根本の教えは変わらないはずなのに、
なぜテロや戦争が起きて、多くの命が犠牲になってしまうんだろう。





きっと泣いてるよねぇ…ブッダもイエスもムハンマドも。









その晩、「いよいよ明日、お粥ですね!」と、同期Sさんと盛り上がりました。
2人とも今朝よりは元気です。

断食するとカラダは1日でブドウ糖を使い切ってしまうものの、その代わりのエネルギー源として脂肪が燃焼され「ケトン体」と呼ばれるものが肝臓でつくられるそうです。

ケトン体は代打で脳のエネルギー源となり、効率よく脂肪を燃焼してくれる優秀な補助要員。

人間のカラダは連携プレーで意外と丈夫にできているんですね。


★3日目の体重⇒1キロ減
★体調⇒2日目よりは良好、脈が速い
★変化⇒水の味覚・臭覚が敏感になる、舌苔ができる、むくみ・肩こり・吹き出物の解消
★いま食べたいもの⇒ハンバーグ
★祈ったこと⇒世界平和



さて、次回はいよいよ断食最終日。
一生忘れない4日ぶりの食べ物の味、そしてルネサンスのように開花した私の食欲は一体どうなっちゃうのか…!?


今日も長文、読んでいただきありがとうございます!


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3人の講師で担当する「一人旅講座」が好評開講中。

なんと定員の倍以上お集まりいただき、教室を拡大して募集中です!
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【その他お知らせ】
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★11月中旬に新刊発売予定!
★11月下旬にヨーロッパ取材予定!

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なんと、ずいぶん時間が空いてしまってすみません!
すっかり秋真っ盛りではありませんか。


さて、ちょっとお知らせですが
ありがたいことに8月より、番組キャスターのお仕事をさせていただいてます!


日本文化チャンネル桜の番組⇒  『桜ワールドネットワーク ~世界は今…』

▼放送時間
【 スカパー!528ch 】 毎週木曜日 21:00~22:00 放送
【 So-TV / YouTube / ニコニコ 】 随時配信(週1回)

世界各地に在住する特派員の方々に、現地の”生の声”を伝えていただく報道番組です。
一般の報道では知り得ない海外レポートが満載で、わたし自身とても勉強になることばかりです。

国際問題や情勢などに興味のある方は、ぜひご覧いただけますと嬉しいです♪


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さあ、みなさん忘却の彼方であろう前回の続きです! 
いよいよ過酷な断食修行2日目!

(これまでの記事はこちら↓)

①断食修行に潜入! 水だけで3泊4日過ごしてみた@成田山新勝寺
②断食修行に潜入! 1日目は煩悩だらけだった









▼5月27日(金) 断食修行2日目の悲劇


まだ薄暗い朝4時30分。

女子部屋に目覚まし時計のアラームが鳴り響き、
「おはようございます…雨ですね…」と、みな気だるそうにあいさつを交わしながら生存確認しました。

起き上がろうにも力なくフラついて、アウストラロピテクスから人間に進化するみたいに段階を踏まないといけない。

ようやくネアンデルタール人になったあたりで、
あれ、なんか胃が気持ち悪い…あれ、すごく寒いぞと、2日酔いみたいな体調の悪さにぞっとしました。

歯磨き粉の味にウッとなりながらも、渾身の思いで歯を磨いて顔を洗い、身支度を整えて4時55分、集合場所で健康チェックを行います。


前日に水を何杯飲んだのか、記入した表を世話係に提出して判をもらうわけですが、
「今日で最後の人はちゃんと言ってよね! 言わないとわかんないんだからさ(怒)」などと、世話係I氏が相変わらずゴネていて、妙な緊張感が漂う2日目の始まりです。




部屋に戻って、ほうきで簡単な掃き掃除をしつつも体調が悪い。
掃き掃除しながら吐きそう…。

そんな状態で、5時20分から始まる全員参加の朝護摩に向かいます。
大本堂へ向かう途中に気分の悪さが限界になり、同期Sさんに「先に行っててください!」と言い残してメロスのように走り、トイレで吐きました。

(お食事中の方がいらしたら、ごめんなさいね!!)

吐くといっても、何も食べていないので当然、大量の水しか出てきません。
しかも、わりときれいな黄色なのね。オロナミンCみたいな胃酸カラーを、若干感動しながら眺めておりました。

酸っぱくなった口をゆすぎ、いつものペットボトルの井戸水をひと口飲んでみると、あら不思議!
甘い…なんというか、桃の天然水みたいな味がするではないですか!

飽き飽きしていた水が、状況によっては桃の天然水にも変化するのね。同じ水なのに。
これも仏教でいう、空(くう)なのか、、と静かに感心しておりました。





この気持ち悪くなる現象、じつは断食するとよくあるそうです。

食べないとあらゆる消化機能が休止するため、肝臓も解毒できないことはもちろん、
長年にわたって細胞に蓄積された有害物質が血液に送られて全身をめぐるから
なんですね。

これも一種の好転反応だけど、人によっては頭痛が激しかったり、救急車で運ばれる場合もあるそう。

だから臓器の休業に備えて、断食前には減食が必要なんですね。


ではなぜ、わたしは減食したのに体調が悪くなったのか。

それは断食初日の晩、なまこのように眠り続けたので寝起きに「水分摂らなきゃ!」と、水を一気に大量に飲んだのがNGだったみたい。空っぽの胃がびっくりしたんですね。

最初に渡された注意事項にも、水を一度に多量に飲まぬように! と書いてありました。


これからチャレンジする方、どうか水は少量ずつ、こまめに補給してくださいね!







▼まるでエンタメ! 智慧が煩悩を焚き上げる「御護摩祈祷」

さて、すっかり体調が蘇り、何事もなかったかのように大本堂でみんなと合流しました。

御護摩祈祷とは、護摩木という薪を焚いて心願成就を祈念する真言密教のお祈りです。
薪は煩悩を象徴し、炎は不動明王の智慧を象徴しているそう。

ちなみに「護摩」という言葉は、古代インドの宗教儀式で「火の中に供物を投じて祈る」という意味の「ホーマ」に由来しており、それを漢字で表したのが「護摩」なんですね。


とくに成田山新勝寺の御護摩祈祷は、開山以来1070年以上、1日も欠かさず続けてきたというから驚きます。

有名な話ですが、跡継ぎに恵まれなかった初代團十郎は、成田山で祈願したことから男子を授かり、以後自らの屋号を「成田屋」と称したわけですね。

今でも市川宗家一門は、襲名披露などの特別な興行の際には、ここ成田山新勝寺で護摩祈祷を受けているそうです。




広さ300畳を超える大本堂は、高い天井から黄金の滝のような装飾が吊るされ、
ご本尊の前に設けられた壇や灯篭、華やかな供物、巨大な太鼓などなど、まあとにかく賑やかです。
不動明王はここにいて落ち着くのかしら、ってくらい圧倒される空間。

「こっちの場所が、いちばんよく見えるよ」

ご本尊に向かって左側が、いちばんお坊さんの所作や御護摩の様子が見えると先輩陣の姉さんが教えてくれました。


護摩祈祷は1日何度も行われますが、薄暗い本堂内に炎がくっきりと浮かび上がる朝護摩は、やはり特別に荘厳で神秘的。

黄、緑、紫など、色鮮やかな袈裟を身に着けた僧侶たちが10人くらいも出てきて、
空腹のお腹に爆発音みたいに迫りくる太鼓の音や、驚異的に美しいお経のハモリ具合、
その重低音が堂内に響き渡って護摩の炎を操ってるみたいで……鳥肌が立ちました。
エンタテイメントみたい。

炎を見つめながらお経のスピードが速くなってくると、自分の中の煩悩がどんどん炙られていく感覚。なぜか涙が出ました。

わたしたちも手を合わせ、不動明王の真言を一緒に繰り返します。

この日浮かんだのは祈りというよりも、感謝、でした。
大切な両親や身近な人たちが健康でいてくれることに感謝。いてくれるだけで感謝。



そうそう、祈祷の途中に、護摩の炎に荷物をかざしてご利益をいただく「御火加持(おひかじ)」をしてもらえるので、カバンや大切なものがある人は持って行くといいですよ。









▼月刊住職!? 仏教図書館がアツイ!


敷地内にある仏教図書館に行ってみました。断食者のオアシスです。
せっかくスマホを断たれた貴重な時間ですからね。

仏教の本ばかりかと思いきや、マンガから文芸春秋、ナショジオ、釣りの本、夏目漱石や島崎藤村の初版なんかもあります。
受付の男性によると「仏教関連の本は3割程度で、ほとんど一般書だよ」とのこと。

意外な発見は、『月刊住職』と『月刊仏事』なる月刊誌。

恐る恐るページをめくると、「初の女子僧侶プロレスラー! タイガーマスクの信念!」
とか、なんともポップな特集をしていて静かな衝撃を受けました。

出版業界にいるのに、こんな月刊誌があるとは知らなかったなあ。
昔、虫好きの友達がこよなく愛読していた『月刊むし』を思い出しました。


仏教図書館は休館日(木、日、月、祝)が多く、館外に本を持ち出せないので自分でも本は持っていくといいですよ。



ちなみに、道場の廊下にもプチ本棚があるのですが…



江戸時代かっ! という年季の入った古本たち。マニアックで難解すぎます。





▼僧侶が日本一長生きする理由とは?

断食中に仏教本を10冊ほど読んだのですが、
職業別寿命一覧において日本で長生きする職業の1位は、僧侶だそうです。

お酒も飲むし、肉も魚も食べるし、運転もする。
一般の人と生活は大して変わらないのに、なぜ僧侶は長生きなのか。

副住職で芥川賞作家でもある玄侑宗久さんは、著書『釈迦に説法』で
その理由を次のように分析しておられました。


①長く吐く呼吸法
『ゾウの時間 ネズミの時間 ―サイズの生物学』(本川達雄著)によると、あらゆる動物は5億回の呼吸を終えると死ぬらしい。お経は吸うときは瞬時で、あとは長くずっと吐いている。人が無意識にしている呼吸は1回5~6秒。坐禅の呼吸法に習熟すると、1分間に2回までは必要なくなる、とのこと。


②静と動のバランス
江戸時代の儒者兼医者・役学者の貝原益軒は『養生訓』で、「時に動き、時に静なれば、気めぐりて滞らず」と説いている。お勤めに出たり、ときに坐禅、瞑想など、僧侶は動くことと動かない仕事のバランスが絶妙。健康は陰陽のバランスが大切、とのこと。


③ストレスを引きずらない
病は「気」が滞ることで起こる気が滞る原因は、怒り、悲しみ、憂いなどの感情。葬儀といった悲しみの場に出ることが多い僧侶は、そうした感情を引きずらない能力に長けてくる。さらに坐禅や瞑想、お経によって心が平らになり、イメージや感性を司る右脳が活性化される。意識を動かして気がめぐる、とのこと。


④「楽」を目指す思考法

楽といっても、「安易」という意味ではなく、リラックスや楽しさのこと。お釈迦様が「苦」からの解脱の先に求めたもの。「幸せ」はキリのない欲望になるが、「楽」はそうでもない。ただし「足るを知る」というベースが重要。年をとるほど「楽」は深い味わいが増すだろう、とのこと。



まさに「病は気から」ですね。
そして、呼吸も省エネで寿命長持ち、の時代なのですね。

みなさん、じっくり深呼吸、腹式呼吸してみてください。
これだけでも本当に、細胞が反応してくれるなと実感できます。





↑ためになった仏教本たち(持参したもの)。

上のオレンジのピッコロ大魔王みたいな僧侶の本もおもしろくて、たとえば、

・・・・・・・・・

人間はすぐ「自分が、自分が」といって主役になろうとするが、紙パックのジュースに付いているストローを見習いなさい。あのストローはずっと脇役人生を歩んでいる。誰もあのストローが欲しいと思って買うことはないけど、あれがないと困る。必要とされている。立派な役割を果たしている。じつに頃合いのいい存在ではないか。車のワイパーだっていい仕事をするぞ。車の花形のパーツではないけど、なければ困る。役に立ってる。自分とは、社会のひとつのピースだ。自分をよく磨け。自分自身も他人も喜ばせることができる判断こそ、世から必要とされるよい選択。そして一度選んだら、その選択肢を正解にしていけ。それが後悔しない最良の選択。


・・・・・・・・・・・

みたいなことが一部書かれていて(もっと優しい口調ですよ!)、よき判断力がほしいと思っている迷い多き人たちにおすすめの本です。

『もう迷わなくなる 最良の選択』(アルボムッレ・スマナサーラ著)






▼自分の行いはすべて自分に還る

散歩中、池の鯉がドバーッと寄ってきて、もの欲しげに口をパクパクし始めたのだけど、
「うんうん、わたしもお腹減ってるよ、わかるよわかるよ」と、思わずつぶやいていました。

食べてないので体温が上がらず、5月も末だというのに凍えるほど寒い。

雨上がりで色濃く浮き立つような緑の香りが、よりダイレクトに鼻孔にしみ込んできます。
五感が敏感になっているのでしょう。このまま原始人みたいになっていくのかしら。

「自分」という言葉は「自然の分身」からきているという考え方がありますが
まさに人間は自然の一部で、自然に生かされているんだなと痛感します。


昨日はきれいに咲いていたタンポポが、今朝の雨ですっかり萎んでいました。
時は流れ、状況はつねに変化している。

明日に後悔しないよう、今できることをコツコツと。




↑お散歩中に境内で見つけた看板。まさに!ですね。


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この日の朝、3人の先輩女子が卒業していきました。

九州女子は4日ぶりのお粥に歓喜し、
眠り姫は「眠るために来た」という心願成就を遂げ、
ツワモノ姉さんは趣味の滝行について最後まで熱弁し、
みな笑顔で旅立っていきました。


夜の女子部屋は、同期のSさんと2人きり。
「いま何が食べたいですか??」の妄想で盛り上がり、絞りに絞った結果
わたしは初日から引きずる煩悩のうなぎ、Sさんの最有力は唐揚げ、でした。

空腹すぎると、さっぱりしたものよりもこってりしたもの、塩分のあるものを欲するのかも。


けれども今朝帰ったボクサーの男性は
「ソフトクリームが食べたい…」と言い残して去っていったそうです。

まあ、、人によるのでしょうね。





とにかくキツかった2日目ですが、
励まし合える同期Sさんがいて、本当に救われました。


★2日目の体重⇒1.2キロ減
★体調⇒朝は絶不調、徐々に回復
★変化⇒臭覚が敏感になった
★いま食べたいもの⇒うなぎ
★祈ったこと⇒両親、周囲の存在に感謝



さて、次回はいよいよ断食3日目。
新人女子の入堂、写経体験、読書や体調の変化など、またご紹介しますね。


今日も長文、読んでいただきありがとうございます!




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