「今まででやった

一番くだらない夫婦喧嘩は何ですか?」

 



いろんな夫婦に、私が好んでする質問である。
ある夫婦の答えは、

 

「洗濯機のサイズのことで離婚しそうになった」

だった。

洗濯機を買い替えようと、家電量販店に行った二人。

妻は、容量7キロを買おうと主張した。

しかし夫は「5.5キロで十分だ」と反論。

「大きな容量だと電気代を食うし水も使う。お前は地球に優しくない」


「妻には優しくなくていいわけ?容量が少ないと何度も洗濯しなきゃいけないじゃない。

誰がやると思ってるのよ!」


「俺だってやってるじゃないか」


「たまにしかやらないくせに偉そうに!」


「なんだと!じゃあもう二度とやらない」


「そういう子供っぽい逆ギレが嫌なのよ。

大体もっと稼いでたら迷わず7キロが買えるのに」


「あーそうか。子供っぽくて稼ぎのない男で悪かったな。

そんな奴と結婚しなきゃよかったな」


「ほんとにそうよ」
「じゃあもう離婚だ」


このように、

夫婦は洗濯機のサイズひとつで離婚に至る危険

をはらんでいる。

 


 

家族という共同体をマネジメントする作業は(特に子供がいると)大変で、

うっかりすると不満という火薬が蓄積され、

引火するきっかけを待っているからである。

 

 

人は余裕がなくなると、攻撃的になる。

そしてだいたい、小さい子供がいる(特に複数)夫婦は余裕がない。

 

家庭内労働環境が一気にブラック企業になるから。



いかに夫婦喧嘩を回避し、

建設的な話し合いにもっていくか。
そのスキルを磨くことが、夫婦関係を維持するために必須なのだ。

まずもって、「話し合い」の切り出し方が問題だ。


夫婦初心者のころの私は、

まじめな学級委員長のように正攻法で行っていた。

 


「話し合いたい議題があるので、

夕食のあとでミーティングをしましょう」

深刻な顔でそう切り出された夫は、


・忙しいふりをする。
・疲れたと言って早く寝る。
・草刈り機でケガをする。

などの逃避に走った。

そこで今は、

日常会話にすべりこませ、気づいたら話し合いの場になっていたという

詐欺っぽい形をとるようにしている。



そして話し合いの場を持ったとしても、感情的な喧嘩に発展してしまうことがある。

 

 

なぜか。



「相手の口調や言葉の選び方などから、

『責められている』波動

をセンサーがキャッチすると自動的に攻撃モードになる」

ことが主な原因だと、近年わかってきた。
だけど『責めている』波動を抑制するのは難しい(だってあわよくば思いっきり人を責めてストレス発散したいし☆彡)。

 


そこで、色々と工夫を重ねてきた。

 


対面だと詰めている感じになるので隣り合って座る、とか。

温かいお茶を飲みながらする、とか。

 

 



しかし最近、

 

「今までの苦労は何だったのか?」

 

 

と思うほど

強力な秘密兵器

を入手した。


 

 

「どらえもんとのび太の着ぐるみを着て、

モノマネをしながら話し合いしたら喧嘩にならないんじゃない?」

最近、話し合いの最中に夫が言った。
そのアイデアがとても気に入ったので、さっそく実行しようと思った。

 


しかし、着ぐるみは高いし場所を取る。

モノマネをしたらそこに集中してしまって肝心の話を忘れそうだ。

 



手ごろなヅラとお面はどうだろう?



そこで、ピンクのアフロとニセくまモンのお面を、

貯まっていた楽天のポイントで注文した。
アフロは従来品より20グラム増量らしい。良かった。

 



使用する前から絶大な効果を感じた。



ピンクのアフロでまじめな話をする夫を想像しただけで、怒りが消えていく。
夫も、ニセくまモンになら責められても腹が立たないだろう。

 

 

これで夫婦関係は安泰だ。

おだやかな気持ちになった。

 

 

 

 

…が。

 

 

今では夫婦共にコミュニケーションスキルが向上して

年に一回くらいしか大きなケンカの機会がなく、

いざその時になるとしまいこんでいた秘密兵器の存在を忘れているため、

結局使わないままである。